【認知行動療法】思考の妥当性を考え修正していく「認知再構成法」とは?

うつ病などの精神疾患に効果があることが数多くの研究によって明らかになってきている「認知行動療法」。

認知行動療法では、クライエントの抱える問題を「認知」「感情」「行動」「身体反応」の4つに分けて整理していきます。

(例)ミスをして上司に怒られた

  1. 認知‐「自分は仕事ができない」
  2. 感情‐落ち込み、悲しみ
  3. 行動‐お酒を飲んで忘れようとする
  4. 身体反応‐心拍・体温の上昇、発汗

上の例の場合、上司に怒られると「自分は仕事ができない」という考えが湧いて、落ち込んだり、悲しい気持ちが生じ、心拍・体温の上昇や発汗が起こります。

そして、そのことを忘れようとお酒を飲むと翌日体調が悪くなり、再びミスをして怒られるという悪循環になります。

 

「認知」「感情」「行動」「身体反応」の4つに整理することで、この悪循環を把握し、認知療法と行動療法の技法を使って4つのいずれかを変化させることで悪循環からの脱却を目指します。

例えば、「感情」に対しては「曝露療法(エクスポージャー)」、「行動」に対しては「行動活性化」、「身体反応」に対しては「マインドフルネス」など。

 

そして、「認知」に対しては、思考の妥当性を検討して、適応的な思考に修正できるようにする「認知再構成法」などが行われます。

この記事では、認知再構成法でどのように思考を変えていくのかを解説していきます。

 

【曝露療法、行動活性化に関してはこちらの記事をご覧ください】

 

【認知行動療法】思考の妥当性を考え修正していく「認知再構成法」とは?

【認知行動療法】思考の妥当性を考え修正していく「認知再構成法」とは?
Image by Gino Crescoli from Pixabay

認知療法は1960年代にアメリカの精神科医のアーロン.T.ベックが創始した心理療法です。

ベックは認知の中でも瞬間的に頭によぎる思考やイメージを「自動思考」と呼びました。

例えば、「祭り」という言葉を聞いた時に「出店がたくさん出て楽しそう」「ビールが美味しい」「りんご飴」など、色々な思考やイメージが湧いてくると思います。

それを自動思考と呼びます。

 

認知再構成法」とは、クライエントが自身の自動思考が妥当かどうかの検討を行い、その自動思考以外の考えを持つことができるようにしていく技法です。

続いて、認知再構成法の特徴について解説していきます。

 

認知再構成法の特徴

認知再構成法の特徴

自動思考は普段、意識されずに浮かんでは消えていきます。

そのため、認知再構成法では「思考記録表(コラム表)」を用いて、その時の状況や自動思考、感情を記録します。

 

思考記録表(コラム表)とは?

思考記録表(コラム表)とは、浮かんでは消える自動思考をキャッチし、自動思考や自動思考によって生じた感情を客観的に把握し、適応的な思考を検討するための記録表です。

思考記録表では、主に以下の7つを記入します。

  1. 状況‐5W1Hのように具体的な出来事の事実のみを書く
  2. 気分‐出来事によって気分・感情を100%を最大にした数値で書く
  3. 自動思考‐出来事が起こった瞬間に浮かんだ思考・イメージ
  4. 根拠‐自動思考を裏付ける客観的な事実
  5. 反証(はんしょう)‐自動思考とは矛盾する事実
  6. 適応的な思考‐根拠や反証を加味し、より現実的で適応的な思考
  7. 気分の変化‐⑥の適応的な思考まで書き終わった後の気分を100%を最大にした数値で書く

以下のように書きます。

思考記録表とは?
画像引用;東京教育カウンセラー協会「【連載】心のスキルアップ教育(4)~年代別思考記録表~」

このように書き出してみると、落ち込んでいたり、不安になっている時の自分の思考は根拠に欠けていることが分かり、ネガティブな気分が少し和らぎます。

ネガティブな思考は頭の中だけで考えていても解決することは難しく、同じ思考を反芻して、どんどんネガティブな気分が高まっていきます。

そのため、思考や感情を紙に書き出し、思考を整理することが大切なのです。

 

認知行動療法のテクニックの一つに「筆記開示(エクスプレッシブ・ライティング)」という技法があります。

これは過去に体験したネガティブな経験について、そのときに抱いた感情や思考を包み隠さずをひたすら紙に書きなぐるというものです。

とてもシンプルな方法ですが、既に数百を超える実証研究があり、不安やストレスへの効果が広く認められています。

興味がある方はこちらの記事をご覧ください。

 

まとめ

  • 認知行動療法ではクライエントの抱える問題を「認知」「感情」「行動」「身体反応」の4つに分けて整理する
  • 問題を解消するために4つのいずれかにアプローチし、「認知」に対するアプローチの代表例が「認知再構成法」
  • 認知再構成法とは、クライエントが自身の自動思考が妥当かどうかの検討を行い、その自動思考以外の考えを持つことができるようにしていく技法
  • 認知再構成法では、自動思考は浮かんでは消えてしまうものなので、記録しておくために「思考記録表(コラム表)」を用いる

 

【参考】

河合塾KALS監修 坂井 剛, 宮川 純(2021)「赤本 公認心理師(国試対策2021)」講談社

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