「ストレスコーピング」とは?5種類の使い分けと「切り替える力」

ストレスコーピングとは?5種類の使い分けと「切り替える力」

ストレス、溜まっていませんか?

 

対処法を調べると「問題焦点型」「情動焦点型」という言葉が出てきます。

ただ、分類を覚えても、実際に何をすればいいのかは分からないままです。

 

本記事では、公認心理師である筆者が、分類の話で終わらせずに実践まで落とし込みます。

前半で全体像を、後半で実践手順を解説します。分類だけ知りたい方は前半、すぐ試したい方は後半から読んでください。

ストレスコーピングとは?

ストレスコーピング」とは、一言で言うと、ストレスに気づいて、意識的に対処することです。

厚生労働省の「こころの耳」では、ストレスに対処する行動をストレスコーピングと呼んでいます。ポイントは「意識的」という部分です。

 

無意識に起きる心の防御反応(防衛機制)とは区別されます。

防衛機制についてはこちらの記事で解説しています。

ストレスは3つの段階でできている

コーピングを理解するには、ストレスの仕組みを知る必要があります。

ストレスは、次の3段階で起こります。

  1. ストレッサー:ストレスの原因になる出来事
  2. 認知:その出来事をどう受け取るか
  3. ストレス反応:結果として出る心身の変化

 

上記のとおりです。

たとえば「上司に叱られた」がストレッサーです。

それを「嫌われている」と受け取るのが認知。その結果、眠れなくなるのがストレス反応です。

 

ここが重要です。

同じ出来事でも、認知が違えば反応が変わります。

だからコーピングは、3つのどこにでも仕掛けられます。

原因を変える、受け取り方を変える、出てしまった反応を鎮める。

この3方向です。

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「ストレス解消法」との違い

コーピングは、ストレス解消法より広い概念です。

カラオケや運動といった発散は、コーピングの一部にすぎません。

原因そのものへの働きかけや、人に相談することも含まれます。

 

※補足:解消法だけに頼ると、原因が残り続けます。ここが後半の話につながります。

ストレスコーピングの5種類

結論から言うと、コーピングは大きく5種類に分けられます。

  • 問題焦点型:原因そのものを変える
  • 社会的支援探索型:人の力を借りる
  • 認知的再評価型:受け取り方を変える
  • 情動処理型:感情を外に出す
  • 気晴らし型:気分を切り替える

上記のとおりです。

厚生労働省の「こころの耳」では、このうち問題解決型・社会的支援型・感情焦点型の3つが挙げられています。

 

ここではより細かい5分類で解説します。順番に見ていきます。

① 問題焦点型:原因そのものを変える

ストレスの原因に直接手を入れる方法です。

苦手な上司との関係なら、次のような手があります。

  • 業務の進め方を変えて接点を減らす
  • 面談で具体的な依頼のしかたを相談する
  • 異動希望を出す

 

根本から解決できるのが強みです。

ただし、自分の力で変えられる相手にしか使えません。

社会的支援探索型:人の力を借りる

一人で抱えず、周囲を巻き込む方法です。

厚生労働省の「こころの耳」でも、自分の力と周囲の力を合わせることの重要性が挙げられています。

 

具体的にはこうなります。

  • 先輩に「どう対処したか」を聞く
  • 上司に業務量の調整を相談する
  • 産業医や相談窓口を使う

 

日頃から相談できる人を持っておくこと自体が、予防になります。

認知的再評価型:受け取り方を変える

出来事の意味づけを変える方法です。

たとえば、上司が不機嫌なとき。「自分のせいだ」ではなく「今日は忙しいのだろう」と考える。

事実は変わりませんが、ストレス反応は変わります。

 

ただし注意点があります。

無理なポジティブ変換は逆効果になりやすいという点です。

事実を歪めるのではなく、他の解釈も成り立つと気づくのがコツです。

 

