- 足の小指をぶつける
- 指先を紙で切る
- 爪がはがれる
これらに共通すること、それは「めちゃくちゃ痛い!!」ということ。
痛みは、
という重要なシグナルです。
しかし、この広い世界には敵に強烈な痛みを与えて、生き延びてきた生物がいます。
ハナバチ科、スズメバチ科、アリ科を含む「ハチ目」の昆虫たちです。
彼らの多くは強烈な痛みを誘発する毒液を武装しており、刺されると涙が出るくらい痛い!
ここである昆虫学者が疑問を抱きました。
その昆虫学者というのが、アリゾナ大学の昆虫学者ジャスティン.O.シュミット博士です。
シュミット博士は、約150種類の昆虫たちに自分のカラダを刺させて、どの昆虫に刺されると最も痛いのかを調査しました。
この記事では、シュミット博士が強烈な痛みに耐えながら調べた世界初の「刺されると痛い昆虫ベスト10」を発表します。
また、カラダのどの部分を刺されると痛いのかも併せてご紹介します。
痛みを感じなくなる病気がある!?
【衝撃】刺されると痛い昆虫ベスト10
この無邪気に笑っている人が、アリゾナ大学の昆虫学者ジャスティン.O.シュミット博士です。
シュミット博士は約150種類の昆虫たちに自分のカラダを刺させて、微妙な痛みの違いを味わい分けられるようになりました。
シュミット博士は感じた痛みを独特の表現を用いて説明することから“痛みの詩人”と呼ばれています。
シュミット博士は昆虫に刺された痛みを「シュミット指数」という痛みの指標で分類しました。
指標は1~4まであり、痛さレベル1が「やや不快」で痛さレベル4が「耐え難い激痛」です。
シュミット博士が苦労して調べ上げた「刺されると痛い昆虫ベスト10」を早速、発表していきます。
第10位コハナバチ(痛さレベル1.0)
コハナバチは体長5~15mmの小型のミツバチ類です。
全体に短い毛があり、体は黒色でときに黄色,または赤色の模様があります。全世界に分布するが温帯地域に多く、日本では約100種知られています(コトバンク,“コハナバチ”)。
コハナバチに刺された痛みをシュミット博士はこのように表現しています。
第9位ヒアリ(痛さレベル1.2)
ヒアリ(英語:fire ant)は世界の侵略的外来種ワースト100選定種で、特定外来生物にも指定されています。
主にアルカロイド系の毒と強力な針を持ちますが、人間が刺されても死ぬことは稀で、痛み・かゆみ等の軽度の症状や、体質によりアレルギー反応や蕁麻疹等の重い症状が出る場合もあります。
命の危険があるのは、アナフィラキシーショックなどのアレルギー症状が起きる場合です。
そのため、ヒアリは“殺人アリ”と呼ばれることもあります(wikipedia,“ヒアリ”)。
ヒアリは、本来、南米中部に生息するアリですが、船や飛行機に積まれたコンテナや貨物にまぎれ込んで、アメリカ合衆国やカリブ諸島に次々と侵入しました。
2000年代には原産地から遠く離れたオーストラリア、ニュージーランド、中国、台湾でも発見されるようになりました。
日本では2017年6月に初めて確認され、定着の恐れがあるとして、環境省などが対策にあたっています。
ヒアリに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第8位アカシアアリ(痛さレベル1.8)
アカシアアリは黒色やオレンジ茶の体色で、体長は3mmほど。大きな目と細い身体が特徴です。
アカシアアリは主に中央アメリカに生息しており、アカシアという「アリ植物」と共に暮らしています。
アリ植物とは、アリと共生関係を結び、お互いに助け合いながら生きている植物です。
アカシアアリはアカシアが分泌する蜜を食べさせてもらったり、葉や茎に住む場所を提供してもらっています。
そして、アカシアはその見返りとしてアリにほかの有害な動物から守ってもらったり、種子を分散してもらいます。
アフリカに自生するアカシアの一種と共生するアリは、なんとアカシアの葉を食べにくるキリンやゾウまでも撃退してしまうそうです。
そんなアカシアアリに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第7位ホオナガスズメバチ(痛さレベル2.0)
一口に「スズメバチ」と言っても、さまざまな種類がいます。
スズメバチとは、ハチ目-スズメバチ科の昆虫のうち「スズメバチ亜科」に属するハチの総称なのです。
ホオナガスズメバチはスズメバチ亜科の「ホオナガスズメバチ属」に分類されます。
北海道や本州の一部に生息しています。
ホオナガスズメバチに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第6位イエロージャケット(痛さレベル2.0)
イエロージャケット(英語:Yellow jacket)の体色は大体、黄色と黒色ですが、種によっては白色と黒色のものや、腹部の背景色が黒色の代わりに赤色のものもいます。
