原因別で分ける精神障害の伝統的な3つの分類を解説

現在、主に用いられている精神障害の分類は、アメリカ精神医学会が出している「精神障害の分類と統計マニュアル(DSM)」と世界保健機関が出している「国際疾病分類(ICD)」です。

今ではあまり用いられていませんが、精神障害を原因別で分ける伝統的な分類法もあります。

この記事でご紹介する伝統的な原因別による分類は、現在はDSMやICDほど用いられていませんが、分かりやすく、実際の診療にも役立つものなので、覚えておいて損はありません!

【原因別】精神障害の伝統的な3つの分類を解説

原因別による分類にはかなりの批判もありますが、必ず精神障害を理解するのに役立つので、学んでおきましょう。

心因性精神障害

心因性精神障害とは、ストレスなどの心理的、環境的な要因が原因の精神障害です。

言い換えると、こころの中で巻き起こる不満や葛藤があって、それをうまく処理できないことにより発症するものです。

 

同じストレスでもその人の性格によって受け取り方は異なります。例えば、「上司から怒られた」というストレスも、ある人は

自信喪失中
うわぁ。やっちゃったよ。すげぇショックだ...

と怒られたことで意気消沈してしまい、またある人は

やる気マン
怒られちった。まぁでも指摘されたところをバッチリ直して、驚かせてやるぞ!

と怒られたことで逆にやる気が湧いてくる人もいます。

つまり、心因性精神障害の発症にはその人の性格が大きな影響を与えるのです。

 

心因性精神障害の例として、以下のような障害が挙げられます。

  • パニック障害
  • 社交不安症
  • 各種恐怖症
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

これらの精神障害に共通して言えることは、人前で緊張してしまうとか、凄惨な出来事に巻き込まれてトラウマになるといった、正常心理の延長上にあるもので了解可能の範囲に入ります。

心因性精神障害をコンピュータで例えると、ハードではなくソフト機能の変調と言えます。

外因性精神障害(身体因性精神障害、(広義の)器質性精神障害)

外因性精神障害とは、脳自体に病変ができるなどの形態学的な変化が生じたり、脳以外の身体疾患の影響で脳機能に二次的な影響が出たり、摂取した物質(薬物、アルコール、タバコなど)の影響によってなる精神障害です。

外因性精神障害には、以下のような病気が挙げられます。

  • 頭部外傷
  • 脳腫瘍
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 梅毒
  • 内分泌疾患
  • 代謝疾患
  • アルコールやその他の物質

このようにさまざまな原因がありますが、症状はある程度共通しています。症状には以下のようなものがあります。

  • 知的能力の障害・認知症
  • 人格変容
  • 麻痺
  • 不随意運動
  • 感覚障害
  • けいれん

 

例えば、事故で頭を激しく打撲したとします。

頭部を強く打撲すると、一時的に機能障害を起こして意識障害になります。運が良ければ後遺症もなく意識を取り戻しますが、打ちどころが悪ければ脳に傷が出来てしまう可能性もあります。

脳の損傷の場所と程度によっては、認知症を引き起こしたり、温厚だった人がキレやすくなるなど人格がガラッと変わってしまうことがあります。

残念ながら、このような後遺症は回復が困難なことが多いです。

コンピュータで例えると、心因性精神障害はソフト機能の変調でしたが、外因性精神障害はハード部分が大きく損傷した結果生じると言えます。

内因性精神障害

内因性精神障害とは、何らかの身体的基盤が原因だと考えられるが、まだ何であるか解明されていない精神障害です。

心因性精神障害と外因性精神障害の中間とも考えられます。

 

内因性精神障害に分類される精神障害には、以下のような病気があります。

  • 統合失調症
  • 双極性障害
  • うつ病(単極型うつ病)

これまで統合失調症や双極性障害、うつ病の原因を探る研究は数多くなされてきましたが、誰もが同意できるような明確な脳や神経細胞の形態学的変化は見つかっていません。

したがって、外因性精神障害とは違い、認知症や意識障害といった症状は内因性精神障害では、基本的には見られません。内因性精神障害は外因性精神障害よりも心因性精神障害に近いと言えます。

 

そのため、心因性精神障害と内因性精神障害とをまとめて「機能性精神障害」と呼び、外因性精神障害(器質性精神障害)と2大別するという分け方もあります。

じゃあ、心因性精神障害と内因性精神障害とを分けなくても良いんじゃないの?

という疑問が湧いてくるかもしれませんが、明確に違う部分もあります。

心因性精神障害はその症状や発症が正常心理から了解ができるのに対し、内因性精神障害では幻覚や幻聴、病的に元気過ぎたり、動けないくらい落ち込んだりといった正常心理からは理解できないような症状が内部からひとりでに沸き起こってくるのです。

最近の精神障害の国際分類

原因別に精神障害を分ける分類法は分かりやすく、便利なものではありますが、近年多くの精神科医に使われているのは、精神障害の原因にはあまり触れず、なるべく表面に現れている客観的な症状だけで分類する方法です。

このように、医師の主観的な診断ではなく、信頼性を高めるために表面に現れている客観的な症状で分類することを「操作的診断基準」といいます。

現在、主に用いられてい操作的診断基準には、アメリカ精神医学会が出している「精神障害の分類と統計マニュアル(DSM)」と世界保健機関が出している「国際疾病分類(ICD)」があります。

【DSMとICDに関してはこちらの記事をご覧ください】

まとめ

精神障害を原因別で分けると以下の3つ

  1. 心因性精神障害…ストレスなどの心理的・環境的要因が原因となる精神障害
  2. 外因性精神障害…脳自体や脳以外の病変、外部から取り込んだ物質による精神障害
  3. 内因性精神障害…身体的に何らかの疾患があることが想定されるが、まだ何か解明されていない精神障害

心因性精神障害はコンピュータで例えるとソフト機能の変調で、外因性精神障害はハードの変調。内因性精神障害は、ソフトの変調と捉える見方もあれば、まだ解明されていない細かなハード部分の故障とする見方もある。

心因性精神障害の症状は正常心理の延長上にあり理解できるが、内因性精神障害の症状には正常心理では理解できないものも含まれている。

 

【参考文献】

渡辺 雅幸(2007)「専門医がやさしく語る はじめての精神医学」中山書店

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。