なぜ人はギャンブルに依存するのか? その心理と原因を徹底解説

 

ギャンブル依存症は、趣味や娯楽が行き過ぎて、生活に悪い影響を与える深刻な問題です。

特に日本では、パチンコなどのギャンブルがとても身近にあり、依存症になるリスクも高まっています。

本記事では、ギャンブル依存症の現状、その心理や原因、そして治療方法について徹底解説します。

僕はホテルマンから転職して、公認心理師になりました。

日々、心理学や精神疾患などについて勉強しており、それらに関する情報を発信してます。

【この記事を読んで分かること】

  • ギャンブル依存症の心理的・環境的な要因
  • 日本のギャンブル依存症の現状
  • ギャンブルに頼らざるを得ない理由
  • ギャンブル依存症の治療方法

 

ギャンブル依存症とは?

ギャンブル依存症とは?

ギャンブル依存症の定義と診断基準

ギャンブル依存症は国際的な精神疾患を診断基準であるDSM-5で「ギャンブル障害」として分類されています。

その中には、ギャンブル行動が増えることや、中断したときの焦燥感などが含まれています。

 

これらの症状は、依存が進むにつれて強くなり、生活全体に影響を与えることになります。

また、依存症者はギャンブルに費やす時間やお金が増え、日常生活に支障をきたすことが増えていきます。

 

【精神疾患の診断基準に関する記事】

 

ギャンブル依存症の人はどれくらいいる?

2021年の調査によると、日本でギャンブル依存症が疑われる人は2.2%で、全国で約278万人に相当します。

この数は過去の調査と比べて増加しており、ギャンブルが広がるとともに依存症になるリスクも高まっていることがわかります。

 

脳内ではどんなことが起こってる?

最近、ギャンブル依存症は脳の報酬系に影響を与えることがわかり、物質依存症と共通する特徴があると理解されています。

また、自己治療仮説も広まり、依存症者が嫌な気持ちを減らすためにギャンブルを選んでいることが示されています。

 

これにより、ギャンブル依存症は単なる「意志の弱さ」ではなく、脳の仕組みに関わる問題であると認識されるようになりました。

この理解の進展は、依存症者に対する偏見を減らし、より効果的な治療方法の開発につながっています。

 

【物質依存に関する記事】

 

感情コントロールの問題

ギャンブル依存症者は感情をコントロールするのが苦手とされていますが、その背景には愛着の問題があることが多いです。

依存症者の多くは、幼少期にあったつらい体験が感情コントロールに影響を与え、それが依存のリスクを高めているのです。

 

例えば、子どもの頃に家族との関係が不安定だったり、十分な愛情を感じられなかった人は、大人になってから感情のコントロールが難しくなることがあります。

このような感情の不安定さが、ギャンブルに依存する原因の一つとなります。

 

ギャンブル依存症は日常生活にどんな影響を与えるのか?

ギャンブル依存症は日常生活にどんな影響を与えるのか?

ギャンブル依存症になると、ギャンブルが生活の中心になり、人間関係や健康に悪い影響を与える深刻な問題です。

借金や犯罪、自殺といった問題を抱える人も多く、社会全体への影響も大きい。

 

ギャンブルに依存することで、仕事が手につかなくなったり、大切な家族や友人との関係が壊れてしまうこともあります。

これにより、依存症者はますます孤立し、さらにギャンブルに依存するという悪循環に陥ることがあります。

 

ギャンブル依存症への国の対策

この問題に対応するために、2018年に「ギャンブル等依存症対策基本法」が施行され、相談や支援機関の充実が求められています。

しかし、専門機関の数は少なく、依存症治療の体制が十分に整っていないのが現状です。

 

依存症者が安心して相談できる環境を整えることや、地域社会でのサポートを強化することが今後の課題です。

また、国民全体のギャンブル依存に対する理解を深めるための教育や啓発活動も重要な役割を果たしています。

 

依存症の治療は難しい!