イエロージャケットに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第5位ミツバチ(痛さレベル2.0)
馴染みの昆虫が出てきましたね。
ミツバチ(蜜蜂)は、花の蜜を加工して巣にたくわえて、ハチミツとすることで知られています。
ミツバチの針には、ギザギザの「返し」がついているので、皮膚に刺さるとその返しが引っ掛かり、なかなか抜けません。
ミツバチ本体は飛んで行っても、針だけが皮膚に残ります。
ただ、ミツバチ自身も針と一緒に器官の一部を失うため、命を落とします。
つまり、ミツバチはスズメバチなどとは異なり、針を刺すと命を落とすので、大型の捕食動物との戦闘に備えて、伝家の宝刀はとっておくことが多いです。
そんなミツバチに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第4位 収穫アリ(痛さレベル3.0)
収穫アリ(英語:harvester ant)は、植物の種子を収穫して、巣に貯蔵し、食料にする習性をもちます。
収穫アリの毒の作用についてはまだあまり分かっていませんが、シュミット博士によると、収穫アリの毒で痛みを引き起こす原因である可能性が高いのは「バルバトリジン」という小さなペプチドです。
バルバトリジンは、細胞を殺す能力が高く、刺されるともの凄く痛い!
また、収穫アリの毒には驚くほど高い殺傷力があり、コブラの毒の恐ろしさにも匹敵するほどです。
ただ、収穫アリはすごく小さいので、何百回も刺されない限りは命を落とす確率は低いです。
収穫アリに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第3位アシナガバチ(痛さレベル3.0)
アシナガバチは、その名の通り足が長く、細身で比較的体型が小型なので、スズメバチと比べると攻撃力で劣ります。
また、性質はスズメバチに比べればおとなしく、巣を強く刺激したり、ハチを素手で触ったりしない限りは刺してはきません。
アシナガバチの毒もスズメバチに比べれば弱く、毒そのものによる死亡は稀です。
では、なぜアシナガバチが第3位なのかと言いますと、アシナガバチの毒には「キニン」という痛みを誘発する分子が含まれているからです。
キニンは痛みを感じる神経を刺激し、痛みを呼び起こします。そして、脳の神経細胞に直接働きかけるため、「神経毒」と呼ばれています。
アシナガバチに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第2位オオベッコウアリ(痛さレベル4.0)
痛さレベルはMAXの4.0!
オオベッコウバチは、世界最大のハチとして有名であり、英語でタランチュラホーク(Tarantula hawk)と呼ばれるように、クモを獲物にするハチです。
青みがかった黒い体色で、羽根の色はオレンジ、体長は6cm以上に及び、大きさではオオスズメバチをも凌ぎます。
オオベッコウバチは、北アメリカ南部や、中央アメリカ一帯、そして南アメリカ北部にかけて生息しています。
獲物はもっぱらタランチュラなので、人間を刺すことは滅多にありません。
なんと、オオベッコウバチは人間の掌に収まらないほどデカい「ゴライアスバードイーター」という巨大タランチュラでさえも獲物にします。
オオベッコウバチはまず、タランチュラを刺して身体を麻痺させ、タランチュラの体内に卵を産みつけます。
ハチの幼虫がふ化するとクモの内部を餌にしてすくすくと育ちますが、クモに死なれては困るため、重要な器官には手をつけずに生き長らえさせます。
そして、そのときが来ると、若いオオベッコウバチたちがクモの腹を食い破って、大空へと羽ばたいていきます。
オオベッコウバチに刺された痛みをシュミット博士はこう表現しています。
第1位サシハリアリ(痛さレベル4.0)
「世界最悪の一刺し」の栄冠に輝いたのは、サシハリアリです。
サシハリアリの体長は2~3cmで、中央アメリカから南アメリカにかけての熱帯地方に生息しています。
サシハリアリに刺された痛みは、あらゆるハチ・アリの中でも最大級と言われており、「弾丸アリ(英語:bullet ant)」とも呼ばれています。
また、厄介なのが、めちゃくちゃ痛いだけではなく、痛みの持続時間がとても長いことも特徴です。
現地の人は、激痛が永遠のように長く続くことを恐れ「オルミーガ・ベインティクアトロ(24時間ア)」という異名を持つほどです。
激痛の秘密は「ポネラトキシン」という非常に強力な神経毒です。
ポネラトキシンは神経を直接刺激し、刺した対象に激痛を与えます。しかも、1回だけではなく、何度も繰り返し神経を刺激するため、激痛が長時間続くのです。
さて、このとんでもないサシハリアリに刺された痛みをシュミット博士はどう表現したのでしょうか?
