【書評】「東京貧困女子。」日本は女性が住みづらい国なのか

 

人は嫌なことから目を背けてしまう生き物です。

 

例えば、テスト勉強していると普段は気にならないのに、机が散らかってのが気になって掃除を始めてしまったりしますよね。

 

本の影響を受けやすい僕は「東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか」を読んで、すごいショックを受け、ものすごく暗い気分になりました。

 

この記事を読み終わるころには、もしかしたらあなたも暗い気分になるかもしれません。

 

でも、目を背けないで欲しい!この現実から。

知って欲しい!この事実を。

 

これからここに書き記すことは、世界の何処かじゃない、今僕たちが住んでいるここ日本で起こっている出来事です。

 

 

そもそも「貧困」とは?「絶対的貧困」と「相対的貧困

日本と貧困ってそんなにイメージがないと思いますが、実はOECD加盟国の中で7番目に高く、国際的には貧困化が進んでいる国という評価なんです。

 

貧困を測る指標として、「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。

 

絶対的貧困」とは、衣食住にも不自由して、餓死を想定にいれるような貧困状態です。

 

一方、「相対的貧困」とは、世帯の可処分所得(給与やボーナスなどの個人所得から、税金や社会保険料などを差し引いた手取りの収入)を世帯人数で割って、算出した金額が全人口の中央値の半分未満という定義です。

 

厚生労働省による国民生活基礎調査によると、可処分所得の中央値は244万円だったので、年122万円未満で生活する人が、相対的貧困層ということになります。

先進国では一般的に、相対的貧困が貧困の指標として使われます。

 

若者たちを苦しめる奨学金

今の大学生たちは本当にお金がありません。

学費は高くなってますが、親の世帯収入は減っているので、日本学生支援機構の奨学金を受けている学生は過半数を超えています。

 

つまり、過半数を超える生徒たちは、大学を卒業するのと同時に何百万円もの借金を背負って社会に飛び立つのです。

 

奨学金制度は貧困家庭の子どもでも高等教育を受けられるようにということで作られました。

しかし、高等教育を受けるために選択肢がない貧困家庭の子どもに多額の借金を背負わせてしまうので、プラスどころかマイナスになってしまうことが多いのが現実です。

 

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「たぶん自殺していると思います」と話す女子大生

著者が取材した女性を1人紹介します。

 

その女性は有名女子私大の3年生で、著者が感じた印象は年齢よりもしっかりした感じで、理知的な雰囲気が漂っていて容姿が整ったごく普通の女子大生です。

 

ただ、その子は親の借金を返すために風俗で働いています。

父親は53歳の自営業ですが、我が子に興味がなく、趣味に勤しんでいます。

 

その子は日本学生支援機構から第1種(月6万4000円)と第2種(月12万円)をフルで借りていた。

大学4年間で彼女が抱える負債は単純計算で883万2000円、年利3%の金利を含めると、返済総額は1000万円を超えます。

 

奨学金は父親が管理し、年間の学費100万円以外は父親が生活費に充てています。

 

その子は大学近くの住宅街でひとり暮らしで、家賃、水道光熱費、食費などもろもろで生活するのに月15万円かかります。

大学入学後、すぐに塾講師を始めたが15万円には届かず、キャバクラとのダブルワークをするようになり、その後は風俗で身体を売ることを決意しました。

 

少し経済的に余裕が出てきましたが、昼は大学に通い、夜も休みなく肉体労働というハードスケジュール。

 

著者はこの子に「10年後、どうなっていると思う?」と質問しました。すると、彼女は

暗い話ですけど、たぶん自殺していると思います。将来のことはよく考えるけど、幸せな自分は当然、生きている自分の姿も想像つかない。

「東京貧困女子。」より引用

と表情ひとつ変えずに言ったそうです。

マインドパレッサー
これからの未来を担う若者にこんなことを言わせる社会で良いはずがない!

 

このような内容の記事にはたくさんの誹謗中傷が来るそうです。

でも、それは彼女たちの実情、気持ちを何も理解していない、ただ自分の価値観を押し付けたものです。

 

統計によると、親からの仕送り額は年々減っており、上記の女子大生のように全く仕送りがない子もいるのが現状です。

 

そういった子は大学生活を普通に送りながら、短時間でお金を効率的に稼がなければいけません。

そうなると、選択肢はかなり限られてきます。

 

風俗やデリヘル、パパ活をしている人に対して、世間の目は非常に冷たい。

 

世間がそんな感じだから、大抵、働いている子自身も「自分は汚れている」とか「自分には価値がない」と自尊心がズタズタになってしまうのです。

 

