厚生労働省が全国の3~99歳の人6466名を対象に行った睡眠に関する調査によると、睡眠に関して何らかの問題を抱えた経験がある人の割合は女性39.3%、男性32.4%でした。
また、今現在睡眠に関する問題を抱えている人の割合は女性20.3%、男性18.7%でした。
つまり、現代人の5人に1人が睡眠に関する何らかの悩みを抱えているということです。
今現在睡眠に関する悩みがあると答えた人の中で悩みが1か月以上続いている人の割合は11.7%もおり、10人に1人が長期間の不眠に悩んでいるという深刻な状況です。
睡眠不足の日々が続くと精神的にも身体的にもキツいですよね。
この記事では、睡眠不足は人の性格にも影響を及ぼすということと、急性不眠・慢性不眠、最後に睡眠不足を改善する方法について解説していきます。
睡眠不足でネガティブになりやすくなる!?
まず、人は何日間も眠らないとどうなってしまうのか実例を挙げて説明します。
サンディエゴの高校に通うランディ・ガードナーという生徒が、11日間眠らなかったという記録を樹立しました。
断眠し始めてからしばらくすると、ろれつが回らなくなり、幻覚を見だし、目の焦点が合わなくなりました。また、一時的に自分がどこ出身かもよく分からなくなりました。
実験後に十分な睡眠をとると、正常な状態に戻りました。
しかし、今では「健康上望ましくない」という理由で「何日間眠らずにいられるか」というチャレンジはギネスブックから認定されなくなりました。
睡眠不足は、身体的な疲労度や思考に影響するだけではなく、情緒面にも影響を及ぼします。
睡眠が足りてない日は誰でも不機嫌になりやすいと思いますが、睡眠不足がしばらく続くと、脳はネガティブな側面に焦点を置くようになります。
感情は脳の*大脳辺縁系という領域にある*扁桃体と深い関係があると考えられています。
35時間不眠の状態にある学生たちの脳を*fMRIで解析したところ、正常な睡眠を取っている人に比べて、ネガティブな刺激に対する扁桃体の反応が60%も高まりました。
つまり、睡眠不足の状態だと、脳はネガティブなことに敏感に反応するようになるのです。
大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)‐脳の奥の方にあり、海馬・扁桃体・視床下部などを含む領域。情動や記憶、本能的な欲求などに深い関わりのある領域。
扁桃体(へんとうたい)‐生物として最も基本的な価値判断を担う。また、感情や他人の感情状態などを推測するのに重要な役割を果たす。
fMRI(functional magnetic resonance imaging:機能的磁気共鳴断層画像)‐脳が機能しているときの活動している部位の血流の変化などを画像化する方法。
【脳の各部位の機能に関する記事はこちら】
急性不眠と慢性不眠とは?
不眠は大別すると、「急性不眠」と「慢性不眠」に分けられます。
急性不眠
急性不眠は突発的に寝付けなくなる不眠です。
恐らく、多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。
実は大半の人が、急性不眠に人生のうち一度はなると言われています。
- 子供の頃、次の日の遠足が楽しみで眠れない
- センター試験の前夜、緊張で眠れない
- 次の日のプレゼンが心配で眠れない
など、交感神経が高まってしまい、眠れなくなります。
急性不眠の目安は週3日、寝つきずらい日があり、その状態が2週間から3か月継続する状態です。
慢性不眠
寝付けない日が3か月以上になると、慢性不眠の状態だと考えられます。
慢性不眠は、眠れない原因もよく分からないのに全然眠れません。
ペンシルバニア大学が539人の学生の睡眠を半年間調査しました。
そのうちの20%が急性不眠になり、さらにその50%が慢性不眠に発展していました。
急性不眠から慢性不眠になる原因
ペンシルバニア大学の調査で、慢性不眠にまで発展してしまった学生の特徴は「足りない睡眠を無理矢理補おうとしていること」でした。
突発的に眠れなくなることは、どんなに健康な人でもなります。
しかし、そこでベッドの中で無理に眠ろうとするのがよくありません。
ベッドとは眠るための場所なのに、眠れない状態のままベッドにいることは脳に「ベッド=眠れない場所」と教え込んでいるようなものです。
刺激と反応の組み合わせを作ることを、心理学の世界では”アンカリング”と呼びます。
毎日ソファに座って読書している時がリラックスできるという人は「ソファ+読書=リラックス」というアンカリングが出来ていると考えられます。
つまり、なかなか眠れなくてもベッドにいると、「ベッド=眠れない場所」というアンカリングが出来て、さらに眠れなくなるという訳です。
その状態に陥ってしまうと、
というプレッシャーが交感神経を活発にしてしまい、さらに眠れなくなるという負のスパイラルに陥ります。
睡眠不足を改善する方法
では、急性不眠になったらどうすればいいのでしょうか?
答えは簡単で「ベッドで無理に眠ろうとしないこと」です。
眠れないときはベッドから出て、交感神経を刺激しないような読書とかして眠くなったら寝るというスタンスでいきましょう。
と言う方のために、3つ睡眠不足の改善方法をご紹介します。
運動
運動はダイエット、健康、筋力増強などの他に睡眠不足の改善にも効果的です。
運動をすると、エネルギーを生み出す過程でアデノシンという睡眠物質が生成されるため、寝つきが良くなります。
また、同じくエネルギーを生み出す過程の中で夜にメラトニンという睡眠ホルモンも多くなるので、ダブルで効果があります。
【運動の凄まじい効果に関する記事はこちら】
入浴
人間には体温などを一定に保とうとする恒常性維持機能(ホメオスタシス)があります。
入眠のとき、人は手足などから体温を放出して、深部体温を下げます。
寝る2時間ほど前に温かいお湯に浸かると、体温を上がって、眠るときには恒常性維持機能で体温が下がり、寝つきやすくなります。
朝太陽を浴びる
人には体内時計があり、朝2500ルクス以上の光を浴びることでリセットされます。
太陽の光は曇りの日でも2500ルクス以上あるので、朝太陽の光を浴びましょう。
体内時計がリセットされてから16~18時間後に睡眠ホルモンが分泌されるようになります。
最後に
睡眠不足に陥ると、身体面・精神面に多大な悪影響をもたらしますし、日中のパフォーマンスにも大きく影響します。
睡眠の質が人生を左右するといっても、過言ではありません。
睡眠不足ではなくても、
- 最近、寝ても疲れがとれない
- 寝て起きると身体が痛い
といった睡眠に関する悩みを抱えている人は、睡眠の質が上がるように色々試してみることをオススメします。
後悔しない人生を生きるために。
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【参考文献】
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1.睡眠不足でネガティブになりやすくなる!?
2.急性不眠と慢性不眠とは?
3.睡眠不足を改善する方法
4.最後に