なぜ一流のビジネスパーソンは「ユーモア」を学ぶのか

2016年10月、スタンフォード大学・ハーバード大学・コロンビア大学など名だたる大学から行動科学者などがシカゴの地に集まりました。

AIや世界平和について話し合うためではありません。

彼らの目的は「ユーモア」について学ぶことでした。

 

というのも、最近の研究では、ユーモアは人間の心理と行動に重大な影響を及ぼしていることが明らかになっているのです。

 

ユーモアがある人は周りから「知的で有能」という印象を持たれ、人とのつながりや信頼性を育みます。

また、ユーモアがある職場では、失敗を起こしても率直に方向できる文化ができたり、上司−部下との関係が良好になったりと素晴らしい効果が数多くあります。

 

 

そこでこの記事では、ユーモアがもたらす効果について紹介し、多くの人が陥りがちな勘違い、そして最後にユーモアの基本について解説します。

 

この記事は、「ユーモアは最強の武器である」という書籍を参考に書きました。

記事では紹介し切れない内容もたくさんあるので、ユーモアについて知見を深めたい方は是非手にとって見てください。


 

なぜ一流のビジネスパーソンは「ユーモア」を学ぶのか

なぜ一流のビジネスパーソンは「ユーモア」を学ぶのか
Photo by Hunters Race on Unsplash

ユーモアには、数多くの素晴らしいパワーがあります。

周囲の人が抱く印象に良い影響を与えたり、ストレスを軽減させたり、人間関係が良好になったり。

また、ユーモアの溢れる職場では、生産性が向上したり、クリエイティブな仕事ができるといった効果もあります。

 

そして、ユーモアは「失敗を恐れずにチャレンジする勇気」を与えてくれます。

 

2022年のイグノーベル賞経済学賞を受賞した「人生で成功するのに必要なのは才能か運か」に関する研究が行われました。

その研究によると、才能よりも運の方が人生の成功に影響を与えているということが分かりました。

「運がある」というのはやや漠然としていますが、周りに転がっているチャンスに気づくこと、チャンスが舞い込んで来たときにそれを活かすことが大切になります。

 

そのために役立つのがユーモアです。

チャンスを逃してしまう要因の一つが「体験の回避」です。

「失敗できないから無難な方法でいこう」「新しい方法はリスクが大きいから既存の方法でいこう」などと、安全策をとって体験を回避していると、チャンスを逃してしまいます。

 

また、現代は生産性やタイムパフォーマンスが重視され、心にゆとりがない人が多いため、チャンスが転がっていても気づけないことがあります。

ユーモアは心理的な余裕を与えてくれるので、チャンスにも気づきやすくなると思われます。

 

つまり、ユーモアは私生活においても職場においても、最強の武器になるのです。

一流のビジネスパーソンはそういったユーモアのパワーを理解しているのです。

 

【イグノーベル賞経済学賞を受賞した研究】

Alessandro Pluchino, Alessio Emanuele Biondo, and Andrea Rapisarda(2018)TALENT VERSUS LUCK: THE ROLE OF RANDOMNESS IN SUCCESS AND FAILURE, Complex Systems, vol. 21, nos. 3 and 4

 

ユーモアがもたらす効果

ユーモアがもたらす効果

私たち人間は笑うと、その脳内では以下のような、さまざまな神経伝達物質が分泌されて、私たちの気分に影響を及ぼします。

  • ドーパミン:ハッピーな気分になる。
  • オキシトシン:人への信頼感が高まる。
  • コルチゾールの減少:ストレスがやわらぐ。
  • エンドルフィン:ちょっぴり高揚感が湧いてくる。

私たちが仕事上のやりとりでユーモアを効かせると、相手の脳だけでなく、自分の脳内でも、上記のような脳内化学物質による変化を起こします。

 

しかし、ユーモアの効果はこれだけに留まりません。

行動科学の研究によると、ユーモアは仕事上で用いることによって、これから紹介するような効果が得られます。

ユーモアがある人は知的で有能という印象を与える

ユーモアを発揮しユーモアを理解する能力があることは、知的能力と相関関係にあることが、研究によって明らかになっています。

また、様々な研究によって、ユーモアを用いる人は周りの人に対して、知的・地位が高い・有能・自信があるといった印象を与えるということがわかっています。

 

そのことを示す研究を一つ紹介します。

その研究では、実験参加者に対して、架空の旅行会社の「お客様の声」として寄せられた短い感想コメントを読んで、感想を発表した人たちをいくつかの項目において評価するように求めました。

