日本人に多い精神疾患とは?それぞれの症状を簡単に解説

世界では、約7億9200万人もの人が何らかの精神疾患で苦しんでいると言われています(2017年ワシントン大学保健指標評価研究所より)。

精神疾患にはさまざまな種類があります。

国際的な精神疾患の診断基準であるDSMの第5版「DSM‐Ⅴ」の分類には、500以上の精神疾患が記載されています。

 

では、日本人に多い精神疾患とはなんなのでしょうか?

この記事では、日本人に多い精神疾患を紹介し、それぞれの精神疾患の症状を簡単に解説します。

日本人に多い精神疾患とは?それぞれの症状を簡単に解説

2017年にアメリカのワシントン大学 保健指標評価研究所が各精神疾患を発症していた人がその国の人口に占める割合を調査しました。

以下のグラフは日本人に関する部分を抜き出したものです。

出典:IHME,Global Burden of Disease(Newton 2020/10より)

グラフを見ると、日本人は「不安障害」「うつ病」が特に多く、「薬物依存」「双極性障害」「アルコール依存症」「摂食障害」「統合失調症」と続きます。

 

2017年当時の人口を126,000,000人とすると、人数は以下のようになります。

不安障害 約450万人
うつ病 約420万人
薬物依存 約116万人
双極性障害 約87万人
アルコール依存症 約73万人
摂食障害 約57万人
統合失調症 約38万人

これらの精神疾患は日本だけではなく、世界的に多く、たくさんの人が苦しんでいる疾患だと言えます。

聞いたことがある疾患名もあると思いますが、それぞれどのような精神疾患なのかを簡単に解説していきます。

不安障害

日本人に最も多い精神疾患である不安障害(anxiety disorder)とは、「あの状況になったらどうしよう」という過剰な不安から、発汗や動悸といった身体症状に襲われる精神疾患です。

 

たとえば、狭い場所にいくと、強い不安に襲われ、発汗・動悸・過呼吸などを起こしてしまう人などです。

不安になる状況は以下のような状況があります。

  • 電車
  • 閉所
  • 人ごみ
  • 人前

 

不安障害と似た疾患に「強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)」があります。

強迫性障害は「これをしないと不安だ」という強迫観念にかられ、特定の行動を繰り返してしまう精神疾患です。

  • 何かに触れる度に手が汚れてしまったと思い、手を洗わずにはいられない
  • 順序や左右対称が気になり、常に自分なりのやり方で整理整頓されていないと気が済まない
  • 火の始末や戸締りが気になって仕方ない
  • 物が捨てられずにため込んでしまう

強迫性障害は以前まで不安障害に含まれていましたが、2013年に発表されたDSM‐5から、別の病気に分類されました。

 

【不安障害・強迫性障害に関する記事はこちら】

 

【国際的な精神疾患の診断基準「DSM」「ICD」に関する記事はこちら】

 

うつ病

うつ病(depression)は、憂鬱な気分、意欲の減退、不眠、食欲不振などの症状が長くつづく精神疾患です。

 

うつ病患者は新型コロナウイルスの影響で世界的に増えています。

国連によると、エチオピア北部の地域で2020年4月にうつ症状を示した人の数は、コロナウイルス感染拡大以前の約3倍にのぼったといいます。

また、イギリスでロックダウン(都市封鎖)が行われていた時期に「The Zero Suicide Alliance」という団体による自殺防止用のオンライン抗議を受講した人は、3週間で50万人(2017年にこの団体が設立されてから感染拡大までに同講義を受講した人数と同程度)でした(Newton,2020/10)。

「コロナうつ」という言葉もあるように、うつ病が世界的に増えていると考えられます。

 

【うつ病関連の記事はこちら】

 

薬物依存

薬物依存(drug dependence)とは、覚せい剤、睡眠薬、鎮静剤、麻薬といった薬物が生活に支障や身体に害をもたらしているとは自覚しながらも、その使用をコントロールできなくなってしまう状態です。

薬物を摂取すると、薬物に対する「耐性」ができるので、効果が薄くなります。

たとえば、最初、睡眠薬1錠で眠れていたが、次第に1錠では眠れなくなり、同じ効果を得るために2錠、3錠と増えていくのです。

 

