動画投稿サイトYouTubeには、さまざまなジャンルの動画があります。
人気のジャンルは多少の移り変わりがありますが、バラエティやレシピ、ハウツー系、ゲーム実況、音楽、大食い系などは根強い人気があります。
そんな人気ジャンルの中に、貧困生活や「入社してみたらブラック企業だった」のような転落話、独身、童貞といった自虐系のコンテンツがあります。
なぜ人はこういったコンテンツを見たくなるのかというと、人は自分より下位の人を見ると、脳が報酬を感じるからです。
近年の脳科学では、下方比較(自分よりも下位の者と比べる)では、「報酬を感じる脳の部位」が活性化し、上方比較(自分よりも上位の者と比べる)では「損失を感じる脳の部位」が活性化することが分かっています。
つまり、自分よりも能力や外見、地位などで劣っている人を見ることは脳にとって報酬であり、自分が恵まれていることを確認させてくれる現代において最大の「娯楽」なのです。
【SNSの心理学】YouTubeで貧困、過重労働などの動画を見たくなる理由とは?
狩猟採集時代、人類は最大でも150人ほどの集団で暮らしていました。
その頃は現在のような温かい住居や電化製品、スーパーマーケットなどがないので、集団で協力しないと生きていけませんでした。
つまり、集団から追い出されてしまうと、死を意味したのです。
しかし、ただ集団の中に居ればいいという訳ではありません。
人間を含む生物の目的は「生存」と「生殖」です。
女性はより強くて賢い優秀な子孫を残したいので、集団の下位の男性は相手にされませんでした。
そのため、パートナーを獲得するためには集団の中でライバルたちと競い、序列を上げる必要があったのです。
YouTubeで貧困や過重労働など、自分よりも過酷な状況にいる人を見ると、「自分よりも下がいるんだな。」「あぁ、自分は恵まれているんだな。」と実感させてくれるのです。
現代においては最大の「娯楽」です。
こんな娯楽が無料で無限に見られるなら、ずっと見てしまいますよね。
有名人を引きずり下ろす「キャンセルカルチャー」
ハリーポッターシリーズの著者で知られているJ.K.ローリングさんが、「トランスジェンダーを女性と認めない」と発言して解雇された女性をSNSで応援したことで激しい非難の対象となりました。
日本でも東京五輪の開会式直前に楽曲を担当するミュージシャンが過去のいじめ行為を理由に辞任しました。
このように有名人をはじめとした特定の対象の発言や行動を糾弾し、その対象を社会から排除しようとする動きのことを「キャンセルカルチャー」と言います。
自分よりも上位の人を引きずり下ろすと自然と自分の序列があがるので、有名人をキャンセル(辞任)させることは脳にとって報酬になります。
権力や社会的・経済的成功がない人は「道徳心」で勝負する
人がステイタスを主張する方法には、「支配(権力)」「成功(社会・経済的地位)」「美徳(道徳)」の3つあります。
「支配」は誰でもできる訳ではないですし、「成功」は絶え間ない努力が必要です。
一方で「美徳(道徳)」は何か間違いを犯した「悪」を叩けばいいだけなので、誰でもできます。
つまり、上位の人をキャンセルすることは、集団の中での自分の地位を上げてくれる上に、「自分は道徳のある人間だ」と自他に示すことができる一石二鳥の行為なんですね。
まとめ
- 人は「貧困」「過重労働」といったコンテンツを見たくなる理由は、人は自分より下位の人を見ると、脳が報酬を感じるから。
- YouTubeで貧困や過重労働など、自分よりも過酷な状況にいる人を見ると、「自分よりも下がいるんだな。」「あぁ、自分は恵まれているんだな。」と実感させてくれる現代においては最大の「娯楽」。
- 人間を含む生物の目的は「生存」と「生殖」。
- かつて人間は生きるために集団に所属しなくてはならず、性愛相手を獲得するためには、集団内での序列を上げる必要があった。
- 自分よりも上位の人を引きずり下ろすと自然と自分の序列があがるので、有名人をキャンセル(辞任)させることは脳にとって報酬になる。(キャンセルカルチャー)
- 人がステイタスを主張する方法には、「支配(権力)」「成功(社会・経済的地位)」「美徳(道徳)」の3つあり、「支配」と「成功」が難しい人は「美徳(道徳心)」で勝負する。
【参考文献】
【あわせて読みたい】
▼このブログを応援する▼