感想コメントは半分が真面目で、半分がユーモアを含んだ内容でした。

その結果、ユーモアのある感想を述べた人たちの方が、以下の項目で真面目な感想を述べた人たちよりも高評価となりました。

  • 「有能である」印象を与えた割合が5%高い。
  • 「自信がある」印象を与えた割害が11%高い。
  • 「地位が高い」印象を与えた割合が37%高い。
マインドパレッサー
ユーモアを用いることで「地位が高い」という印象を与えるのは、ちょっと意外ですよね。

 

ユーモアのある職場は創造性や生産性が高い

Apple社のクリエイティブ・デザイン・スタジオのトップを務めた浅井弘樹さんは「創造力の最大の阻害要因は、恐怖です。」と語っています。

そして、こう続けています。

ユーモアこそ、企業文化から恐怖を遮断するのに最も効果的なツールだとわかったのです。」

 

浅井さんは2000名以上のクリエイティブスタッフが集まる全社会議で「意外性」と「笑わせる力」をもって、人々を結びつけようと工夫を凝らしました。

通常、全社会議は極めて真剣な場ですが、そういった工夫によって、参加者はより自由に考え、もっとオープンに語り合い、新しいシナリオやアプローチを受け入れられるようになったそうです。

 

また、ユーモアは心理的安全性を育みます。

心理的安全性とは、失敗しても罰せられたり、馬鹿にされたりしないと思えることです。

 

エイミー・エドモンドソンらの研究では、心理的安全性によって、私たちはより柔軟で打たれ強くなったり、一層やる気が出たり、粘り強くなったりすることが分かっています。

ユーモアはつながりや信頼を育み、ストレスや逆境を乗り越える力となる

笑うとオキシトシンが分泌されます。

オキシトシンは感情的な結びつきを生み出す効果があるため、「信頼ホルモン」「愛情ホルモン」とも呼ばれています。

オキシトシンはハグや性行為、出産のときなどに分泌され、相手に対する親密さや信頼感が高まります。

 

職場でハグしまくる訳にもいきませんから、現実的なのはユーモアを使うことです。

ある研究によると、一緒に笑うことで相手に対して腹を割って話せたり、弱みを見せたりしやすくなることが分かっています。

 

また、笑うとストレスホルモンであるコルチゾールの値が抑えられます。

そのため、ユーモアはストレス緩和に役立つだけではなく、不安感やうつ病のリスク低下にも効果があります。

 

ユーモアに関するよくある勘違い

ユーモアに関するよくある勘違い
Image by Gerd Altmann from Pixabay

ここまでで、「ユーモア」の素晴らしい効果がご理解いただけたかと思います。

しかし、職場ではまだまだユーモアを活用できていないのが現状です。

 

業界も地位もさまざまな700名以上の人々を対象に、なぜ職場ではユーモアを発揮しにくいのかを調査した研究によると、次のような理由が見えてきました。

  1. 職場では真面目でいなければ!という思い込み
  2. 面白くなくちゃいけない!という思い込み
  3. ユーモアは才能だという思い込み

それでは一つずつ簡単に解説していきます。

 

職場では真面目でいなければ!という思い込み

調査の結果、多くの人が「職場の真面目な雰囲気の中では、ユーモアの入り込む余地はないと思う。」と回答しました。

入社して間もない社員は、ユーモアを効かせることで信頼を損ねるのではないか、まともに取り合ってもらえないのではないか、と心配する傾向があるようです。

一方、キャリアを積んで昇進していっても、周囲の視線にさらされるため、プロ意識と「真剣さ」を見せつけないないと!と思ってしまいます。

 

しかし、現実は少々違うようです。

というのも、数百名のエグゼクティブ・リーダーを対象に行われた調査によると、回答者の98%は「ユーモアのセンスのある従業員を好む」と回答し、84%は「ユーモアのセンスのある従業員の方が仕事ができると思う」と答えたのです。

 

上司に対する評価においても、ユーモアのセンスがあるところを見ると、その人のことを高い地位にふさわしいと思う傾向があります。

昨今の従業員たちは、真面目でバリバリ働くリーダーというよりも、飾り気のない、人間らしいリーダーを求めているのです。

 

面白くなくちゃいけない!という思い込み

「ユーモアを出すなら、面白くなくちゃいけない!」とどこかで思い込んでいませんか?

