パーソナリティ障害とは、自分自身に苦痛をもたらしたり、日常生活に支障をきたしている思考や知覚、人間関係の反応パターンが長期的にみられる人に対して使われる用語です。
パーソナリティ障害は10種類あり、それぞれに特徴があります。
あなたが一度は聞いたことがあるであろう「サイコパス」も、パーソナリティ障害の一つ「反社会性パーソナリティ障害」を意味する言葉です。
この記事では、パーソナリティ(人格)障害とはなんなのか?10の種類や症状を解説していきます。
パーソナリティ(人格)障害とは?10の種類や症状を分かりやすく解説
以前から精神疾患のカテゴリーに「personality disorder」という分類がありました。
これを日本では「人格障害」と訳してきました。
しかし、日本では「人格」という言葉を「あの人は思いやりのある人格者だ」などと用いられることがあり、「人格」という言葉自体に価値判断が含まれている。
そこで最近ではpersonality disorderをそのまま「パーソナリティ障害」ということが多いです。
パーソナリティ障害の種類によっては、男性か女性のどちらかに多くみられる障害もあります。
パーソナリティ障害は10種類ありますが、必ずどれかのタイプに分かれるという訳ではありません。
むしろ、一つのタイプにきちんと入るのは稀で、実際にはいくつかのタイプの特徴がごちゃ混ぜになっていることが多いです。
それでは、パーソナリティ障害の種類と症状を説明していきます。
妄想性パーソナリティ障害(PPD:Paranoid Personality Disorder)
「妄想性パーソナリティ障害」は他人の言動の意図を敵意や有害性のあるものと解釈し、他人に対する根拠のない不信感や疑いを持つパーソナリティ障害です。
女性よりも男性に多いです。
症状
- 他人が自分を利用している、傷つけようとしている、裏切っていると根拠もなく疑う
- 自分の情報が自分にとって不利な形で使われるかもと考えて、他人に秘密を打ち明けたがらない
- 悪意のない言葉や出来事に誹謗、敵意または強迫的意味が隠されていると誤解する
- 十分な証拠もないのに、配偶者やパートナーが不貞を働いてるのではないかと繰り返し疑う
- 他人は信用できないので、自分のことは自分でやらないと!と思っている
シゾイドパーソナリティ障害(ScPD:Schizoid Personality Disorder)
「シゾイドパーソナリティ障害」は社会的な関係から距離を取ることや無関心、人間関係の中での感情表現の少なさなどを特徴とするパーソナリティ障害です。
女性より男性の方が少し多いです。
症状
- 他人と親密な関係を築くことにあまり興味がない
- 一人で活動することを強く望む
- 他人からの賞賛や批判に対して無関心であるようにみえる
- 感情表現が少なく、出来事への反応や人付き合いの中でも感情を表に出さない
- 親しい友人や相談相手がいない
統合失調型パーソナリティ障害(STPD:Schizotypal Personality Disorder)
「統合失調型パーソナリティ障害」は他人との親密な関係に対して強く居心地の悪さを感じ、また親密な関係を築く能力が低く、思考・知覚の歪み、奇妙な行動を特徴とするパーソナリティ障害です。
統合失調型パーソナリティ障害は他の多くのパーソナリティ障害のように、時間とともに症状が軽減したり、消失することが少ないです。
女性より男性の方が若干多いです。
症状
- 関係念慮(日常の何気ない出来事が自分にのみ特別な意味を持つと考える)
- 魔術的な思考(自分には他人を魔術的にコントロールできる力があると考える、また魔術的な儀式を行うことで自分に降り注ぐ害悪を防ぐことができると考える)
- パラノイア(疑い深く、不信感に満ちており、根拠もなく他人が自分に害を加えようとしてると考える)
- 超能力(自分には超能力があり、出来事が起こる前にそれを察知したり、他人の心が分かると考える)
- 奇妙、風変わり、独特な行動や外見
反社会性パーソナリティ障害(ASPD:Antisocial Personality Disorder)