薬物依存になると、その薬物が欲しくて欲しくてたまらなくなり、かと言って使用を中止すると、不安感・不眠・悪寒・吐き気・発汗・発熱などの禁断症状(離脱症状)が現れます。

このあとで解説する「アルコール依存症」や薬物依存は何らかの物質の摂取に依存するので「物質依存(substance dependence)」といいます。

一方、ギャンブル依存や買い物依存、ゲーム依存などは何らかの行為に依存するので「行為依存、行為嗜癖(behavioral addiction)」といいます。

 

【物質依存に関する記事はこちら】

 

【行為依存の一つ「窃盗症(クレプトマニア)」に関する記事はこちら】

 

双極性障害

双極性障害(Bipolar disorder)とは、万能感に満たされて活動的になる「躁(そう)状態」と気分が落ち込み抑うつ状態になる「うつ状態」が、一般的に数年の間隔をおいてくりかえす精神疾患です。

双極性障害には、主に「Ⅰ型」と「Ⅱ型」と呼ばれる2つのタイプがあります。

「Ⅰ型」

躁状態が1週間以上、うつ状態が2週間以上つづくとされています。

一般的に、最初に現れた躁状態やうつ状態がおさまってから5年程度は、症状が落ち着く「寛解期(かんかいき)」を迎えますが、症状が再び現れることがあります。

何度も再発を繰り返すうちに、寛解期はどんどん短くなっていきます。

そして、最終的には1年間に4回以上も躁状態とうつ状態を繰り返す「急速交代型(ラピッドサイクラー)」の状態になることもあります(Newton,2020/10)。

 

「Ⅱ型」

気分の高揚が比較的軽く短い「軽躁」の状態が4日以上つづき、Ⅰ型と比べると、うつ状態が長いという特徴があります。

再発とともに、寛解期がどんどん短くなっていくところは共通しています。

「うつ病」と誤診されることが非常に多い精神疾患なのですが、双極性障害の患者にうつ病の治療に使用される「抗うつ薬」を使用すると、再発の可能性が高まったり、症状が悪化するなどの危険性があります。

うつ病と診断されている方でも、よく話す、尊大な態度をとる、といった躁状態の症状がみられる場合は、双極性障害を疑った方が良いかもしれません。

アルコール依存症

「薬物依存」のところで依存症については少し触れましたが、アルコール依存症(alcoholism)とは、アルコールを止めたくても止められない状態です。

「アルコール依存症」と聞くと、お酒をガブガブ飲んでいるイメージが湧くと思いますが、たとえ350mlのビール1缶でも「飲まないと寝られない」といった状態はアルコール依存症の可能性あります。

 

2013年に厚生労働省が行った調査によると、医療機関で治療を受けているアルコール依存症患者は5万人ほどでした。

しかし、アルコール依存症の方は「自分は止めようと思えばいつでも止められる」と考える傾向にあるため、ほとんどの人は医療機関を受診しないため、実際には100万人にのぼるとの推計が出されました。

 

【アルコール依存症に関する記事はこちら】

 

摂食障害

摂食障害(Eating Disorder)とは、極端な食事制限や過度な食事など食事量のコントロールができなくなり、心身ともに健康に深刻な影響を及ぼす精神疾患です。

 

摂食障害は、「拒食症(神経性やせ症)」「過食症(神経性過食症・過食性障害)」「その他」に分けられます。

  • 拒食症(神経性やせ症)‐痩せていることへの執拗なまでのこだわり、自分のカラダに対するイメージの歪み、太ることへの極端な恐怖、食事量の極端な制限による低体重を特徴とする摂食障害です。
  • 過食症(神経性過食症)‐明らかに普通よりも多い量の食べ物を短時間に次から次へと摂取し、そのあとで、過食を埋め合わせる行為「代償行為→嘔吐、下剤乱用、絶食、過度な運動」を行うことを特徴とする摂食障害です。
  • その他の摂食障害の1つである異食症‐紙・粘土・クレヨン・毛などの食べ物ではないものを日常的に食べることを特徴とする摂食障害です。

 

【摂食障害に関する記事はこちら】

 

