ポジティビティ効果とは?高齢者が都合の良いことだけ覚える理由

高齢者は自分に都合が良いことだけ覚えてるよな~

と思ったことはありませんか?

 

実はこれは「高齢者はポジティブなことに目が向きやすい」という「ポジティビティ効果」と呼ばれる心理の現れだと考えられています。

ポジティビティ効果は高齢者が老いと向き合うための適応です。

 

この記事ではなぜ高齢者はポジティブなことに目が向きやすいのか?やポジティビティ効果を明らかにした実験をご紹介します。

ポジティビティ効果とは?

ポジティビティ効果とは?
Emotional intelligence. Side view of an elderly man thoughtful, thinking, finding solution with gear mechanism, question, lightbulb symbols. Human face expression

ポジティビティ効果とは、高齢者が若者よりもポジティブなことを思い出しやすいという現象です。

 

「高齢者は都合の良いことばかり覚えている」とか「自尊心や有能感(自分はできるという気持ち)が高い」と感じたことがある人も多いと思います。

これらは何かを失うことが多い高齢期に、心の健康を保つための自己防衛機能の一種です。

 

ポジティビティ効果に関する実験をご紹介します。

「ポジティブ」「中立」「ネガティブ」の画像、どれが一番覚えてる?

アメリカの心理学者ローラ・カーステンセン博士らは若者(18~29歳)、中年(41~53歳)、高齢者(65~80歳)それぞれにたくさんの写真を見てもらいました。

写真は以下の3種類を用意しました。

  1. 見ていてポジティブな気持ちになれる写真
  2. ネガティブな気持ちになる写真
  3. どちらでもない写真

若者、中年、高齢者にそれぞれパソコン画面でこれら3種類の写真をランダムで見せました。

そして約15分後、覚えている写真をできるだけ多く書き出してもらいました。

 

その結果、若者はポジティブな写真とネガティブな写真を同じくらい覚えていたのに対し、高齢者はポジティブな写真の方を多く覚えていたのです。

ちなみに中年はネガティブな写真よりもポジティブな写真の方が若干多く覚えていました。

 

なぜ年をとるにつれてポジティブな内容なものを覚えやすくなるのでしょうか?

社会情動的選択性理論とは?高齢者が都合の良いことだけ覚える理由

高齢者がポジティブな内容(都合のよいこと)を覚えやすい理由として、カーステンセン博士は「社会情動的選択性理論」を提唱しています。

この理論によると、人生の残り時間が若者に比べて少ない高齢者はネガティブな情報に注目して将来の危険を回避する動機が小さいため、感情的な充足を優先する心理が働くと考えます。

そのため、ネガティブな内容よりもポジティブな内容に目が向きやすいのです。

 

また同じ理由で、高齢者はお金や新しい刺激などへの関心が薄くなり、身近な人間関係などを重視する傾向が高くなるとされます。

まとめ

  • 高齢者は前向きになれることに目が向きやすく記憶しやすい
  • 高齢者がポジティブなことに目が向きやすくなることを「ポジティビティ効果」という
  • ポジティビティ効果は社会情動的選択性理論で説明が可能
  • 社会情動的選択性理論は人生の残り時間が少ない高齢者はネガティブな情報に注目して危険を回避する動機が小さいため、充実した時間を過ごせるようにポジティブな情報を覚えやすくなるという理論

「高齢者が自分に都合の良いことばかり覚える」というのは、前向きになることで残りの人生を充実させるためだったんですね。

 

【参考文献】

科学雑誌「Newton」2021/4 老いの教科書

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。