フロイトの精神分析の概要を分かりやすく解説。心理的問題や目的は?

 

ジクムント・フロイト(Sigmund Freud)

彼が自己分析や治療的な経験を通して生み出した「精神分析」は、心理学を学ぶ者であれば誰もが勉強することであるが、その理論は分かりやすいとは言えない。

 

そこでこの記事では、フロイトの精神分析の概要を出来るだけ分かりやすく、丁寧に解説していきます。

この記事を読んで分かること
  1. 精神分析における無意識の理論
  2. 性の理論
  3. 「構造論」(イド・自我・超自我)
  4. 精神分析における心理的問題
  5. 精神分析の治療目的

 

それでは、心理療法のはじまりである精神分析を学んでいきましょう!

 

 

フロイトの精神分析における「無意識」という概念

無意識とは文字通り、意識がないことである。この「無意識」という概念はフロイトによって生み出された。

フロイトはさまざまな患者の観察を通して、読み間違い・言い間違い・もの忘れなどの失錯行為、夢といった一見、無意味に見えることも本人が気づかぬ無意識的な意味があると考えた。

 

フロイトは「無意識」という言葉を次の2つの意味で使っている。

  1. 「無意識に○○をする」のように、人が気づいていない心を記述する場合
  2. 人の心を、意識・前意識・無意識と3つの領域に分けて考える場合

まずは、②人の心を意識・前意識・無意識に分けて考える「局所論」から説明していきます。

「局所論」~意識・前意識・無意識~

画像引用:構想主義者ねる(kitsunekonkon.blog38.fc2.com)

フロイトは“人のこころ”を考える上で、こころには「意識」「前意識」「無意識」の3つの領域があると考えました。

  1. 意識‐いま、気が付いているこころの部分
  2. 前意識‐いまは気が付いていないが、注意を向けて思い出そうとすれば思い出せる心の部分
  3. 無意識‐催眠や*自由連想を用いない限り、その内容が意識にのぼってこないように深く抑圧されているこころの部分

フロイトは実際に脳の中が意識・前意識・無意識という3つの部分が実在すると考えていた訳ではなく、あくまでも人のこころを説明するための仮設として使っていました。

 

用語解説
自由連想‐ヒステリー症状がある患者を寝椅子に横たわらせ、頭に浮かぶことを自由に語らせることで、無意識下に押し込まれたことを言語化させる

 

無意識の解読‐「夢判断」

フロイトは人は寝ている間、抑圧する力が弱まり、無意識に押し込まれている欲求の力が強まって意識にのぼろうとすると考えました。

ただし、フロイトはこの無意識過程がそのまま意識にのぼってくることは少なく、何らかの形に歪曲された夢を見ると考えました。

つまり、夢は変形され、意識可能な形に加工されたものを人は寝ている間に見るのです。

 

フロイトは夢というものは人の願望を表していると考えました。

しかし、夢は変形、歪曲、加工されているため、願望は曖昧になっているため、直接的に読み解くことは難しい。

しかし、フロイトは注意深くひも解いていけば、夢に秘められた無意識的な意味を理解することが出来ると考えました。

失錯行為が持つ無意識的な意味

フロイトが無意識にアプローチするため、夢の次に注目したのが失錯行為です。

失錯行為とは、

  • 言い間違い
  • 読み間違い
  • 書き間違い
  • もの忘れ
  • 紛失

といった誰にでもある些細な失敗のことです。フロイトはこれらの中にも隠された無意識的な意味があると考えました。

 

例えば、同僚に「仕事のあと、飲みに行かない?」と誘われたとき、「行かない...じゃなかった行く!」と言い間違えたとします。

この言い間違いはフロイトの考えによると、本当は行きたくないという気持ちが現れた結果です。

 

つまり、失錯行為は本来の意図(「行く」と言う)と、本人は意識していない本心がこころの中でぶつかり合った結果、生じるものと言えます。

すべての問題は性欲に由来する!?