※補足:この考え方は認知行動療法の中核でもあります。当ブログの「イラショナル・ビリーフ」の記事でも扱っています。

情動処理型:感情を外に出す

溜まった感情を言葉にして出す方法です。

  • 信頼できる友人に話を聞いてもらう
  • ノートにその日の出来事を書き出す
  • カウンセリングを利用する

話すだけで解決しなくても構いません。

言葉にする過程で、感情が整理されます。

気晴らし型:気分を切り替える

活動によって気分を変える方法です。

運動、入浴、音楽鑑賞、料理。手軽で、誰でもすぐ使えます。

即効性がある一方、原因は残ったままです。ここが弱点になります。

 

ストレスコーピング5種類 問題焦点型——原因そのものを変える 社会的支援探索型——人の力を借りる 認知的再評価型——受け取り方を変える 情動処理型——感情を外に出す 気晴らし型——気分を切り替える

【重要】最新研究では、別の分け方のほうが当たっていた!?

ここからが、他の解説記事にはない話です。

2026年のメタ分析では、「問題焦点か情動焦点か」より「向き合うか避けるか」のほうが、心理的な苦痛をよく予測しました。

 

先に限界を書いておきます。この研究の対象は心疾患のある人に限られます。

健康な人にそのまま当てはまるとは言えません。

 

その上で、示された数字を見てください。

学術誌『Health Psychology』に2026年に掲載されたメタ分析(19研究)の結果です。数字が大きいほど、苦痛との結びつきが強いという意味です。

コーピングの型 不安との関連の強さ
回避型(避ける) .39
情動焦点型 .32
関与型(向き合う) .17

最も苦痛と結びついていたのは、避けることでした。 

一方、問題焦点型の関連は有意ではありませんでした。

 

なぜか。

理由は、従来の分類が「何に働きかけるか」しか見ていないからです。

 

同じ「気晴らし」でも、中身は正反対のことがあります。

  • 散歩に出て気分を変える → 向き合っている
  • 考えたくなくて何時間もSNSを見る → 避けている

分類上はどちらも気晴らし型です。

しかし前者は回復につながり、後者は問題を先送りします。

 

判断の軸は「何をするか」ではなく「向き合っているか」です。

避けるコーピングの見分け方

回避型かどうかは、次の3つで判定できます。

  • 時間が延びる——やめどきが自分で決められない
  • 後味が悪い——終わったあとに罪悪感が残る
  • 問題を思い出す——中断すると不安が戻ってくる

 

上記のとおりです。

飲酒、動画の連続視聴、衝動買い、先延ばし。

これらは避けるコーピングになりやすい行動です。

 

※補足:これらが絶対に悪いわけではありません。短時間で切り上げられるなら、有効な気晴らしになります。

問題焦点型は「万能」ではない!

意外に思われるかもしれませんが、問題焦点型が逆効果になる場面があります。

『Journal of Behavioral Medicine』に2006年に発表されたメタ分析では、小児がんの子ども1,230人を対象に解析が行われました。

その結果、問題焦点型コーピングは適応の悪さと関連していました。

 

なぜか。

理由は単純です。がんという状況は、本人の努力では変えられないからです。

変えられないものを変えようとし続けると、無力感が強まります。

ここに「使い分け」が必要な理由があります。

 

判断はシンプルで構いません。

 

  • 変えられる → 問題焦点型・社会的支援探索型
  • 変えられない → 認知的再評価型・情動処理型・気晴らし型
  • 分からない → まず人に相談する

 

 

 

上記のとおりです。

たとえば「上司の性格」は変えられません。でも「関わる頻度」は変えられることがあります。

問題を小さく割ると、変えられる部分が見つかります。

ストレスコーピングの使い分け方 変えられる → 問題焦点型・社会的支援探索型 変えられない → 認知的再評価型・情動処理型・気晴らし型 分からない → まず人に相談する

本当に効くのは「切り替える力」

ここが本記事の核心です。

大事なのは種類を増やすことではなく、効かなかった方法を手放して別のを試すことです。

これを心理学では「コーピングの柔軟性」と呼びます。東洋大学の加藤司氏が、日本人を対象に一連の研究を行っています。

 