「反社会性パーソナリティ障害」は言動の結果や他人の権利を軽視することを特徴とするパーソナリティ障害です。
ちまたで言われる「サイコパス」はこの反社会性パーソナリティ障害のことです。
女性よりも男性の方がおよそ6倍多いです。
反社会性パーソナリティ障害は高齢者の方には少ないことから、時間の経過とともに改善していくと考えられています。
症状
- 自分の利益や快楽のために法を犯したり、騙したり、無謀な行動を取ったりしても良心の呵責を感じないことがある
- 自分の行動を正当化・合理化する
- 被害者をバカだった、無力だったと責める
- 自分の行動が他人に及ぼす有害な影響に無頓着
- 他人の権利や感情を平気で無視する
境界性パーソナリティ障害(BPD:Borderline Personality Disorder)
「境界性パーソナリティ障害」は人間関係、セルフイメージ、気分、情動の不安定性、そして拒絶されたり、見捨てられたりする可能性に対する過敏性を特徴とするパーソナリティ障害です。
臨床現場では、「ボーダーライン」「境界例」などと呼ばれます。
境界性パーソナリティ障害の人は自分や他人に対して極端な「理想化」と「幻滅」を向けて、それが目まぐるしく変化します。
つまり、ある人を極度に信頼してベタベタしていたかと思えば、急に手のひらを返したようにその人を攻撃し罵声を浴びせるといった行動をとります。
また、自信過剰になったかと思えば、「自分はダメ人間だ」と落ち込んだりします。
このような二者択一の考え方しかできない思考パターンを「スプリッティング(splitting)」と言います。
精神分析的には、エリク・エリクソンが唱えた心理社会的発達理論の「自我同一性(アイデンティティ)の拡散」の病理を持っているとされます。
【エリクソンの心理社会的発達理論に関してはこちらの記事をご覧ください。】
症状
- 他人から見捨てられることに対する不安が強く、その人を繋ぎとめるために問題行動を起こす
- 自傷行為・自殺企画・逸脱した性行動・浪費・非行・薬物乱用・過食などがみられる
- 苛立たしさを生じることが多く、ときに激しい怒りを抑えることができない
- いつも空虚感を抱いている
- 不安定で激しい人間関係をもち、自分や他人に対する「理想化」と「幻滅」の間を揺れ動く
演技性パーソナリティ障害(HPD:Histrionic Personality Disorder)
「演技性パーソナリティ障害」は継続的に注目を浴びることを求め、他人の注意を引きつけるために誘惑的・挑発的な行動を取ったり、自分を劇的に表現したりすることを特徴とするパーソナリティ障害です。
男性よりも女性の方が少し多いです。
症状
- 注目の的になっていないと不快感を覚える
- 不適切な形で性的に誘惑的、または挑発的に他人と交流する
- 会話は非常に曖昧で詳細に欠ける
- 自分の感情を劇的で芝居がかった、大げさな感じで表現する
- 目新しいものを無性に欲しがるが、すぐに飽きる
- しばしば自分と他人との関係を実際よりも親密であると考える
自己愛性パーソナリティ障害(NPD:Narcissistic Personality Disorder)
「自己愛性パーソナリティ障害」は優越感や共感性のなさ、賞賛への欲求などを特徴とするパーソナリティ障害です。
女性よりも男性に多いです。
症状
- 誇大性(自分の能力や才能を過大評価する傾向)
- 途方もない業績、影響力、権力、美しさなどの空想にとらわれている
- 自分は特別でかつ独特であり、優れた人々とのみ付き合うべきだと考える
- 目標を達成するために他人を利用する
- 共感性に欠けている
- 他人を嫉妬しており、また他人は自分を嫉妬していると考える
「自己愛」と聞くと、「ナルシスト」を思い浮かべる人が多いと思います。
鏡で頻繁に自分の姿をチェックしたり、ショーウィンドウに映る自分に見とれたりする人をナルシストと呼ぶことがありますが、それくらいでしたら多かれ少なかれ多くの人がやっている行動です。
自己愛性パーソナリティ障害になると、セルフイメージが歪み、実際の自分ではない完璧な自分こそが本物だ!と思い込んだりします。
