心理学とはどんな学問か?その種類や学ぶ意味について解説

あなたは「心理学」と聞いて、何をイメージしますか?

 

  • 読心術
  • マインドコントロール
  • 心理テスト

などをイメージする方が多いのではないでしょうか?

実は読心術、マインドコントロール、心理テストなどの多くは大学で学んだり、研究したりする「心理学」とは区別されます。

 

2019年6月まで日本心理学会理事長を務めた、日本大学文理学部の横田正夫教授は心理学を以下のように語っています。

心理学とは、人間の心理や行動に関する法則を明らかにしようとする学問です。

このとき、科学的な方法を使ったものでなければ、心理学とよべません。

引用:『Newton 』2019年12月号 29ページ

巷で溢れているマインドコントロールや読心術のたぐいは、個人の主観や思い込みに基づいたものが少なくありません。

こうしたものは、「心理学」とは呼べないのです。

あの「A型は几帳面、B型はマイペース・・・」の血液型占いも元を辿れば、古川竹二という教育学者が身近な人を観察して、「あれっ血液型によって性格が違うのかな?」と個人の主観から生まれたものでした。

詳しくはこちらの記事をご覧ください

 

この記事では、心理学のはじまり、心理学とはどんな学問なのかやその種類、そして、心理学を学ぶ意味について解説していきます。

 

 

心理学の語源

「心理学」は英語で psychology (サイコロジー)です。

その語源は古代ギリシャ語の息や心、魂を意味する「psykhe(プシュケ)」学問を意味する「logia(ロギア)」だと言われています。

その頭文字であるギリシャ文字の「Ψ(プサイ)」はしばしば、心理学を表すシンボルとして使われます。

 

心理学のはじまり

心理学は19世紀、ドイツのライプツィヒからはじまりました。

その年、ライプツィヒ大学の解剖学教授だったエルンスト・ヴェーバー(1795~1878)による感覚に関する研究でした。

ヴェーバーは手のひらに乗せる重りなどの刺激に対する感覚の変化を調べる実験を繰り返しました。

この研究はライプツィヒ大学の物理学教授であるグスタフ・フェヒナー(1801~1887)に引き継がれ、刺激と感覚の関係を数式で表した法則「ヴェーバー・フェヒナーの法則」が発見されました。

実験によって感覚を数値化するフェヒナーらの研究は「精神物理学」と呼ばれました。

 

これに影響を受けたのが、ライプツィヒ大学の哲学教授だったヴィルヘルム・ヴント(1832~1920)です。

彼は意識や感情といった心の働きも実験を使えば数値化でき、科学的に研究ができると考えました。

そこで彼は1879年にライプツィヒ大学に世界初の「心理学実験室」を開きました。

これが「心理学のはじまり」だとされています。

 

心理学とはどんな学問なのか?

「心理学」と呼ぶための条件は、科学的な方法を使った研究であることです。

心理学の研究で用いられる科学的な方法には「実験法」「観察法」「調査法」などがあります。

 

実験法とは、対象となる人物、動物に様々な刺激を与えて、その結果生じる行動を観察・記録するというものです。

あなたも一度は聞いたことがある「パブロフの犬の実験」が代表例ですね。

 

観察法は、人や動物の行動を観察・記録する点は実験法と同じですが、実験法とは違い、積極的に刺激を与えることはありません。

最後に調査法とは、対象となる人物に書面で様々な質問に答えてもらう方法です。

これらの方法にはそれぞれメリット・デメリットがあり、研究によって使い分けています。

 

心理学者たちはこれらの方法を用いて集めたデータを分析し、その結果に基づいて結論を導きだします。

その分析に欠かせないのが統計学です。

 

マインドパレッサー
僕も心理学を勉強して驚いたのですが、てっきり「心理学」は文系だと思っていたら、√やらΣなどがバンバン出てくる学問でした。笑

 

心理学では「ある確率でこのような行動がみられる」といった具合に、心理や行動の傾向を確率的に捉えます。

つまり、「絶対こうです!」と断定的に主張しているものは心理学とは言えないのです。

 

心理学の種類

心理学はこれまでに数多くの分野が生まれてきました。

個人を対象とする心理学から社会全体を対象とする心理学、基礎的な心理学から実践的な心理学まで様々です。

ここでは主な心理学をご紹介します。

 

