摂食障害の種類と原因。カウンセリングの特徴や注意点を解説

摂食障害(英語:Eating Disorder)とは、極端な食事制限や過度な食事など食事量のコントロールができなくなり、心身ともに健康に深刻な影響を及ぼす精神疾患です。

 

摂食障害で悩む患者の多くは10代~40代の女性ですが、近年は男性の患者も増えてきています。

摂食障害になると、家族にすら相談することができず、一人で悩みを抱えてしまうケースが少なくありません。

そして、治療が長期間に及ぶことも多く、なかなか治りにくい病気とされています。

 

この記事では、摂食障害の種類や原因、摂食障害の方に対するカウンセリングの特徴と注意点について解説していきます。

 

摂食障害の種類と原因

摂食障害は拒食症(神経性やせ症)、過食症(神経性過食症・過食性障害)、その他に分類されます。

それぞれの特徴、症状、治療法と摂食障害になる原因を解説していきます。

 

拒食症(神経性やせ症)

拒食症は正式な診断名を「神経性やせ症」と言います。

神経性やせ症は瘦せていることへの執拗なまでのこだわり、自分のカラダに対するイメージ(ボディイメージ)の歪み、太ることへの極端な恐怖、食事量の極端な制限による低体重を特徴とする摂食障害です。

軽度の場合は、周りに気づかれないことも多いです。

 

軽度で一過性の場合もあれば、重度で長期にわたる場合もあります。

BMIが17kg/㎡以下‐軽度

BMIが15kg/㎡-重度

とされています。

主な患者

患者の約9割が女性。通常は青年期から成人期早期に発症します。

思春期前や40代以降に発症することは珍しいです。

 

主な症状

体重に囚われていて、痩せてもなお「自分は太っている。痩せないと!」と考える。

神経性やせ症の患者は自分が病気であると認めず、治療にも消極的です。

  • 心拍数・血圧・体温の低下
  • 体毛が細く柔らかくなる
  • 体や顔の毛が濃くなる
  • 生理不順・無月経
  • むくみ(浮腫)
  • 腹部膨満・腹部不快感・便秘
  • 味覚異常
  • 思考力の低下
  • 抑うつもしばしばみられる
  • 死にたい願望(希死念慮)

また、自己誘発性嘔吐がある場合は、歯のエナメル質の溶解、頬の唾液腺(耳下腺)の腫れがみられます。

 

重度の栄養失調になると体内のすべての器官が影響を受けますし、骨密度が低下して骨粗しょう症のリスクも上がります。

不整脈が原因とみられる突然死も起こる可能性があります。

 

主な治療法

  • 十分なカロリーと栄養素を摂取させるための対策
  • 精神療法
  • 家族療法(患者が青年の場合)
  • 定期的な健診

 

過食症(神経性過食症・過食性障害)

過食症は正式な診断名を「神経性過食症、または過食性障害」と言います。

神経性過食症は明らかに普通よりも多い量の食べ物を短時間に次から次へと摂取し、そのあとで過食を埋め合わせる行為(代償行為:嘔吐、下剤乱用、絶食、過度な運動)を行うことを特徴とする摂食障害です。

 

一方、過食性障害は過食のあとで代償行為を伴わないものを摂食障害です。

代償行為を行わないため、過食性障害の患者は標準体重を大幅に上回っていることが多い。

 

患者はアイスクリームやケーキ、チョコレートのような脂肪分が多く、甘い食べ物を好んで食べる傾向があります。

また、指を使って意図的に嘔吐するため、関節に傷あと(吐きだこ)がみられます。

 

主な患者

年齢層別だと20代の方が多いことが分かっています。

ただ若い頃に発症し、治らないまま中高年になってしまう場合も少なくないです。

 

主な症状

通常、過食は隠れて行われます。

空腹でなくても食べたり、身体的な不快感が生じるまで食べたりします。

 

