リワークとは、うつ病や双極性障害、適応障害、不安症などによって会社を休職した方が再び復帰することを支援するプログラムです。
リワークは2005年に気分障害や不安障害専門の復職支援プログラムとして始まりましたが、それより前は病気の症状が落ち着いたのち会社に復帰しても、症状が再燃し再休職してしまう人が少なくありませんでした。
再休職しないためには、「日常生活を送れるレベル」のもう一段上「勤務可能なレベル」まで回復する必要があるのです。
そのために有効とされているのが、リワークです。
この記事では、リワークの具体的なプログラム内容や効果、気になる費用などを解説していきます。
うつ病などで休職した方の復職支援「リワーク」とは?内容や効果を解説
「リワーク(Re-work)」とは、うつ病などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーションを実施する機関で行われているプログラムで、復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。
リワークは英語でReturn to workの略語です。
リワークプログラムの参加者は基本的に週5日間、決まった時間に施設に通うことで会社へ通勤することを想定した訓練を行います。
そして、様々なプログラムを通じて、自分が休職に至った要因や自分の偏った考え方の傾向、他人と交流するときのパターンなどを考えることで、復職後の再休職を防ぎます。
それでは、リワークの具体的なプログラム内容から説明していきます。
リワークの主なプログラム内容
リワークのプログラム内容には、以下のようなものがあります。
- 個人プログラム
- 特定の心理プログラム
- 教育プログラム
- 集団プログラム
- その他のプログラム
それぞれ簡単に説明していきます。
個人プログラム
集中力や作業能力の確認および向上を目的とし、文字や数字、文章を扱うプログラム。
例えば、文章の要約や簡単な計算問題、タイピング練習など。
特定の心理プログラム
自分の思考のクセやよくとりがちな行動を考えたり、他人との交流に関するスキルなどを学ぶプログラム。
例えば、認知行動療法やソーシャル・スキルズ・トレーニング(SST)、サイコドラマ、対人関係療法など。
【認知行動療法やサイコドラマに関してはこちらの記事をご覧ください】
教育プログラム
疾患に関する理解やセルフケア、ストレスマネジメントなどを学ぶ心理教育。
【さまざまな精神疾患に関する記事はこちら】
集団プログラム
協同作業や役割分担、仕事場における対人関係スキルなどを主な目的とするプログラム。
例えば、、実際の仕事場を想定した複数人による協同作業など。
その他のプログラム
個人面談や運動、創造、動機づけといった他の4つのプログラムに該当しないプログラム。
運動は身体的な健康だけではなく、精神的にも効果があるためリワークプログラムでも、散歩やカラダを動かすアクティビティなどが導入されています。
【運動の効果に関する記事はこちら】
どんな効果があるの?
リワークによって以下のような効果が期待できます。
- 生活リズムを整えられる
- 疾患に関する理解が深まる
- 対人関係において障害になっている思考や行動の改善
- 自分と似たような境遇の人たちと一緒に復職に向けて頑張ることでモチベーションが上がる
- 業務に必要とされるスキルの維持・向上
- 自己管理能力の向上
- 症状の改善や再休職予防
参加期間はどれくらい?
リワークの参加期間は、短い場合だと数週間、長い場合は年単位です。
平均は3か月~7か月ほどです。
ちなみに、もし企業の障害者雇用枠で働くことを希望し、精神障害者保健福祉手帳を取得したい場合は、確定診断がついても、初診後6か月経過していないと申請できないという決まりがあります。
【精神障害者保健福祉手帳に関してより詳しく知りたい方はこちら】
リワークにおいて重要な概念「復職準備性」とは?
「復職準備性」とは、働く上では避けて通れない通勤や業務といったストレスに耐えられるように、体調やその他の準備を整えることです。
リワークプログラムができる以前は、復職しても再び休職してしまう人が少なくありませんでした。
身体的な疾患と異なり、精神疾患の場合は本人が自分の状態を認識しづらい面があり、
と復職を焦っている人は、すぐに「自分はもう大丈夫です」と言います。
医師も復職に前向きでやる気がある様子や症状が落ち着いてきたことから、復職しても大丈夫だと判断することがけっこうありました。
しかし、その状態で復職しても、症状が再発する可能性が高いのです。
再発が起こると、本人は「またダメだった」と自信を失くしてしまいます。
また、会社としては、精神科医や本人に対するネガティブな印象を抱いてしまうでしょう。
そうならないためにも、再休職しないように復職準備性を整える必要があるのです。
復職準備性の判断基準
一般的に復職準備性の判断基準には、以下の4つがあります。
- 精神症状が良くなっている
- 職場で迷惑行為を起こさない
- 予想される作業を行う能力がある
- 予想される作業に従事しても、精神症状が再発しない
特に判断が難しいのが④です。
④については、臨床心理士・公認心理師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士などがそれぞれの専門的な視点を持って、リワークプログラム中の様子などを見て判断します。
リワークプログラムが受けられる場所
リワークプログラムは以下のような場所で受けられます。
- 病院やクリニックなどの医療機関(医療リワーク)
- 地域障害者職業センター(職リハリワーク)
- 就労移行支援事業所
- 企業内でもつ制度(職場リワーク)
費用はどれくらい?
リワークにかかる費用はどこで受けるかによって異なります。
プログラムの実施主体 | 費用 |
医療機関 | 健康保険が適用されるため、費用の3割を自己負担。
3割負担の場合は、デイケア(1日6時間程)の利用で一日2000~3000円ほど。 ただし、長期継続する治療の医療費負担を緩和するための制度「自立支援医療制度」を利用すると、自己負担は1割で済むため、一日700~800円ほど。 |
地域障害者職業センター | 公的機関が運営しているので、無料でリワークを受けることができます。
ただし、公務員は利用することができません。 |
就労移行支援事業所 | 行政からの補助があるため、費用の1割を自己負担。
一日900円ほどで受けられる事業所が多いです。 |
企業内の制度 | 休職者が本当に復職して仕事ができるかを見極めるために各企業に設置された制度。
多くの企業は費用を負担するため、従業員は無料でリワークを利用することができます。 ただし、ごく一部の企業では社員が利用料を支払うケースもあります。 |
リワークを利用する場合、ほとんど方は「自立支援医療制度」を利用します。
自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減する目的で通院されている方の医療費を軽減するために、公費で負担してくれる制度です。
健康保険に加入している人は医療費が3割負担になりますが、この制度を利用すると、1割負担になり、さらに月の上限額が設定されます。
【自立支援医療制度についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください】
最後に
リワークは患者さんが疾患を自分の一部として受け入れ、自分の人間性やアイデンティティの再び獲得し、社会復帰していくプロセスです。
リワークはできてまだ間もない治療方法なので、このようなプログラムがあることを知らない人も多く、必要としているのに受けられていないという人が多いのが現状です。
一人でも多くの患者さんがリワークプログラムを知って、受けられるようになることを願っています。
【参考】
ニューロリワーク「リワークを利用するために費用はどのくらいかかる?」
うつ病リワーク研究会(2009)うつ病リワークプログラムのはじめ方 弘文堂
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1.うつ病などで休職した方の復職支援「リワーク」とは?内容や費用や効果を解説
2.リワークにおいて重要な概念「復職準備性」とは?
3.リワークプログラムが受けられる場所
4.最後に