強迫性パーソナリティ障害(OCPD:Obsessive-Compulsive Personality Disorder)
「強迫性パーソナリティ障害」は仕事に支障をきたすような規律性、完全主義、コントロールなどを特徴とするパーソナリティ障害です。
女性よりも男性に多いです。
症状
- 規則、秩序、スケジュールに対するとらわれがある
- 仕事の納期に支障があっても、ある物事を完全に行おうとする
- 倫理的、道徳的問題や価値観に関して過度に誠実、厳格で柔軟性がない
- 仕事や生産的活動に過度に没頭し、結果的に余暇活動や友人をないがしろにする
- 他人が正確に自分の言った通りに物事を行うことに同意しない限り、他人に仕事を任せたり、他人とともに働きたがらない
- お金は将来、何か起こったときのために取っておくべきと考え、他人や自分に対して金銭を出し惜しむ
回避性パーソナリティ障害(AVPD:Avoidant Personality Disorder)
「回避性パーソナリティ障害」は拒絶、批判、または屈辱を受ける可能性のある社会的状況や他人との交流を避けることを特徴とするパーソナリティ障害です。
発症率に男女差はありません。
症状
- 自分が批判されたり、拒絶されたりすること、または他人に気に入られないことを恐れるため、対人的接触を伴う仕事関連の活動を避ける
- バカにされたり、恥をかくことを恐れるため、親密な関係を築くことをためらう
- 自分に能力が欠けていると感じているため、新しい社会的状況で引っ込み思案になる
- 他人に劣っているというセルフイメージを持っている
依存性パーソナリティ障害(DPD:Dependant Personality Disorder)
「依存性パーソナリティ障害」は過度に世話をしてもらいたいという欲求を持ち、服従的でまとわりつく行動を特徴とするパーソナリティ障害です。
男性よりも女性の方が多いです。
症状
- 他人からの大量の助言や保証なしに、日常的判断を下すことが困難
- 生活のほとんどの重要な側面について他人に責任を負ってもらう必要がある
- 支援や承認を失うことを恐れることから意見の不一致を口にすることができない
- 自分の能力や判断力に自信がないため、一人で計画を始めることが困難
- 独りにされて自分で自分の面倒を見なければいけないことに強い恐れを感じる
- 他者からの支援を得るために、進んで多大な労力を払う
依存性パーソナリティ障害の人は自分で自分の世話をする能力があるにも関わらず、他人から支援を得るために「能力のない存在」として振舞います。
見捨てられることを恐れて、自分が能力のある存在と見られることを望みません。
その結果、その人の経歴が損なわれ、依存が長引くことがあります。
パーソナリティ障害の合併症
パーソナリティ障害の方の多くは、日常生活に支障をきたしており、学校や会社などにおいて上手くいかないことが多く、大きなストレスを抱えています。
そのため、以下のような精神障害を併発することも珍しくありません。
- 不安障害
- 抑うつ状態
- うつ病
- 統合失調症
- アルコール依存症
- 摂食障害
【日本人に多い精神疾患とその症状に関する記事はこちら】
最後に
パーソナリティ障害はその人の性格的な部分が大きいため、「パーソナリティ障害を患った」というよりは「パーソナリティ障害である」と言った方が正しいです。
つまり、医療の問題というよりは社会の問題である面が大きいです。
ただ、パーソナリティ障害の人が神経症症状や自殺企画、自傷行為などを生じた場合は精神科治療の対象となります。
パーソナリティ障害の傾向があったら絶対に治療しなければいけないという訳でもなく、生活に支障がなければ問題ありません。
パーソナリティ障害の中には自然に症状が軽減、消失するものもあります。
周囲の人がパーソナリティ障害傾向のある人と接する場合は症状を正しく理解することが大切です。
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1.パーソナリティ(人格)障害とは?10の種類や症状を分かりやすく解説
2.パーソナリティ障害の合併症
3.最後に