なぜ人は犯罪を犯してしまうのか...
犯罪を犯してしまう原因を研究するアプローチとして、
1.生物学的原因論
→その人の遺伝子やホルモン、神経伝達物質などに異常があるのではないか?
2.心理学的原因論
→その人の性格や生まれ育つ過程で体験する様々な環境に原因があるのではないか?
3.社会学的原因論
→原因をその人に求めるのではなく、人間関係や社会の仕組みなどに原因があるのではないか?
の3つのアプローチがあります。
この記事では2つめの心理学的原因論で犯罪者になりやすい人の性格を説明します。
なお、生物学的原因論についてはこちらの記事をご覧ください
犯罪者になりやすい心理傾向とは?
非行や犯罪の原因をその人の性格だと考え、初めて実証研究したのがグリュック夫妻(Glueck & Glueck ,1950)です。
グリュック夫妻は500人の非行少年と500人の一般少年をその性格を比較しました。
夫妻によると、非行少年は一般少年と比べて、
- 外向的
- 活発
- 衝動的
- 自己統制がとれない
- 敵対的
- 怒りっぽい
- 疑り深い
- 破壊的
- 非伝統的
- 権威に対して反抗的
- 社会から認められていないと強く思っている
という傾向があったそうです。
しかし、これらの性格は単に社会的によろしくないものを挙げただけでした。
非行少年にこれらの性格特性があったから、非行に走ってしまったというよりは、非行少年である彼らの性格を列挙しただけです。
最近では性格全般というより、もっと具体的な特性に焦点が当てられるようになってきました。
その中からいくつかご紹介したいと思います。
敵意帰属バイアス(Hostile attribution bias)
敵意帰属バイアスとは、外界からの刺激を自分に対する挑発や攻撃と捉えやすい認知的な傾向のことです。
例えば、満員電車の中で足を踏まれると、
「こいつ、わざと踏みやがったな!!」
などと考えやすい傾向のことです。
敵意帰属バイアスが強い人は、「他人は挑発的(攻撃的)だ」と考えているので、他人に対して反抗的・挑発的な態度で振舞うことが多く、結果的に、本当に他人から敵意を持たれてしまうことが知られています。
つまり、最初は単なる勘違いから「他人は挑発的(攻撃的)だ」と思い込んでいたのが、実際にそうなってしまうのです。
敵意的反すう傾向(Hostile rumination)
あなたの「怒り」はどのくらい持続しますか?
一般的に、何かに腹を立ててもその怒りは時間とともに収まっていきます。
しかし、中には怒りのきっかけとなった体験を頭の中で何度も何度も繰り返して考えることで、ずっと怒りを根に持つタイプの人がいます。
このような傾向を敵意的反すう傾向といいます。
敵意的反すう傾向によって怒りを根に持っていると、その怒りを生むきっかけとなった人物と同じカテゴリーに属する人が攻撃対象になりやすいです。
例えば、若者がコンビニ前でたむろしていて、「コンビニに入りずらいじゃねーか!」と腹を立てたとすると、そのことをずっと根に持っていて、丁度よく通りがかった全く関係ない別の若者に矛先を向けてしまったりです。
セルフコントロールの欠如
ゴットフレッドソンとハーシ(Gottfredson & Hirschi,1990)は犯罪の原因として、セルフコントロールの欠如を挙げました。
セルフコントロールの欠如には以下のような特徴があります。
- 欲望や感情を抑えることができない
- 計画的な行動や生活が苦手で、常に刺激とスリルを求める
- 自己中心的で他人のことを思いやったり、共感することができない
- 欲求不満になると、我慢することが苦手
簡単にいうと、自分を上手くコントロールすることが出来ず、計画性のある人生くれないので、場当たり的な満足を求めてしまう、ということです。
子どもたちが非行を犯してしまう原因として、家庭環境よりも交友関係が関連していることが知られています。
自分の周りに非行少年が多いと、自分も非行に走りやすいということです。
しかし、周囲に非行少年が多い場合でも、セルフコントロール力が高い場合には非行率はあまり上がりません。
ヴァズソニーらは、オランダ・スイス・アメリカ・ハンガリーで8000人以上の青少年を対象にして、「セルフコントロールと犯罪」との関係について研究しました。
その結果は、どの国でも「セルフコントロールと犯罪」の間には関連があるということが分かりました。
依存症とセルフコントロールについて記事を書いたので、もしよければ、こちらもご覧ください
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1.犯罪者になりやすい心理傾向とは?
1-1.敵意帰属バイアス(Hostile attribution bias)
1-2.敵意的反すう傾向(Hostile rumination)
1-3.セルフコントロールの欠如