DVから逃れられない理由。加害者との絆「ストックホルム症候群」とは?

 

2015年に内閣府が行った「男女間における暴力に関する調査」によると、

一度でも暴力があった女性‐23.7%

(うち、命の危険を感じた経験のある女性‐11.4%)

一度でも暴力があった男性‐16.6%

でした。

 

これまでに配偶者から何らかの被害を受けたことのある人に、相手との関係をどうしたのか尋ねたところ、

  • 相手と別れた‐10.8%
  • 別れたい(別れよう)と思ったが、別れなかった‐45.8%
  • 別れたい(別れよう)とは思わなかった‐36.4%

という結果になりました。

 

「別れなかった理由」としては、

子どもがいるから、子どものことを考えたから

(子どもに余計な不安や心配をさせたくない)

(子どもを一人親にしたくない)

経済的な不安があったから

(養育しながら生活していく自信がない)

などが挙げられました。

 

このように、家庭内暴力(DV)から抜け出せない理由には、経済的な理由、子どもを気遣ったためなど、人によってさまざまな理由があります。

 

この記事では、DVから抜け出せない理由の1つ「ストックホルム症候群」について解説します。

ストックホルム症候群は、犯罪の被害者が加害者との間に「心理的な絆」をつくる現象のことです。

 

それでは、「ストックホルム症候群」とは何なのか、その名前の由来となった事件や原因などを説明していきます。

 

DVから逃れられない理由。加害者との絆「ストックホルム症候群」とは?

ストックホルム症候群(Stockholm syndrome)とは、誘拐事件や監禁事件に巻き込まれた被害者が、加害者との間に心理的なつながりを築き、好意的な感情を抱くことです。

 

当然の疑問
犯罪に巻き込まれて、加害者に対して恐怖で一杯だろうに、なんで好意的な感情をもつんだろう?

 

マインドパレッサー
事件に巻き込まれると最初は、当然「恐怖」を感じますが、人間の生存本能から「好意」に変化することがあるのです。

 

それでは「ストックホルム症候群」の名前の由来となった事件、ストックホルム症候群の原因について解説していきます。

 

スウェーデンのストックホルムで起こった銀行強盗人質立てこもり事件

1973年8月、スウェーデンのストックホルムにて銀行強盗事件(ノルマルム広場強盗事件)が発生しました。

 

犯人は刑務所から仮釈放中だったヤン・エリック・オルソン(Jan-Erik Olsson)。

オルソンはサブマシンガンを持ち、ストックホルム中心部のノルマルム広場にあった信用金庫に押し入りました。

 

オルソンは銀行強盗の罪で服役中だった友人のクラーク・オロフソン(Clark Olofsson)の解放と現金を要求し、銀行員の女性3人、男性1人を人質として、銀行に立てこもりました。

ちなみに、オロフソンは16歳の頃から銀行強盗などに何度も関わっていて、「スウェーデン史上、最も有名な銀行強盗」と知られる人物です。

警察はオロフソンの解放と現金の要求をのみ、オロフソンをオルソンと合流させました。

 

結局、オルソンとオロフソンは数日後に逮捕されるのですが、それまでの間に奇妙なことが起こりました。

 

人質の一人である女性行員が警察に対する不満、犯人らを擁護するよう求めたのです。

さらに、犯人のオルソンとオロフソンが休んでいる間、人質たちが犯人に代わって、銃を警察に向けていたことがのちのち判明しました。

オルソンとオロフソンが逮捕された後も、人質だった4人は供述で警察に非協力的であったり、犯人をかばう姿勢を見せました。

 

スウェーデン国内で、犯罪学者で精神科医のニールス・ベジェロット(Nils Bejerot)氏はこの奇妙な現象を「ノルマルム広場症候群」と呼びました。

それを他国のメディアが「ストックホルム症候群」と報道したことで、この名前が広がりました。

 

ストックホルム症候群は「人間の生存本能」が原因!?

この現象を調査したアメリカ人のフランク・オックバーグ(Frank Ochberg)博士は以下のように述べています。

人は、突然事件に巻き込まれて人質となる。そして、「死ぬかもしれない」と覚悟する。

犯人の許可が無ければ、飲食も、トイレも、会話もできない状態になる。犯人から食べ物をもらったり、トイレに行く許可をもらったりする。

そして、犯人の小さな親切に対して「感謝の念」が生じ、犯人に対して、好意的な印象をもつようになる。

引用:ウィキペディア「ストックホルム症候群」

 

ストックホルム症候群に関連する事件で「オーストリア少女監禁事件」があります。

その事件の被害者であるナターシャ・カンプッシュ(Natascha Kampusch)さんは2010年に『ガーディアン』の取材で以下のように述べました。

ストックホルム症候群は病気ではなく、特殊な状況に陥ったときの合理的な判断に由来する状態である。

自分を誘拐した犯人の主張に自分を適合させるのは、むしろ当然である。

共感を示し、コミュニケーションをとって犯罪行為に正統性を見出そうとするのは、病気ではなく、生き残るための当然の戦略である。

引用:ウィキペディア「ストックホルム症候群」

 

「認知的不協和の解消」も生じているかも

人間には、「自分の行動」と「自分の感情・信念」の間にズレが生じた場合、それに一貫性を持たせようとする機能(認知的不協和の解消)が備わっています。

 

分かりやすい例にイソップ寓話「すっぱい葡萄」があります。

キツネはある日、木に美味しそうなブドウが実っているのを見つけました。

キツネは食べようとして跳ね上がりましたが、ブドウが高い場所にあったため、届きませんでした。

キツネは自分を納得させるために「あのブドウは酸っぱくて、マズイものだろう」と正当化しました。

 

この場合、「ブドウが取れないという行動」と「ブドウを食べたいという感情」に矛盾が生じています。

この矛盾を解消するために、キツネは「あのブドウは酸っぱくてマズイ」と考えたのです。

これが「認知的不協和の解消」です。

 

ストックホルム症候群もこのメカニズムが働いているのではないかと考えられます。

つまり、「犯人の言うがままに行動している」と「犯人に恐怖・嫌悪の感情を抱いている」が矛盾しています。

 

それを「犯人の言うがままに行動しているのは、自分が犯人に対して、好意を抱いているからだ」と正当化しているのです。

 

加害者が被害者に同情!?「リマ症候群」とは?

ストックホルム症候群と逆で、犯罪の加害者が被害者に同情的な感情を抱く場合もあります。

この現象は「リマ症候群」と呼ばれています。

 

リマ症候群は1996年にペルーのリマで起こった「在ペルー日本大使公邸占拠事件」にちなんで命名されました。

 

この事件は発生から解決まで、4か月以上もかかりました。

武装した一団は日本大使公邸に押し入り、約600人を人質にとりました。

しかし、犯人らは人質に同情し、数時間以内に200人以上の人質を解放しました。

 

「リマ症候群」は監禁者よりも人質の人数の方が極端に多く、かつ人質と比べて監禁者の生活や学識・教養のレベルが低い場合に起こるとされています。

 

「在ペルー日本大使公邸占拠事件」では、十分な教育を受けずに育った若いゲリラたちが人質と一緒に生活をする中で、室内にあった本や会話を通じて異国の文化に興味を示すようになりました。

ゲリラたちの中には日本語の勉強を始めた者もいたそうです。

 

まとめ

人間には、自分を守るための防御機能が備わっています。

 

「ストックホルム症候群」も防御機能の1つ。

精神的なストレスを和らげ、加害者に共感・好意を抱くことで、生き残る確率を上げているのです。

 

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