貧困は連鎖する

悲しいことに、家庭が裕福か貧困かによって、子どもの学力というのは変わります。

裕福な家庭に育った子ども学力は高く、貧困家庭に育った子どもの学力は低くなります。

 

お茶の水女子大学の全国学力・学習状況調査によると、保護者の世帯収入と子どもの学力差が比例することが分かりました。

特に算数でその傾向が現れて、年収200万円未満と1500万円以上の世帯の子どもで100点満点中で20点ほどの差がついたそうです。

 

それが貧困家庭で育った子どもたちが苦しむ学力格差問題です。

 

また、片親、特にシングルマザーだと生活費、学費を稼ぐために必死に働かなければならず、どうしても子どもと接する時間が少なくなります。

 

「元夫から養育費もらえるじゃん!」って思うかもしれませんが、養育費の未払いはなんと8割を超えるそうです。

つまり、ほとんどの母子家庭が元夫から養育費をもらえていないという現実があります。

 

親子の関わりが少なくなると、子どもは寂しい心を埋めるために、居場所を外に求める傾向があり、同じような境遇の友達と集まり、非行に走ってしまうことがあります。

 

現代は学歴によって、年収がけっこう変わるので、学力が低いと年収も低くなり、貧困から抜け出すのが難しくなります。

 

貧困は連鎖していくのです。

 

誰でも貧困になり得る

Photo by Jonathan Kho on Unsplash

たとえ今、問題なく生活できていても、病気・親や兄弟の介護などのきっかけで貧困になり得ます。

 

この本で紹介されている女性に、有名私大を卒業していて、キャリア官僚の元夫人がいます。

 

元夫は外務省のキャリア官僚で、一般家庭どころか生活はとても裕福だったそうです。

その女性が貧困になるきっかけは親の介護です。

 

そのとき、海外で生活していましたが、この女性の母親ががんになってしまい、日本と赴任先を行き来し、高額な先端医療を片っ端から試したそうです。

しかし、一向に改善がみられず、衰弱して亡くなってしまいました。

 

介護に奔走し、夫婦の時間が少なくなっていく中で、元夫の心は離れ、離婚することになりました。離婚したのが40歳。

 

彼女は高学歴で英語もペラペラだったため、離婚しても問題なく暮らせるだろうと考えていましたが、いくら高学歴とはいえ、40歳で正社員になれるところはなかなかありませんでした。

非正規で懸命に働き、息子の学費を稼ぎましたが、その大切にしていた息子とも行き違いから絶縁状態になってしまいました。

 

裕福な生活から一変、夫、懸命に介護した母、息子と何もかも失ってしまったのです。

 

最後に

平成から始まった現代の貧困の主な原因は企業の生産性を向上させるために国が決めた、雇用の非正規化です。

 

女性は結婚や妊娠などの理由で一旦、離職すると再び正規社員として働くのが難しいという現状があります。

正規社員と同じような仕事内容、仕事量をこなしても、ボーナスは貰えないし、保障も不十分、収入も低い。

 

不幸で不遇な特別な女性だけでなく、贅沢もしないでただ真面目に生きている一般女性までもが貧困という波に飲み込まれているのです。

 

国立社会保障・人口問題研究所によると、単身で暮らす20~64歳の女性の3人に1人が貧困状態にあり、65歳以上の単身女性になると、貧困率は47%にも上るそうです。

日本は女性が1人では生きていけない社会なんです。

 

社会心理学で「公正世界理論という理論があります。

この理論によると、人は「自分が生きる世界は公正な場所である」と信じたい欲求を持っていると考えます。

 

なので、女性が痴漢やレイプの被害に遭ったときに、「ちゃんと抵抗したの?」とか「肌を露出した服着てたんじゃないの?」など、被害者に非があるかのように責め立てます。

つまり、その被害者に落ち度があったから、そんな目に遭っただけで、普通に暮らしていたらそんな目に遭わない。

 

もし、普通に暮らしている何の落ち度もない人が酷い目に遭うような世の中だと認めると、自分もいつ酷い目に遭うのか分からないということになるので、公正でないということを認めるわけにはいかないんですね。

 

マインドパレッサー
でも、実際は世界は公正ではないですよね。

 

今年の東京大学の祝辞で上野千鶴子さんが言ってましたが、この世の中には様々な格差があります。

男女の間には大学に入学しやすさ、年収など、様々な格差があります。

 

「東京貧困女子。」には目を覆いたくなるような内容がたくさん書かれています。

 

僕もまさか自分が住んでるこの国がそんなことになっているとは思いませんでした。

この本に登場する女性たちは貧困に陥った自分たちの物語によって、一人でも多くの人たちが貧困の波に飲み込まれないことを望んでいると思います。

 

この本が一人でも多くの人に読まれますように。

 

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