発達障害のある人が職場で直面する課題は多岐にわたります。
- 仕事での困りごとや悩みを相談できず、自分だけで抱え込んでしまい、体調を崩してしまう
- 会議などで自分の意見に固執して、場の雰囲気を悪くさせてしまう
- 急ぎの仕事なのに、資料にこだわりすぎて、プレゼンに間に合わない
- スケジュールを組むことができず、仕事が大幅に遅れてしまう
- すぐに気が散ってしまい、仕事を終らせることができない
発達障害のある人が仕事の中で直面する問題の多くは、その人の特性と仕事とがうまくマッチしていないことが原因です。
そのため、適職を見つけることが重要となりますが、発達障害の種類によって、適した職種が異なります。
この記事では、発達障害を持つ人が働く上での課題と、発達障害の種類に応じた適職について紹介しています。
【発達障害の働き方ガイド】仕事をする上での課題と現状
発達障害を持つ人が職場で直面する課題は多岐にわたります。
以下にその一部を紹介します。
仕事中のコミュニケーションにおける困難
発達障害のある人は、社交的コミュニケーションスキルに欠けることがあります。
例えば、相手の話を字義通りに受け取ったり、表情やジェスチャーなど非言語の意味を理解するのが難しいことがあります。
そのため、上司や同僚とのコミュニケーションに苦労することがあります。
逆に本人はそこまで困っていないけど、上司や同僚が困り果てて、本人に医療機関の受診を勧めるパターンがあります。
集中力や作業効率の低下
発達障害のある人、特にADHDの特性が強い人は、注意力が散漫になりがちで、作業に集中することが難しい場合があります。
これは何かに集中するために必要な計画能力や時間管理能力に欠けるためです。
このような問題がある場合、作業が予定通りに進まず、締切に間に合わせることができないということが起こりえます。
予測困難な状況に対するストレス
発達障害のある人は、初めて遭遇する場面や予測困難な状況に対してストレスを感じることがあります。
たとえば、突然の業務の変更や緊急の対応が必要な場合などです。
そうして、職場での不安やストレスが蓄積されていきます。
発達障害のある人は「セルフ・モニタリング」が苦手とする人が多いため、ストレスや疲労が溜まっていることを自覚できず、頭痛・腹痛といった身体的な症状として現れることがあります。
発達障害の種類に応じた適職とは?
発達障害には、自閉症スペクトラム(ASD)・注意欠如多動性症(ADHD)・学習障害(LD)に分けられます。
「発達障害」と一口に言っても特性の強弱があるため、一概にこの職業が向いてます!とは言えません。
そのため、ざっくりとこんな職種が向いてると参考程度に見ていただければと思います。
自閉症スペクトラム(ASD)
ASDの人は、ルーティンワークや正確性が求められる仕事、専門的な知識を持つ仕事に向いています。
一方で、人間関係が複雑な仕事や多忙な仕事には向いていない場合があります。
以下に、具体的にASDのある方に向いている仕事の例を挙げます。
- 経理事務
- 会計士
- 法務
- 設備点検
- プログラマー
- ソフトウェアなどのテスター、デバッカー
- ゲームクリエーター
- 研究者
- 設計技術者
- CADオペレーター
- フリーランスのデザイナーやライター
- アニメーター
- カメラマン
- 動物の調教師
- その他、ルーティンワーク(定型的な業務)が可能な仕事(ライン作業、軽作業、清掃員など)
【参考:キズキ ビジネスカレッジ「ASDのある人に向いてる仕事をまとめて紹介〜向いてる職場環境/向いてない仕事/仕事の探し方/サポート団体も〜」
注意欠如多動性症(ADHD)
ADHDの人は、スポーツや身体的な活動に向いています。
また、創造性が求められる仕事や変化に富んだ仕事にも適しています。
しかし、ルーティンワークや正確性が求められる仕事には向いていない場合があります。
以下に、具体的にADHDのある方に向いている仕事の例を挙げます。
- プランナー
- 研究職
- 広告ディレクター
- 興味や関心のある分野を取り扱える営業職
- デザイナー
- イラストレーター
- 絵画・造形などのアート作家
- コピーライター
学習障害(LD)
LDの人は、具体的なタスクに集中できる仕事に向いています。
また、専門的な知識を持つ仕事や、コンピューターや技術関連の仕事にも適しています。
しかし、複雑な計算や論理的思考が求められる仕事には向いていない場合があります。
以下に、具体的にLDのある方に向いている仕事の例を挙げます。
- デザイナー
- アニメーター
- カメラマン
- 役者
- イラストレーター
- Excelや電卓を使った計算業務
- コピー&ペーストを使った事務作業
- 苦手な業務をツールで補える業務
【参考:Cocopia Career Column「LD(学習障害)の方に向いている仕事を解説|転職や仕事のコツとは?」
発達障害者雇用の現状と課題
発達障害者の就職率や雇用状況については、まだ十分に改善されていない現状があります。
多くの企業では、発達障害を持つ人を採用することに対して理解が不十分なため、就職先が限られることがあります。
また、採用後も適切な支援がない場合、職場でのストレスや不安が蓄積され、離職や精神的な問題が起こることもあります。
精神障害者保健福祉手帳の有無
発達障害者の就労状況は、精神障害者保健福祉手帳を持っているかどうかによって異なり、手帳を取得することによって、就職を後押しする可能性があります。
発達障害者の就労には、手帳の取得を含めた働き方の検討や、発達障害者が直面する困難に寄り添う支援が重要だと言われています。
【精神障害者保健福祉手帳に関する記事】
発達障害の「わかりにくさ」や「見えにくさ」
発達障害者の就労には、本人と企業の課題が存在するが、双方に共通するのは、発達障害の「わかりにくさ」や「見えにくさ」です。
近年、企業は、就職後に発達障害を診断された人を雇用する必要性に迫られています。
これらの課題を解決するためには、支援機関との連携が重要であり、発達障害者の特性を理解し、ともに助け合う職場や社会を作ることが必要になります。
【参考文献】
前野明子(2021)発達障害者の就労の現状と今後の展望―知的障害を伴わない発達障害者を中心にー 志學館大学人間関係学部研究紀要 2021 Vol. 42
まとめ
- 発達障害を持つ人が職場で働く上での課題は、コミュニケーション、集中力や作業効率、ストレスなど多岐にわたる。
- 発達障害の種類によって適した職種が異なるため、適切なジョブマッチが必要。
- 現状、発達障害者の雇用に関しては課題が多く、理解が不十分な企業が多いため、支援体制の整備や理解の促進が求められる。
【あわせて読みたい】
1.【発達障害の働き方ガイド】仕事をする上での課題と現状
2.発達障害の種類に応じた適職とは?
3.発達障害者雇用の現状と課題
4.まとめ