ここまでくると実際、刺された人がどうなってしまうのか、気になりますよね?
シュミット博士と同じくらい勇気のあるアメリカの動物研究家のコヨーテ・ピーターソンさんがサシハリアリの痛みを体感しました。
けっこう衝撃的な映像なので、覚悟してご覧ください。
刺されると最も痛いカラダの部位とは?
この爽やかに微笑みながらハチの巣を持っている男性の名前はマイケル・スミス。
マイケルさんはコーネル大学の大学院でミツバチの研究をしていました。
ある日、ミツバチの巣箱の世話をしていたとき、一匹のミツバチが短パンの裾から侵入し、マイケルさんの睾丸を刺しました。
マイケルさんが言うには、意外にもそれほど痛くなかったようです。
ここでマイケルさんに一つの疑問が浮かびました。
その答えを知るためには、カラダのあちこちを刺されるしかありません。しかし、マイケルさんが調べたところ、それまでにそんなことを試した人はいませんでした。
マイケルさんは愕然としました。そして、思いました。
身体中をミツバチに刺されたマイケル・スミスが導き出した結論とは
マイケルさんが自分の使命を悟ってから、毎日9時~10時の間に5回、ピンセットでミツバチを挟み、自分の皮膚に押し付けて刺させました。
最初と最後は、痛みを比較するために前腕部に刺しました。前腕部を刺されたときの痛みは10段階評価で「5」でした。
マイケルさんは3か月の間に合計25か所刺され、「刺されると最も痛いカラダの部位」を結論つけました。
まず、刺されても一番痛みが少ない部位は、
- 頭頂部
- 足の中指
- 上腕部
でした。これらの部位はいずれもマイケルさんの評価でわずか「2.3」でした。
それよりもちょっと痛いのがお尻で、評価は「3.7」です。
そして、刺されると最も痛いカラダの部位は、
- 陰茎
- 上唇
- 鼻の穴の内側
でした。3か所の中でも飛びぬけて強烈なのが、「鼻の穴の内側」だとマイケルさんは言います。
マイケルさんの評価では、
- 陰茎の軸部‐「7.3」
- 上唇‐「8.7」
- 鼻の穴の内側‐「9.0」
でした。
マイケルさんは鼻の穴の内側を刺されたときの痛みをこう表現しています。
マイケルさんはこうも言っていました。
イグノーベル賞「人々を笑わせ考えさせた業績」を受賞した2人
「イグノーベル賞(英語: Ig Nobel Prize)」とは、1991年に創設された「人々を笑わせ考えさせた業績」に与えられるノーベル賞のパロディーです(wikipedia,“イグノーベル賞”)。
2015年9月、ジャスティン・シュミット博士とマイケル・スミスは、その努力と功績が認められ、イグノーベル・生理学および昆虫学賞を共に受賞しました。
この記事では、昆虫の恐ろしさが協調されていますが、実は昆虫は食べても美味しいんです!!
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【引用文献】
コーディー・キャンディー/ポール・ドハティー・梶山あゆみ訳(2018)とんでもない死に方の科学 河出書房新社
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