精神疾患における2つの診断基準DSMとICD(国際疾病分類)の違いとは

心の病である精神疾患は目に見えるケガや病変などがないため、精神疾患の診断にあたっては、精神科医の主観的な判断に委ねられていました。

主観的な判断であるため、同じ患者でも医師によって診断名が異なるということがしばしば起こっていました。

たとえば、かつてアメリカとイギリスの精神科医に同じ患者を診察させたところ、アメリカの精神科医は「統合失調症」と診断することが多く、イギリスの精神科医は「うつ病」との診断が多かったとの報告がありました(渡辺,2007)。

このような状態では今後の研究や医療の妨げとなるということで、国際的に統一した診断基準と分類を確立する試みがなされるようになりました。

 

そこで、医師の主観的な診断ではなく、精神疾患をなるべく表面に現れている客観的な症状で分類するようになりました。

これを「操作的診断基準(operational diagnostic criteria)」と言います。

現在、用いられている診断基準が「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」と「国際疾病分類(ICD: International Classification of Diseases)」です。

この記事では、2つの診断基準 DSMとICDの違いを解説していきます。

2つの診断基準DSMとICD(国際疾病分類)の違いとは

現在用いられている精神疾患の国際的な診断基準がDSMとICDです。

そもそもDSM、ICDとは何なのかを解説していきます。

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)とは?

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)とは、アメリカ精神医学会(APA:American Psychiatric Association )が作成している精神疾患に関する診断基準です。

1952年に第1版となるDSM‐Ⅰが発行されました。

  • 1952年 DSM‐Ⅰ
  • 1968年 DSM‐Ⅱ
  • 1980年 DSM‐Ⅲ
  • 1994年 DSM‐Ⅳ
  • 2013年 DSM‐Ⅴ

と数年おきに更新されており、2020年9月現在、DSM‐Ⅴが最新です。

医師は基本的にこのDSMが示す基準にもとづき、患者がどの病気に該当するかを検討していきます。

国際疾病分類(ICD)とは?

国際疾病分類(ICD)とは、世界保健機関(WHO)が定めた病気の分類です。

ICDでは、病気を網羅的に分類し、「ICDコード」と呼ばれるコードを与えています。

ICDコード:分類見出し
A00-B99:感染症および寄生虫症
C00-D48:新生物
D50-D89:血液および造血器の疾患ならびに免疫機構の障害
E00-E90:内分泌、栄養および代謝疾患
F00-F99:精神および行動の障害
G00-G99:神経系の疾患
H00-H59:眼および付属器の疾患
H60-H95:耳および乳様突起の疾患
I00-I99:循環器系の疾患
J00-J99:呼吸器系の疾患
K00-K93:消化器系の疾患
L00-L99:皮膚および皮下組織の疾患
M00-M99:筋骨格系および結合組織の疾患
N00-N99:尿路性器系の疾
O00-O99:妊娠、分娩および産じょく<褥>
P00-P96:周産期に発生した病態
Q00-Q99:先天奇形、変形および染色体異常
R00-R99:症状、徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
S00-T98:損傷、中毒およびその他の外因の影響
V00-Y98:傷病および死亡の外因
Z00-Z99:健康状態に影響をおよぼす要因および保健サービスの利用
U00-U99:特殊目的用コード

出典:ICD‐10(国際疾病分類 第10版)2003年改訂

このように精神疾患に限らず、病気やケガなど1万項目以上が分類されています。

 

1900年に第1版が発行されてから数年おきに改定が重ねられており、現在使用されているのが1990年に発行された第10版の「ICD‐10」です。

2018年に最新版の「ICD‐11」が発表され、2022年から使用される予定です。

ICDは死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに活用されています(wikipedia「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」より)。

DSMとICDの違い

DSMとICDの違い

DSMとICDとは、何なのかを解説しましたが、ここでは2つの診断基準の違いをまとめていきます。

発行している機関

DSMとICDは発行している機関が異なります。

  • DSM‐アメリカ精神医学会(APA)
  • ICD‐世界保健機関(WHO)

分類範囲

DSMとICDでは、分類の範囲が異なります。

  • DSM‐精神疾患のみを分類している
  • ICD‐精神疾患に限らず、病気・ケガなど1万項目以上が分類されている

主な用途

基本的にそれぞれの用途は以下の通りです。

  • DSM‐医師が診断を下す臨床場面において使用
  • ICD‐各病気の罹患者数などの国際的な統計や行政機関において使用

ただ、2つとも有名な診断基準であり、どちらの基準を使用するかは医師・医療機関により異なります。

有料か無料か

DSMとICDは無料で閲覧できるかできないかという違いがあります。

  • DSMはアメリカの精神科医、医学者および精神科領域をも専門とする内科医の学会である「アメリカ精神医学会」が発行している書籍で有料
  • ICDはWHOが無料で公開

DSM‐5(日本語版)は22,000円します。いい値段ですね。


 

一方、ICDはネットで検索すれば、すぐに閲覧できます。

厚生労働省のホームページに掲載されているICD-10(2013年版)

最後に

DSMやICDという国際的な診断基準が作成されるまでは、医師の主観的な判断によりどの精神疾患か診断がされていました。

そのため、同じ患者でも医師によって診断名が異なることもしばしばあり、データが蓄積されずらく、診断の精度が上がりずらいという問題を抱えていました。

そういった経緯もあり、目で見える客観的な症状によって診断していこうという流れになりました。

しかし、操作的診断基準が主流になってきたとはいえ、DSMやICDの診断基準だけを頼りに診断を下すことは危険です。

なぜなら、同じ精神疾患だからといって全員が同じ症状を呈することはなく、人によって現れる症状や症状の強さなどが異なるため、操作的診断基準だけを頼りに診断すると、誤診の可能性があるからです。

したがって、ほとんどの医師は客観的な診断基準を参考にしながらも、クライアントの面談での様子、家族からの情報、既往歴などを総合的に判断し、診断を下します。

 

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【引用文献】

Newton(2020/10)精神の病気の取扱説明書

渡辺 雅幸(2007)専門医がやさしく語る はじめての精神医学 中山書店


 

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北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。