確かに、面白いことを言ってその場が明るい雰囲気になるのに越したことはないかもしれません。

でも、「面白いこと」よりも大切なことがあります。

それは、「自分にユーモアがあるよ」ということを周りに伝えることです。

それだけで、大きな違いが生まれます。特にリーダー的な存在の人は。

 

ウェイン・デッカーの研究によると、実際に面白いかどうかに関わらず、ユーモアのセンスがあるマネージャーはそうでないマネージャーより、

  1. 部下たちに尊敬される割合が23%高い
  2. 一緒に働くのが楽しいと思われる割合が25%高い
  3. 親しみやすいと思われる割合が17%高い

という結果になりました。

 

ユーモアのセンスって、どうやって周りに伝えればいいんだろう?
マインドパレッサー
例えば、他の人のジョークを聞いて笑うとか、場を和ますようなことをつぶやくとか、ただニッコリ微笑むとか、些細なことでOKなんですよ。

 

 

ユーモアは才能だという思い込み

「ユーモアは生まれつきの才能」という思い込みも多いです。

しかし、喜ばしいことに「ユーモアはトレーニングと実践によって鍛えることができるスキル」なのです。

 

この次の章で、ユーモアの基本について説明します。

ユーモアの基本は「事実」と「ミスディレクション」

ユーモアの基本は「事実」と「ミスディレクション」

あなたは夕食会に参加しています。

開始30ほど経った頃、参加者の一人が会場に入ってきて、申し訳無さそうな顔を浮かべながらこう言いました。

「遅れてきてすみません。来たくなかったもので。」

 

これを聞いてクスッときた人、思わずにんまりした人もいるのではないでしょうか。

では、なぜこの遅れてきた参加者の発言がちょっと面白いと感じるのか、その理由を解き明かしていきます。

 

ユーモアの核心は事実にある

遅れてきた参加者の発言が面白いと感じる理由は、ズバリ「率直な本音をぶちまけているから」です。

 

人は社会的な動物で周りとの調和を大切にするため、相手の気に障るようなことやその場を乱すようなことを避けようとします。

日本では、「本音」と「建前」を使い分けることが大切と言われますよね。

本音は全然違うけど、建前のため、その場は適当な言い訳をでごまかすといったことは往々にしてあると思います。

 

有吉弘行さん、マツコ・デラックスさん、坂上忍さんはテレビで見ない日はない、というくらい大人気です。

そんな彼らの面白さは、歯に衣着せぬ発言で他の人はなかなか言えないような事実をズバッと言ってくれるところにあるのではないでしょうか。

 

そう。あらゆるユーモアの核心には、事実があるのです。

そのため、事実の共通認識はユーモアの基盤になります。

したがって、まずは「何か面白いことはないか」ではなくて、「どんな事実が潜んでいるか」と自分に向かって問いかけてみることが重要になります。

事実にこそ、ユーモアの種が隠されているのです。

 

あらゆるユーモアには、驚きとミスディレクションが潜んでいる

ユーモアは予想と実際に起こった出来事が違った場合に生じます。

 

2022年のM-1グランプリで準優勝した「さや香の免許返納」のネタを例に挙げて説明します。

石井さん:34歳になって急激に衰えを感じるようになりまして、20代の頃に当たり前のようにできていたことが30過ぎてから身体がついてこないんですよね。

新山さん:確かに。僕も31歳なんですけど、30代に入ってから老化をすごい感じます。

石井さん:ホンマに。だから僕は免許の返納をしました。

 

思わず笑っちゃいますね。

これは「免許返納は75歳ころから検討する」「30代に入ってからの老化はこんな感じ」と認識がある中で、34歳で免許返納!?という意表を突かれるところに面白さがあると思います。

 

つまり、相手がどんな予想を立てているかを認識し、その予想を裏切るオチを用意すると、相手を笑いの渦に引きずり込むことができるのです。

 

驚きとミスディレクションをもたらす具体的なテクニックに興味が湧いた方は、「ユーモアは最強の武器である」を読んでみてください。

まとめ

  • ユーモアは私生活においても職場においても、とても大切なスキルであり、一流ビジネスパーソンはユーモアセンスを密かに磨いている。
  • 上司はユーモアセンスのある部下を好んだり、有能だと思う傾向がある。その逆も然り。
  • ユーモアにおいて「面白さ」よりも、「周りに自分はユーモアセンスがありますよ」ということを伝える方が大切。
  • 「ユーモアは生まれついた才能」ではなく、「練習と実践で鍛えることができるスキル」である。
  • ユーモアの基本は「事実」と相手の予想を裏切る「ミスディレクション」にある。

 

 

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tetsuya
北海道在住の31歳。 フルタイムで働くかたわら、30歳から通い始めた大学の通信制で心理学を学んでいます。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。