Image by Okan Caliskan from Pixabay

フロイトは人間の基本的、根源的本能の目指すところは「性の満足」であると主張しました。

それが原因となって当時の人たちは「すべての問題を性欲に還元している」とフロイトのことを批判し、ユングやアドラーがフロイトから離れていく起因にもなった。

世間一般の性欲とフロイトの考える性欲の違い

世間一般とフロイトの考える“性欲”は本質的に異なります。

一般的に“性的なもの”とは、性器の結合を目的とした大人の性行為を考えると思うが、フロイトはこれを「性器的」と呼び、もっと広い意味持つ「性的」とは区別しました。

 

フロイトの言う「性の本能」とは、生まれた時から人間の精神的発達の源として働くものです。フロイトは性の本能を発現させる力を「リビドー」と呼びました。

リビドーの発達段階(口唇期・肛門期・男根期・性器期)とは?

フロイトは幼児にも広い意味の性欲があると考え、性器の結合を目的とする大人の性行為に到達するまでに、一定の順序でカラダの各粘膜部位(口唇・肛門・男根・性器)に向けられるとした。

そして、フロイトは人間の精神の発達が性の本能と関連し、それが段階的に変化しながら発達していくと理論を考えた。

この理論を「リビドーの発達段階」と言います。

 

フロイトは精神の発達を以下の4つに区分し、一時的に性の本能が不活発になる「潜伏期」の存在も明らかにした。

  1. 口唇期‐出生から1歳半くらい
  2. 肛門期‐およそ2歳~4歳
  3. 男根期‐3,4歳~6,7歳
  4. 性器期‐思春期、青年期

性の本能が向けられる部位は変化していきますが、時期を過ぎるとすぐにその部位からリビドーが撤去され性の本能の対象でなくなる訳ではなく、優位な特定の部位が変わっていくとしました。

では、各発達段階を簡単に説明していきます。

口唇期‐出生から1歳半くらい

授乳や飲食をすることによる口唇、口腔粘膜、下などのリビドー興奮が性的な快感と結びつく。

乳児はお腹が空くと母乳をもらって空腹感を満たすが、満腹になったあともおっぱいを吸い続ける。このことから、乳児にとって母乳は栄養補給以外にも、口唇的快感を満たす意味があると考える。

肛門期‐およそ2歳~4歳

肛門や尿道の括約筋を支配する神経が完成することで、自分の意志で大小便のコントロールが出来るようになる。

肛門期では、それに伴う感覚的刺激を楽しむようになる。

男根期‐3,4歳~6,7歳

男根期では、男女とも関心が男性器の有無に集中する。

この時期から男性・女性という性の違いが分かり、異性の親に対する性的な関心を抱くようになる。

 

そして、同性の親に対しては異性の親を巡り、競争心・攻撃心を向けるようになる。特に男の子は母親に対して性的な関心を抱き、父親に対しては嫉妬心が生まれ、父親がいなくなればいいと願う。

しかしその一方で、男の子は父親に対して愛情も持っているので、「父親がいなくなればいい」と願う自分自身に苦痛を感じたり、「こんな願いを持っていると父親にバレたらどうしよう」と不安(去勢不安)を感じる。

 

  1. 異性の親に対する愛着
  2. 同性の親に対する敵意
  3. 罰せられるかもしれないという不安

の3点を総括して「エディプス・コンプレックス」と言います。

 

【あわせて読みたい】

夫婦関係が親子関係に及ぼす影響。息子は夫のミニバージョン?