柔軟性は、2つの動作でできています。

  • 手放す——効いていない方法をやめる
  • 切り替える——別の方法を用意して試す

 

上記のとおりです。

『PLOS ONE』に2015年に発表された研究では、日本の大学生1,770人が対象になりました。

 

結果はこうです。

  • 効果を見極める力が高い人ほど、抑うつ症状が少ない(オッズ比0.86)
  • 別の方法に切り替える力が高い人ほど、抑うつ症状が少ない(オッズ比0.91)

オッズ比が1より小さいほど、抑うつになりにくいという意味です。

 

さらに2020年には『Frontiers in Psychology』で、累計6,752人を対象とした検証が報告されています。手放すことと切り替えることは、他の枠組みよりも抑うつの少なさをよく予測しました。

日本人を対象にした研究である点も、実感に合いやすい理由だと考えられます。

 

ここで最初の話に戻ります。

コーピングを5種類覚えても実践できないのは、覚える段階で止まっているからです。

必要なのは、試して、効果を見て、効かなければ変えることでした。

実践編:今日からできる4ステップ

お待たせしました。ここから手順です。

やることは4つだけです。

 

  1. STEP1 ストレスに気づく
  2. STEP2 変えられるか見分ける
  3. STEP3 リストを作る
  4. STEP4 点数をつけて手放す

上記のとおりです。順に説明します。

STEP1:ストレスに気づく

まず、自分がストレスを感じていることに気づく必要があります。

意外に思われるかもしれませんが、ここでつまずく方が最も多い印象があります。

筆者が医療機関で働いていたときも、限界まで気づかない方は珍しくありませんでした。

 

気づくコツは、時間を決めることです。

  • 入浴中
  • 寝る前の5分
  • 通勤の帰り道

 

上記のような「一人になる時間」に、今日の疲れ具合を確認します。

チェックする対象は感情だけではありません。体のサインのほうが早く出ます。

  • 肩や首のこわばり
  • 寝つきの悪さ
  • 食欲の変化

このうち1つでも当てはまれば、対処のタイミングです。

STEP2:変えられるか見分ける

次に、そのストレスが変えられるものかを判断します。

紙に1行で書いてみてください。「何が」「どうなったら」楽になるかを書きます。

  • 変えられる → 原因に働きかける
  • 変えられない → 受け取り方と感情に働きかける

 

判断に迷ったら、変えられない前提で進めて構いません。

変えられないものに力を注ぐほうが、消耗が大きいためです。

STEP3:コーピングリストを作る

自分用の対処法リストを作ります。これがコーピングリストです。

作るときのコツは3つあります。

  • 調子がいいときに作る——ストレス中は思いつきません
  • 質より量——くだらないものも入れる
  • 1分でできるものを混ぜる——職場でも使えるように

 

上記のとおりです。

数の目安は30個以上。多いほど、状況に合わせて選べます。

 

たとえばこんな粒度で構いません。

  • 温かい飲み物を1杯飲む
  • 階段を1階分だけ上る
  • 好きな曲を1曲聴く
  • 手を洗って顔を上げる

 

「気分が良くなること」だけでなく「少し落ち着くこと」も入れてください。

無料で使える情報源もあります。厚生労働省の「こころの耳」には、働く人向けのセルフケア情報が公開されています。まずはここを見るだけでも十分です。

 

そのうえで、体系的にリストを作りたい方には、伊藤絵美氏の『セルフケアの道具箱』が向いています。

100個のコーピングを書き出すワークが載っており、手を動かしながら進められます。弱点を挙げるとすれば、読むだけの本ではないため、書き込む時間を確保する必要がある点です。

STEP4:点数をつけて、効かなければ手放す

ここが最も重要な工程です。

実行したら、効果を10点満点で採点します。

  • 実行前の苦しさを10点満点でメモ
  • コーピングを実行
  • 実行後の苦しさを採点
  • 差が2点未満なら、その方法は今回は合わなかった

 