発達心理学

年齢を重ねていくときに、人間の心はどのように発達していくのかを明らかにしていく分野です。

発達段階ごとに、児童心理学・青年心理学・老年心理学などに分ける場合もあります。

 

発達心理学に関する記事

 

認知心理学

人間の心のはたらきをコンピューターに例えて、その複雑なしくみを解き明かしていく分野です。

近年、情報科学の発展、コンピューターの進歩に伴って急速に発展し、哲学・言語学・神経科学・工学などの分野との交流により、認知科学という新たな分野を形成しています。

 

認知心理学に関する記事

 

社会心理学

社会の中にいる個人の心理や人間関係に関わる心理を明らかにしていく分野です。

対人関係・集団間の関係・制度や習慣、文化などとの関係を個人または集団の心理的な反応と結び付けて研究します。

 

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臨床心理学

心の問題を抱える人への支援・治療法などを研究する分野です。

近年、うつ病などの精神疾患を患ってしまう人は増加傾向にあり、自分の周りに1人は心を病んでしまっている人がいるような時代です。

そんなときだからこそ、どのように接すればいいのか、どのような言葉がけが適切なのかを専門家だけではなく、あなたが知っておく必要があるのです。

 

臨床心理学に関する記事

 

神経心理学

脳などの神経系のしくみやその損傷と心のはたらきとの関連を探る分野です。

fMRIやPET,CTなどの機器を使って脳の活動を調べたり、運悪く事故などで脳を損傷してしまった人に生じる障害の種類と損傷した部位との関係から言語・思考・認知・記憶といった高次脳機能の解明を目指します。

 

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学習心理学

人がどのように学習していくのかを研究する分野です。

犬を飼っていて芸を仕込もうとする方もいると思います。

芸を仕込む際は通常、特定の行動をさせて上手く出来たら褒めたり、エサを与えて、その行動を強化します。

 

こういったことが分かったのも、学習心理学のたまものです。

 

学習心理学に関する記事

 

感情心理学

喜怒哀楽などの感情の意味やそれらが対人関係の中で果たす役割などを研究する分野です。

人間が初めて獲得した感情は「恐怖」だと言われています。

 

例えば、夜道を歩いていると獰猛な野犬に遭遇しました。

あなたはその獰猛な野犬を認識した瞬間、恐怖を感じると思います。

そして、あなたの身体中の血液は全身を駆け巡り「逃げるか闘うか(fight or flight)反応」をします。

このように感情の1つ1つには理由があるのですが、それを明らかにしていくのが感情心理学です。

 

こちらの記事をご参照ください

 

性格(パーソナリティ)心理学

人の性格やその性格を形成している要因などを明らかにしていく分野です。

ちなみに心理学において「性格」は、

“ある個人を特徴づける持続的で一貫した行動パターン”

としています。

 

パーソナリティ心理学に関する記事

 

組織心理学

職場でのチームワークなど、組織内での人間関係や人の心理に重点をおく分野です。

 

組織心理学に関する記事

 

産業心理学

ヒューマンエラーや能率など、産業に関わる心理を研究する分野です。

この分野では主に生産や販売の増大、経営者と勤労者の調和的な関係の確率を目指します。

 

産業心理学に関する記事

 

犯罪心理学

犯罪者の心理的な特性や背景を探り、犯罪の予防や犯罪者の更生などを目指す分野です。

 

犯罪心理学に関する記事

 

健康心理学

生活習慣の改善や生活の質(Quality Of Life=QOL)の向上など、健康の維持・増進に関わる心理を研究する分野です。

 

健康心理学に関する記事

 

心理学を学ぶ意味

人の心はあらゆるものの影響を受けています。

 

現代の心理学は情報科学の知見を取り入れることで発展してきた認知心理学や社会学の知見によって生まれた社会心理学などのように、様々な学問分野の知見を取り入れることで拡大しています。

 

また、心理学は心のしくみを知るという学問的な側面だけではなく、心に傷を負った人に対するケアといった、現実的な悩みに応えるために発展してきた臨床心理学のような分野もあります。

 

人間は1人では決して生きていけないので、生きていくために社会に適応しなければなりません。

 

横田正夫教授は

心理学とは、社会に適応していこうとする心のしくみを理解することを目的に発展した学問です。

と話しています。

 

これからもどんどん変化していく社会・文化の中で複雑になる人の心理を様々な角度からアプローチすることで、心の謎を解き明かしていくでしょう。

 

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参考文献

『Newton』2019/12号

 

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