統合失調症

統合失調症(Schizophrenia)とは、幻覚や妄想、幻聴、抑うつなどの症状を特徴とする精神疾患です。

世界中のどの地域でも、およそ100人に1人の割合で発症するとされています。10代、20代での発症が最も多く、思春期から成人早期にかけて受けたストレスがきっかけとなる場合が多いです。

 

統合失調症には一般的に、「前兆期」「急性期」「休息期(消耗期)」「回復期」という4つのステージがあります。

前兆期

統合失調症の発症前に、イライラ、不眠などの軽い症状が現れる時期。

急性期

統合失調症を発症し、幻聴や妄想、多弁、独り言が増えるといった「陽性症状」が現れる時期。

休息期(消耗期)

脳の活動が低下し、喜怒哀楽が乏しくなる、抑うつ、集中力・記憶力の低下といった「陰性症状」が現れ、認知機能障害が出てくる時期です。

回復期

だんだん意欲が湧いてくる時期です。

統合失調症は再発の可能性が高い精神疾患なので、回復期でも薬を飲みつづける必要があります。

 

【統合失調症に関する記事はこちら】

 

日本は精神疾患での受診率が低い

世界の精神疾患の有病率を見てみると、最も高い国がニュージーランド(18.71%)、オーストラリア(18.43%)で最も低い国がベトナム(9.72%)でした。

気になる日本はというと、12.36%で世界平均(12.94%)よりも少し低い値となりました。

精神疾患の有病率は世界的にみると、低めなのか。

と思うかもしれませんが、これには落とし穴があります。

 

国民の精神疾患への意識が高い国ほど、たくさんの人が「自分は精神疾患かもしれない」と思い、医療機関を受診するため、精神疾患が発見されやすく、有病率が高くなるのです。

実際、オーストラリアは精神疾患への意識が高く、小学校でさまざまな精神疾患の治療で用いられている心理療法「認知行動療法」の知識が教えられています(Newton,2020/10)。

 

日本は精神疾患をもつ人の医療機関の受診率が低いと言われています。

2002年~2005年にWHOが行った世界メンタルヘルス調査によると、中程度の重症具合の精神疾患を経験した人のうち、医療機関を受診した人は日本では、約17%しかいませんでした。

これは世界的にみると非常に少ないです。たとえば、受診率が高いベルギーでは約50%が受診していました。

 

【認知行動療法に関する記事はこちら】

 

精神疾患に関して日本は遅れている

世界的に精神疾患をもつ人を監禁したり、“保護”という名目で私宅に監禁したという歴史があります。

日本では、1950年に「精神衛生法」の施行に伴い、精神病者(精神疾患をもつ人は当時そう呼ばれていた)の監禁・隔離よりも治療に重きが置かれるようになるまで「私宅監置」していました。

私宅監置とは、精神疾患をもつ人を自宅の一室や物置小屋、離れなどに専用の部屋に監禁することです。

 

ただし、米軍統治下の沖縄県においては精神病院が不足していたため、琉球政府が1960年に施行した「琉球精神衛生法」においては「私宅監置」が認められていました。

1972年の本土復帰に伴い、琉球精神衛生法は廃止され、日本全土において私宅監置は禁止されたのです(wikipedia,私宅監置より)。

つまり、日本が完全に私宅監置を禁止してから、50年ほどしか経ってないのです。

 

こういった歴史があるため、精神疾患をもつ人、精神疾患であることへの偏見があり、医療機関を受診する人が少ないのだと考えられます。

最後に

東京帝国大学(現 東京大学)医科大学精神病学教室主任であった呉秀三が「私宅監置」を調査し、1918年に出版された『精神病者私宅監置ノ実況』においてその実態を詳細に報告しています。

わが国十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし

という、この本に記載された言葉は、極めて劣悪であった当時の精神衛生の現状と、現在までに至る日本の精神衛生の原点を示す言葉として有名です。

 

精神疾患をもつ人にとって、日本は住みにくい国なのかもしれません。

それを改善していくためには、精神疾患に関する正しい知識を得て、偏見をなくしていくことが必要になります。

 

【あわせて読みたい」

 

【引用文献】

Newton(2020/10)精神の病気の取扱説明書

 

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。