依存症の治療は簡単ではありません。

他の依存に移行する(クロス・アディクション)の問題もあり、依存を続ける理由を理解するための共感的なアプローチが必要です。

 

依存症者は、ギャンブルをやめたいと思っていても、その不安や孤独感から逃れたいという気持ちが強く、再びギャンブルに戻ってしまうことがよくあります。

治療には、依存症者自身の意志だけでなく、周囲の人々の支援や、長期的な治療プランが必要です。

 

なぜ人はギャンブルに依存するのか? その心理と原因を徹底解説

なぜ人はギャンブルに依存するのか? その心理と原因を徹底解説
Colorful vector illustration of scientists researching brain and psychology of human on blue background

他人を信じられない

ギャンブル依存症者は他人を信じられず、ギャンブルに頼ることがあります。

他人への信頼感がないため、ギャンブルという一人でできる行動に依存してしまうのです。

 

他人との関係に傷ついた経験があると、孤独を感じやすくなり、その孤独感を埋めるためにギャンブルに没頭することがあります。

ギャンブルは誰にも邪魔されずにできる活動であるため、自分だけの世界に閉じこもりやすいのです。

 

セルフケアとしてのギャンブル

ギャンブルは自分の不安を減らすための手段となることがあります。

依存症者は不安を和らげるためにギャンブルをし、自己肯定感の低さがそれ加速させます。

 

自分に自信が持てず、日常生活でストレスを感じることが多い人は、ギャンブルを通じて一時的にそのストレスから逃れることができます。

勝ったときの喜びは、自己肯定感を一時的に高める効果があり、それが依存の原因となることがあります。

 

しかし、この効果は長続きせず、負けたときの不安感や自己嫌悪がさらに強まることで、依存の悪循環に陥ってしまうのです。

 

ギャンブルが身近にあるとリスクが高くなる

幼少期からギャンブルが身近にあると、依存しやすくなります。

家族や親戚の影響で、ギャンブルに興味を持つようになることが多いのです。

 

例えば、親がパチンコに頻繁に通っていたり、家庭内でギャンブルが当たり前のように行われている環境で育つと、ギャンブルに対して抵抗感が薄れます。

その結果、大人になってからもギャンブルに手を出しやすくなり、依存のリスクが高まります。

 

ギャンブル依存症者にとってのギャンブルは「容器」?

ギャンブル依存症者にとってのギャンブルは「容器」?
Young woman in depression pretending to be happy having split personality.

ギャンブルは感情を調節する代わりの手段としての役割があり、依存症者にとって感情を受け止める「容器」(コンテイナー)として使われます。

つまり、彼らはギャンブルを通して感情をコントロールしようとしているのです。

 

感情の波に飲まれそうなとき、ギャンブルはその感情を一時的に「保管」する場所となり、依存症者にとって安心感を与える役割を果たします。

このため、感情が高ぶったときや不安が強いときにギャンブルに走ることが多くなります。

 

ギャンブルによる感情コントロール

ギャンブルをすることで、不快な感情を外に出し、一時的に気持ち良さを感じます。

しかし、ギャンブルによる感情コントロールでは感情の理解が深まらず、根本的な解決にはなりません。

 

ギャンブルで得られる快感は一時的なものであり、その後に強い後悔や不安が訪れます。

それでも依存症者は、その一瞬の快感に頼ることで不安やストレスから逃れようとします。この繰り返しが、依存を深めてしまうのです。

 

ギャンブルを行う空間の役割

ギャンブルをする空間自体も、依存症者にとって感情を受け止める「容器」として機能し、人から承認されたいという欲求を満たす場所になります。

この非日常的な空間での体験が、彼らにとっての逃避手段となっているのです。

 

ギャンブル場の光や音、雰囲気は日常生活とは異なり、現実から離れることができる場所です。

そのため、現実の問題から目を背けたいときに、この空間に引き寄せられるのです。

 

ここでは、誰にも干渉されることなく、自分の感情を「安全に」発散することができるため、依存症者にとって特別な場所となります。

 

ギャンブル依存症の治療方法

ギャンブル依存症の治療方法

1. 認知行動療法

認知行動療法は、ギャンブル依存症に対して最も効果的とされる治療法のひとつです。

認知行動療法では、依存症者がギャンブルに関する歪んだ考え方や行動パターンを理解し、健全な思考や行動に置き換えることを目指します。

具体的には、以下のような技術が使われます。

  • トリガーの特定:ギャンブル行動を引き起こす原因を特定し、回避や対処法を学ぶ
  • 再構築:ギャンブルに関する非現実的な期待や誤った信念を修正する

 