  • 嘔吐
  • 下剤乱用
  • 利尿剤服用
  • 生理不順・無月経
  • むくみ(浮腫)
  • 歯のエナメル質の溶解
  • 虫歯
  • 頬の唾液腺(耳下腺)の腫れ
  • 食道の炎症とそれに伴う吐血

 

神経性過食症/過食性障害の方は、神経性やせ症の方よりも自分の病気についての自覚があるため、医師や信頼できる人に悩みを打ち明けることがよくあります。

 

また、神経性過食症/過食性障害の方は食費が高くなるため、経済的な問題を抱えやすく、万引きをしてしまう方も少なくありません。

過食や排出行動によって、胃や食道が避けて生命を脅かす合併症を引き起こす危険性もあります。

 

主な治療法

  • 認知行動療法
  • 対人関係療法
  • 薬物療法

 

その他(異食症・反芻(はんすう)症・回避/制限性食物摂取症)

異食症

異食症は紙、粘土、クレヨン、毛など食べ物ではないものを日常的に食べることを特徴とする摂食障害です。

基本的には身体に害のないものを食べますが、消化管の閉塞や鉛中毒などの合併症を引き起こすこともあります。

2歳未満の子どもでは、異食がみられても発達上正常とみなされます。

 

主な患者

妊婦、認知症患者、自閉症スペクトラム障害・知的能力障害・統合失調症などの精神疾患患者。

 

妊婦が異食症になりやすいのは、鉄や亜鉛といった妊娠時に必要な栄養素が不足するからだと言われています。

妊娠中は多くの血液を作るため、必要な栄養素を補おうと無意識に異食をしてしまうことがあります。この場合は妊娠中のみに発症し、特に治療をしなくても自然に治ることが多いです。

 

主な症状

  • 便秘
  • 消化管の閉塞
  • 塗料片を食べることによる鉛中毒
  • 泥を食べることによる寄生虫感染症

 

主な治療法

  • 行動変容法(認知行動療法を用いた治療法)
  • 消火管の閉塞が起こっている場合は手術が必要

 

行動変容法は望ましい行動を学習しつつ、望ましくない行動をなくしていく治療法です。

 

反芻症

反芻症は一度食べたものを胃から口に戻し、再び飲み込むという行為を特徴とする摂食障害です。

反芻という行為が社会的には良しとされていないことを知っており、口に手を当てたり、咳をすることで隠そうとする人もいます。

また、他の人と食事へ行くことを避けたり、社会活動・仕事の前には食事を摂らないようにすることが多いです。

 

主な患者

乳児、小児、青年で発症します。

特に生後3~12か月の男児に起こりやすく、基本的には成長とともに自然と症状が出なくなります。

まれに成人が反芻症にかかることもあります。

 

主な症状

  • 口臭
  • 脱水症状
  • 歯のエナメル質の溶解
  • 虫歯
  • 体重減少

 

主な治療法

行動変容法

 

回避/制限性食物摂取症

回避・制限性食物摂取症は食べ物をごくわずかしか摂取しなかったり、特定の食べ物の摂取を避けたりする摂食障害です。

なお、歪んだボディイメージ(神経性やせ症、神経性過食症でみられる特徴)がある場合は、回避・制限性食物摂取症には該当しません。

 

主な患者

典型的には、小児期に発症。

小児期によくみられる「偏食」と区別が難しいです。偏食の場合は一般的に食べないものは数種類だけで食欲はあり、全体として十分な量の食事が摂れるので、正常な発達・成長がみられます。

 

主な症状

  • 体重減少
  • 栄養失調
  • 他人との食事や人間関係の維持が困難

 

主な治療法

認知行動療法

 

摂食障害になる原因

精神疾患は心理的な問題だけがトリガーとなって発症する訳ではありません。

精神疾患は、生物的要因(遺伝・細胞・神経など)、心理的要因(性格・考え方・感情など)、社会的要因(会社・家族・文化など)が複雑に絡み合って発症します。

 

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

ここでは、摂食障害の原因をその3つの要因に分けて説明していきます。

 

