人は太古の昔から、人が集って集団を形成することで進化上、大きな利益を得てきました。
例えば、集団で協力して大きな獲物を獲ったり、集団同士で子どもの面倒を見合ったりして、子孫の生存率を高めてきました。
個人の能力だけでは、どうしようもないことを集団で協力することで乗り越えることができます。
しかし、集団になると、個人の能力をすべて合計したほどの能力は発揮できないことが多いです。
つまり、集団には個人個人の能力を抑制してしまう何らかの効果があるのです。
この記事では、なぜそのようなことが起こるのか解説していきます。
・リンゲルマン効果
19世紀のフランス人農学者のリンゲルマン(1913)は集団の生産性を研究するために、5人に一斉にロープを引いてもらい、その強さを測定しました。
その結果、ロープを引いた強さは理論上、予想された個々人の能力の合計にはならず、それよりも小さくなりました。
さらにこのような現象は人数が増えれば増える程、1人当たりが発揮する力が弱くなっていきました。
この現象をリンゲルマン効果と呼びます。
リンゲルマンによると、このような現象が起こる原因は2つあります。
① 動機的損失
→集団で作業をすると、少しでも楽をしようとする者が出てくるので、個々人の能力の最大値にはならない。
② 調整損失
→集団で作業をするには、それぞれの息を合わせなければいけません。それが上手く出来ないと個々人の能力が十分に発揮できず、集団全体の能力が低下する。
・社会的手抜き
学校全体でゴミ拾いを行う時に、真面目にゴミを拾う人もいれば、先生の目を盗んでサボる人もいます。
このように人々が身体的、精神的活動をするときに、集団だとあまり努力をしないことを社会的手抜きといいます。
ラタネら(1979)は実験参加者に出来るだけ大声を出してもらうという課題で社会的手抜きを検証しました。
参加者は1人、2人1組、6人1組のいずれかの状態でできるだけ大声を出すように頼まれました。
その結果、1人当たりの声の大きさは、個人の場合に比べ2人1組では、66%に、6人1組だと36%の声の大きさになっていました。
「基礎から学ぶ社会心理学」ページ163より
ゴミ拾いの場合とは異なり、大声を出す場合などでは、手抜きをしている本人も”自分が手抜きをしている”という自覚がありません。
・社会的手抜きの原因
原因は2つ考えられます。
① 集団内だと自分が正しく評価されないかもしれない
→グループ課題を行って、それが高評価だったとします。その場合、グループとしては高評価でも、それに対して自分がどれほど貢献したのかははっきりしません。このように集団内では、個人への注目度が下がるので、いくら頑張ったとしても正当に評価されないかもしれず、やる気がなくなってしまう。
ハーキンスとジャクソン(1985)の実験で、参加者は4人1組で新しいアイディアを出来るだけ多く考えるように頼みました。
「成果は4人分合計して評価する」という説明と、「それぞれ個人毎に評価する」という2種類の説明を行いました。
その結果、成果は合計して評価すると説明された参加者には社会的手抜きが生じましたが、成果を個人的に特定できた参加者には手抜きが生じませんでした。
「基礎から学ぶ社会心理学」ページ164より
②自分が頑張っても他の人が手抜きをしたら失敗するかもしれない
→集団内では、自分がいくら懸命に頑張っても、他の人がサボったら集団全体の能力は下がるので、失敗するかもしれず、やる気を失ってしまう。
このような集団の特徴が社会的手抜きを促進してしまうのです。
社会的手抜きは女性よりも男性において、東洋よりも西洋において、複雑な課題よりも単純な課題において多く発生することがわかっています。
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参考文献
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1.リンゲルマン効果
2.社会的手抜き
3.社会的手抜きの原因