 

潜伏期‐5,6歳~思春期はじめ(11,12歳)

口唇期から各カラダの部位に性の本能が向けられてきたが、潜伏期においては一時的に不活発になる。

ただし、性欲動が低下しているというよりは、児童期に入って急激に知的・社会的関心が高まるため、相対的に性的関心が低下していると考える。

性器期‐思春期、青年期

身体的成熟とともに性欲動が急激に高まり、各カラダの部位に向けられていた性の本能が性器性欲へと統合されていく時期である。

 

生物学的にみて性器が本来の機能である生殖活動に意識が向けられることから、この時期を「性器期」と呼んでいる。

それに対して、口唇期・肛門期・男根期・潜伏期をまとめて「前性器期」と呼ぶ。

「構造論」~人のこころはイド・自我・超自我からなる~

画像引用:yahoo知恵袋

フロイトは人間の心を意識・前意識・無意識の3層に分けて考える「局所論」を唱えていた。

しかし、研究を進めるうちに局所論だけでは人の心を理解するのに不十分・不適当だと考え、局所論に加えて、人の心をはイド(エス)・自我・超自我という3つの心的な組織からなるという「構造論」を明らかにした。

快楽原則に従う「イド(エス)」

イドは人間の心の中にある無意識の生物的・本能的エネルギーに満ちた心の部分です。

フロイトはドイツ語の「エス(es)」という言葉を使いましたが、英訳では「イド」として用いています。

 

イドは本能エネルギーの貯蔵庫であり、快楽原則だけに従ってひたすらに満足を追い求め、論理性に欠け、社会的価値を無視します。

このイドのエネルギーが意識の領域に侵入すると、願望や外界への興味となってエネルギーが発散されます。性的願望や破壊衝動はその代表例です。

イドと超自我の調整を担う「自我(エゴ)」

生まれて間もない頃は心のほとんどをイドが占めているが、外界との接触を通して、成長してくるのが「自我(エゴ)」です。

自我は快感を追求し湧き上がる衝動を満足させようとするイドをコントロールし、外界の現実と調和していく人格の中枢的な役割を担います。

 

フロイトは外界からのストレス、イドからの欲求・衝動から生じる不安から、自我は自分自身を守っていると考えました。

この防衛のしかたを「防衛機制(defence mechanism)」と呼びました。

たとえば、過去にあった嫌なことを思い出さないように心の奥底に押し込む「抑圧」などです。

 

【防衛機制に関する記事はこちら】

自分を守る無意識の心理メカニズム「防衛機制」とは?種類・具体例を解説

道徳心や良心である「超自我(スーパーエゴ)」

超自我(スーパーエゴ)」とは、エスや自我よりも後の時期(4~5歳ころ)に形成され発達してくる心的機能です。

超自我は善悪を判断して、良い行為を取るように勧め、悪い行為を取らないように禁止する良心、あるいは道徳心のようなものです。

 

フロイトは超自我の起源として、親のしつけを最も重視しています。

自分に向けられる親の愛情や好意を失わないようにする為に、親が禁止したり、要請したりする生活規範や社会的なルールを内面化していくとしています。

精神分析における心理的問題・治療の目的とは?

ここまでフロイトが人のこころをどう捉え、そのためにどのような理論を構築してきたかを説明してきました。

この章では結局、精神分析における心理的問題とは何か?また、治療の目的は何なのかということを解説します。

精神分析における心理的問題とは何か?

フロイトはヒステリー症状がある患者は、忘れ去られた過去の心的外傷体験によって引き起こされると考えた。

自由連想を用いて患者の心的外傷体験を遡っていくと、幼児期にまで連想を進めていくことに気が付いた。

そこでフロイトは「幼児期にこそ、症状を形成する問題がある」と考えた。そしてフロイトは患者が連想する多くの記憶が「過去の性的体験」に関連していることを発見した。

 

つまり、精神分析における心理的問題は、過去の両親との性的葛藤を無意識の世界に抑圧することによって生じると考える。

精神分析における治療の目的は何なのか?

精神分析では、自由連想などによって無意識世界に抑圧されているものは何かを明らかにすることで、

  1. 無意識に対する自我の支配の確立
  2. 無意識に翻弄されなくなる

ことを治療の目的としている。

最後に

この記事では、フロイトの生涯については触れなかったが、彼が考えた精神分析には彼の人生が色濃く反映されています。

精神分析をより理解したい方は、フロイトが歩んだ人生を学ぶことが役立ちます。

 

【引用文献】

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