【認知行動療法に関する記事】

 

2. 動機付け面接法

動機付け面接法は、依存症者がギャンブルをやめるためのモチベーションを引き出すことを目的とした治療法です。

 

治療者は共感的な態度で依存症者と対話し、変化に対する意欲を高めます。

動機付け面接法では、依存症者が自主的に行動を変えようとする意思を育てることを重視しています。

 

【モチベーションに関する記事】

 

3. 内観療法

内観療法は、ギャンブル依存症やアルコール依存症など嗜癖行動に効果があるとされています。

内観療法とは、自分自身の内面を見つめ直すことを通じて、過去の出来事や人間関係に対する新たな理解を得ることを目指す心理療法です。

 

内観療法では、以下の3つの問いを自分自身に問いかけることが中心となります。

  1. 自分は相手に何をしてもらったか?
  2. 自分は相手に何を返してきたか?
  3. 自分は相手に迷惑をかけたことはないか?

例えば、親との関係を振り返るとしましょう。

親から受けたサポートや愛情について「何をしてもらったか」を考えることで、これまでの感謝の気持ちが再確認されます。

 

次に、自分が親に対してどのように応えたかを振り返ることで、自分がしてきたこと、またしてこなかったことを客観的に捉えることができます。

そして、最後に、親に対してどんな迷惑をかけたかを考えることで、改めて相手の立場を考え、自分の行動を見つめ直すきっかけになります。

 

4. 薬物療法

薬物療法は、ギャンブル依存症に対する標準的な治療法ではありませんが、特定の薬が併用されることがあります。

特に、衝動的な行動を抑えるために、抗うつ薬や抗不安薬などが使用される場合があります。

 

ただし、薬物療法のみでの改善は難しいため、心理療法と併用することが推奨されます。

 

5. 自助グループ(ギャンブラーズ・アノニマスなど)

ギャンブル依存症の治療には、依存症者が自分の感情をうまく受け止められるようになる体験が必要です。

そのため、ギャンブラーズ・アノニマスなどの自助グループが大切な役割を果たします。

 

同じ悩みを持つ人たちと共有することで、自分だけが孤立しているわけではないと感じることができ、治療に向けた大きな一歩となります。

また、グループでの活動を通じて、自己肯定感を取り戻すことができるのも重要なポイントです。

 

6. 家族療法

ギャンブル依存症は、本人だけでなく家族にも深刻な影響を及ぼします。

 

家族療法では、家族全体が協力しながら依存症者をサポートし、家族関係を修復することを目指します。

 

家族が依存症について理解を深め、共依存やトリガー行動に対処することで、回復のサポートがしやすくなります。

 

7. 社会的サポートとリハビリテーション

地域社会や医療機関からのサポートも、ギャンブル依存症からの回復において重要です。

リハビリテーション施設や地域の相談機関などを利用し、生活リズムを整えたり、健康的な趣味を見つけたりすることも効果的です。

 

いくつか治療方法を紹介しましたが、有効な治療方法は個人の状況や依存度に応じて異なりますので、専門家のサポートを受けながら、適切な治療法を選択することが大切です。

 

まとめ

ギャンブル依存症は、本人だけでなく周囲にも大きな影響を及ぼす深刻な問題です。

依存症からの回復には、適切な治療とサポートが必要で、自己理解や家族の協力も重要です。

自分や大切な人がギャンブル依存症に悩んでいる場合は、専門機関のサポートを早めに利用することをお勧めします。

 

回復の道のりは長いかもしれません。

でも、一歩ずつ確実に進むことで、健康で充実した生活を取り戻せます。

 

【あわせて読みたい】

 

【参考文献】

大村枝里(2023)ギャンブル依存症の理解の変遷と新たな展開 臨床教育実践研究センター紀要 第26号

竹元隆洋(2001)ギャンブル依存症に対する内観療法 Japanese Society of Psychosomatic Medicine

文部科学省(2019)「ギャンブル等依存症」などを予防するために

 

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。