上記のとおりです。

大事なのは、合わなかった方法を責めずに手放すことです。加藤氏の研究が示した「手放す力」は、まさにこの動作にあたります。

 

合わなかった記録も消さないでください。

「どんなときに効かなかったか」が分かると、次の選び方が上手くなります。

 

繰り返しになりますが、実践は「気づく」「見分ける」「リストを作る」「点数をつけて手放す」の4ステップです。

よくある質問

Q. コーピングリストは何個必要ですか?

A.30個を目安にしてください。

少ないと、その日の状況に合うものが見つかりません。書き出す時点では実行可能性を考えず、思いついた順に並べて構いません。

Q. お酒でストレスを解消するのはダメですか?

A.量と目的によります。

食事とともに楽しむのであれば気晴らしです。一方、考えたくないから飲む場合は回避型に傾きます。

 

先ほどの3つの見分け方(時間が延びる・後味が悪い・中断すると不安)に当てはまるなら、別の方法に切り替えてください。

Q. 気晴らしばかりなのは逃げでしょうか?

A.逃げではありません。

原因が変えられない状況では、気晴らしが最適解になります。

2006年のメタ分析が示したように、変えられないものに解決を挑むほうが消耗します。

 

問題は「気晴らししか持っていない」状態です。選択肢が1つだと、切り替えができません。

Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

A.気晴らし型はその場で、認知的再評価型は数週間が目安です。

ただし個人差があります。

2週間続けても変化がなく、眠れない・食べられない状態が続くなら、医療機関の受診を検討してください。

まとめ

本記事の要点は次のとおりです。

  1. ストレスコーピングとは、ストレスに気づいて意識的に対処すること
  2. 種類は5つ。問題焦点型・社会的支援探索型・認知的再評価型・情動処理型・気晴らし型
  3. ただし2026年のメタ分析では、「向き合うか避けるか」のほうが苦痛をよく予測した
  4. 問題焦点型は万能ではない。変えられない状況では逆効果になりうる
  5. 日本人6,752人の研究が示したのは、効かない方法を手放して切り替える力

 

繰り返しになりますが、実践は4ステップです。

気づく、見分ける、リストを作る、点数をつけて手放す。

 

コーピングは、種類を暗記するものではありません。自分に合うものを探す作業です。

まずは調子のいい日に、リストを10個書き出すところから始めてみてください。

相談先

つらさが続くときは、以下も利用できます。

  • こころの耳(厚生労働省)——働く人向けのメンタルヘルス情報
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • 勤務先の産業医・保健師、地域の精神保健福祉センター

 

参考文献・出典

  • 厚生労働省「こころの耳」働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト https://kokoro.mhlw.go.jp/
  • Sowan, W., et al. (2026). Which coping classifications – problem versus emotion or engaged versus disengaged – best predict psychological distress in individuals with cardiac diseases? A systematic review and meta-analysis. Health Psychology, 45(7), 786-795. https://doi.org/10.1037/hea0001581
  • Aldridge, A. A., & Roesch, S. C. (2006). Coping and adjustment in children with cancer: a meta-analytic study. Journal of Behavioral Medicine, 30(2), 115-129. https://doi.org/10.1007/s10865-006-9087-y
  • Kato, T. (2015). The impact of coping flexibility on the risk of depressive symptoms. PLOS ONE, 10(5), e0128307. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0128307
  • Kato, T. (2020). Examination of the Coping Flexibility Hypothesis Using the Coping Flexibility Scale-Revised. Frontiers in Psychology, 11, 561731. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.561731
  • Kato, T. (2012). Development of the Coping Flexibility Scale. Journal of Counseling Psychology, 59(2), 262-273. https://doi.org/10.1037/a0027770

※原著論文の抄録はPubMedで確認しています。

 

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北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師資格を取得。月に5冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。