日本生まれの心理療法「森田療法」とは?基礎理論や特徴を解説

 

フロイトの「精神分析」やロジャーズの「クライエント(来談者)中心療法」をはじめ、日本で用いられている心理療法の多くは西欧から導入されたものです。

しかし、森田療法や内観療法・臨床動作法など、日本で生まれた心理療法もあります。

 

この記事では、森田正馬(もりた まさたけ)が創始した「森田療法」の基礎理論や特徴を解説していきます。

 

【精神分析・クライエント中心療法に関する記事はこちら】

 

日本生まれの心理療法「森田療法」とは?

森田療法」は1920年頃、精神科医の森田正馬によって創始されました。

森田療法における治療対象は「神経症」の患者です。

 

神経症(Neurosis)」とは、精神医学における伝統的な用語で、不安などの不適応行動を特徴とし、入院するほど重篤ではない場合が多い状態です(wikipedia,“神経症”)。

現在、世界的な精神疾患の診断基準である*精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM)では、神経症という語は使われておらず、

  • 気分変調症
  • パニック障害
  • 強迫性障害

などと呼ばれています。

 

森田氏は神経症を“普通の人”が抱く不安や葛藤の連続線上にあるものと考えていました。

たとえば、人前でスピーチをする時に緊張して顔が赤くなったり、声が上ずったりすることがあります。

森田療法では、神経症はこのような日常生活の中で誰もが経験することの連続線上にあると位置づけられるので、症状をなくそうとしてもなかなかなくならないし、なくす必要もないと考えられます。

 

森田療法では、症状は治療するものではなく、ありのままに受け入れるように指導されます。

 

【精神疾患の診断基準「DSM」に関する記事はこちら】

 

基礎理論‐神経質症になりやすい人とそうでない人の違い

森田氏は神経症になりやすい人とそうでない人の違いは、

  1. 素質としての「過敏性」
  2. 精神傾向としての「ヒポコンドリー性基調」

にあると考えました。

素質としての「過敏性」とは?

森田療法における「過敏性」とは、自分に起こる何らかの症状に敏感に察知することを意味します。

 

たとえば、人前でスピーチするときに

過敏性がある人
うわっ!心臓がバクバクいってる!顔も熱くなってきた!

と何かのきっかけによって、症状(不安や恐怖などの感情体験が多い)が引き起こされると、そのことに人一倍敏感に察知する人がいます。

 

森田療法において、こういった人は素質としての「過敏性」があると考えます。

精神傾向としての「ヒポコンドリー性基調」とは?

ヒポコンドリー性基調」とは、自分にとって良くないことばかり考えてしまう傾向です。

 

ヒポコンドリー性基調の人は、とにかく様々なことを恐れています。

  • 交通事故にあったらどうしよう
  • 災害にあったらどうしよう
  • 病気になったらどうしよう

人はよりよく生きたいと願えば願うほど、よりよく生きられなかったらどうしようという不安が多いくなっていきます。

症状が発生するメカニズム「精神交互作用」とは?

森田療法では、症状が発生し固着するメカニズムは「精神交互作用」と名付けられています。

「精神交互作用」とは、ある感覚に対して注意が過度に集中すると、その感覚はより一層敏感になり、その感覚が固着する現象です。

 

たとえば、人前でスピーチをするときに、

過敏性のある人
うわっ!心臓がバクバクいってる!顔を熱くなってきた!

と自分の症状を察知すると、今度は

ヒポコンドリー性基調のある人
これはヤバい兆候だ!こんなんじゃ、ちゃんとスピーチなんて出来ない!どうしよう!

と考えると、よけいに動悸が激しくなり、ますます不安が大きくなることがあります。

 

もし、素質としての過敏性がなければ、心臓のバクバクはそれほど強くならないだろうし、精神傾向としてのヒポコンドリー性基調がなければ、心臓がバクバクいってもそれほど不安に陥ることはないでしょう。

つまり、過敏性とヒポコンドリー性基調が助長し合って症状が悪化していく悪循環が起きると考えられるのです。

森田療法の特徴

森田療法は基本的に入院を前提としており、40日程度の入院期間内に以下の4つの段階を進むようになる。

  1. 第一期‐絶対臥褥(ぜったいがじょく)
  2. 第二期‐軽作業期
  3. 第三期‐重作業期
  4. 第四期‐生活訓練期

それでは、ひとつずつ説明していきます。

第一期‐絶対臥褥

第一期の絶対臥褥の時期は、一切の運動、作業、談話、読書などが禁止され、食事や排泄など基本的なこと以外は、一日中ベッドに横たわることが求められます。

 

気晴らし行動ができないため、自分が抱いている不安と対峙しなければならず、はじめのうちは辛い状態が続きますが、2,3日後には安静状態に入ります。

その後、蓄えられたエネルギーと解放された不安状態と抑えられていた「生の欲望」が一体となり、日常生活に早く戻りたいと思うようになります。

第二期‐軽作業期

第二期の軽作業期は、臥褥(静かに寝ていること)は夜間だけになり、昼間は

  • 本の音読(※読書と言っても娯楽的なものではなく、古典や自然科学書などが望ましい)
  • 掃除
  • 草抜き

などの軽い作業をします。

 

また、この時期には、日記をつけるように求められ、セラピストは日記に簡単なコメントを加えて指導を行います。

このような体験を通じて、精神の自発活動を次第に復活させていくのです。

第三期‐重作業期

第三期の重作業期は隔離が終わり、

  • 台所仕事
  • 配膳
  • 拭き掃除
  • 畑仕事
  • スポーツ・ゲームなどのレクリエーション

を行い、いつもと変わらない生活を再開します。

第四期‐生活訓練期

第四期の生活訓練期は、

  • 外出
  • 買い物
  • 病院からの通学・通勤

などを行い、社会生活に戻る準備をします。

まとめ

  • 森田療法においては、神経症は“治さなけらばいけないもの”ではなく、症状をありのままに受け入れることを指導される
  • 症状が発生し固着するメカニズムは精神交互作用と呼ばれ、クライエントの素質としての過敏性とヒポコンドリー性基調がお互いに助長し合って症状が発展していく
  • 森田療法は基本的に入院療法でおよそ40日間で、絶対臥褥・軽作業期・重作業期・生活訓練期という4つの段階を進む

4つの段階の臥褥や作業はそれ自体に意味があるのではなく、それらが症状にとらわれないようにし、健康な欲求や感情を生むきっかけとなることに意味があります。

 

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。