生物的要因

近年の家族内集積の研究や双生児研究で、摂食障害の発症のしやすさに遺伝的な要因が重要な役割を果たしていることが分かってきました。

 

それぞれ異なった遺伝子が神経性やせ症、ならびに神経性過食症の発症に関係しており、神経性やせ症の遺伝率は神経性過食症よりも若干高いと報告されています。

 

ただ、両者の間には遺伝的な関連が認められていて、神経性やせ症から神経性過食症に変わったり、頻度は少ないですが神経性過食症から神経性やせ症に変わったすることがあります。

言い換えると、神経性やせ症と神経性過食症はそれぞれ別の罹患感受性遺伝子(病気への罹りやすさに関連する遺伝子)があるものの、全然違う遺伝子という訳ではないということが示唆されます。

 

心理的要因

摂食障害になりやすい性格として、「自分に自信がない」「自尊心が低い」などが挙げられます。

 

個別にいうと、

  • 神経性やせ症‐完璧主義、成功や成績に対して高いレベルを求める傾向、過度なやせたい願望
  • 神経性過食症‐抑うつ、不安

 

社会的要因

インターネット・SNSの普及によって、女優やアイドル、モデルなどのスリムな体形を見る機会が多くなり、人々は自分の体形にコンプレックスを感じやすくなりました。

 

また、メディアは

メディア
脂肪とおさらば!これを飲んで痩せボディになろう!

痩せてる人=良い、太ってる人=悪いというイメージを国民に植え付け、危機感を煽り、商品を売ろうとします。

 

インターネット、SNS、メディアが摂食障害の増加に関与していることは疑いようがないでしょう。

 

また、家族環境の面からいうと、

  • 両親の別居や離婚などの両親の不和
  • 家族関係が希薄
  • 親からの高すぎる期待
  • 偏った養育態度
  • 幼少期に適切な愛着関係が築けなかった

などが原因として考えられます。

 

摂食障害の方に対するカウンセリングの特徴と注意点

摂食障害の治療で最も困難なことは、カウンセリングの導入の際に関係を築くことでしょう。

というのも、摂食障害の患者は大半が治療に対するモチベーションが低いのです。

 

神経性やせ症の患者は自分が病気であることを否定する傾向がありますし、神経性過食症の患者は過食嘔吐で憔悴していて助けを求めていますが、回復することに恐怖も感じる(両価的な感情)ことが多いです。

 

神経性やせ症も神経性過食症も、「治療を受けることは発病前の自分に戻ってしまうこと」を思い込む傾向があり、それが治療に対するモチベーションを下げることがあります。

そのため、治療の導入期は患者の抵抗やトラブルが多発します。

 

カウンセラーはこの抵抗感を理解し治療導入期の混乱に対処することが、治療を継続していく上で大切になります。

 

また、摂食障害の患者は治療を受ける(受けさせられる)ことによって敗北感を感じ、自己評価が下がったり、自分を責めたり、自暴自棄になりやすい。

そこから、自殺企画や自傷行為に走る危険性もあるため、こういった危険を予防しながら、かつ守りになりすぎない治療計画・治療環境を検討する必要があります。

 

まとめ

現代は以前と比べて、SNSの普及などによって、摂食障害になりやすい状況と言えます。

友人の「わたし、幸せでーす!」みたいなキラキラした写真やモデルのスリム体形を毎日見ると、自分には価値がないと思ったり、自分の体形に自信をなくしてしまいますよね。

 

ただ、その友人もキラキラしている瞬間を切り取っているだけで普段は家で卵かけご飯とかを食べているでしょうし、モデルは写真加工技術を駆使して、クビレや胸、お尻を強調してます。

 

話がちょっとズレてしまいましたが、医師もカウンセラーも患者さん本人に「治したい!」という意思がなければ、治療をすることができません。

もし、摂食障害で悩んでいるなら、まずは話しやすい人に相談してみましょう。

 

あわせて読みたい

 

参考

厚生労働省 「知ることからはじめよう。みんなのメンタルヘルス」

MSDマニュアル家庭版「摂食障害」


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