森林の中を歩くとココロが落ち着きます。
木の葉が風でこすれる音、小鳥のさえずり、川のせせらぎ...
ただ、都会の喧騒にまみれているよりも森林浴をした方が健康的というのは分かるけど、具体的に森林浴にどのような健康効果があるのか、よく分からなくないですか?
この記事では、科学的根拠として信ぴょう性がものすごく高いメタ分析によって明らかになった「森林浴のスゴ過ぎる健康効果」をご紹介し、ヒトはなぜ自然に癒されるのかを解説していきます。
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森林浴のスゴ過ぎる健康効果
この記事でご紹介するのはイースト・アングリア大学の研究で、森林浴の健康効果に関する103の観察研究と40のランダム化比較試験をまとめたメタ分析です(Caoimhe et al, 2018)。
研究手法はだいたい次のような感じです。
- 森林浴と都市部で過ごした場合のストレス度の比較
- 手術の後に「森林を見ながら療養した人」と「壁を見ながら療養した人」の回復期間の比較
- 緑地帯に住んでいる人と都市部に住んでいる人のストレスの比較
このような手法で森林浴が人体にどのような健康効果をもたらすのかを調査しています。
では、これら数多くの研究によって明らかになった森林浴のスゴ過ぎる健康効果はこちらです。
- ストレスホルモン(コルチゾール)が減る
- 血圧が下がる
- 心疾患の発症リスクが下がる
- 心拍数が低下する
- コレステロールが下がる
- 糖尿病のリスクが下がる
- 総死亡率が下がる
- 女性の早産リスクが下がる
- 主観的な健康レベルは上がる
- 睡眠の質が上がる
また、「森林浴で癌の経過が良くなる」「アルツハイマーなどの症状が良くなる」といった効果もいくつかの研究で示されました。
なぜ森林浴はこんなにも健康効果があるのでしょうか?
ヒトはなぜ自然に癒されるのか
ヒトはなぜこんなにも自然に癒されるのか、その理由はまだ明確にはなっていませんが、多分これだよねと言われている仮説をご紹介します。
- 身体活動が増える
- 他人とのコミュニケーションも増える
- 太陽の光を浴びやすくなる
- 公害の摂取量が減る
- 大気から良いバクテリアを吸い込める(いわゆる旧友仮説)
- 樹木から出るフィトンチッドが免疫系を強化する
自然にこれほど健康効果があるのは、人間の「感情システム」に影響するからです。
感情システムとは、人間の心の働きを「興奮」「満足」「脅威」の3種類に分類した考え方です。
興奮
「喜び」「快楽」といったポジティブな感情を呼び起こし、モチベーションを生み出すシステムです。主にドーパミンによって制御されています。
満足
「安らぎ」「親切心」といったポジティブな感情を呼び起こし、コミュニケーションに役立つシステムです。オキシトシンなどで制御されています。
脅威
「不安」「警戒」といったネイティブな感情を呼び起こし、外敵や危険から身を守るためのシステムです。アドレナリンやコルチゾールなどで制御されています。
ヒトが良いパフォーマンスをするには、この3つのシステムがバランスよく働く必要があります。
「快楽」ばかり追い求めてしまうと自堕落な生活になり、「安らぎ」だけだと自分が成長していくことが出来ず、「不安」ばかりだと精神を病んでしまいます。
自然との触れ合いはこの3つの感情システムをバランスよく刺激します。
季節のうつろいが程よい興奮を生み、木々のせせらぎや小鳥のさえずりが安らぎを生み、森や川に潜む知らない生物に不安を感じる。
コンクリートに囲まれた現代は、「興奮」「快楽」と「不安」「脅威」ばかりが刺激され、「安らぎ」「親切心」が足りていないのです。
具体的にどれくらい森林浴すれば良いの?
フィンランド国立自然資源研究所の研究部門を率いているリサ・トゥルヴァイネンらが行った研究によると、一か月に最低5時間を自然の中で過ごすと素晴らしい健康効果が得られるとのこと。
トゥルヴァイネンらの研究チームは都会に暮らす3000人を対象に、自然の中で過ごした後の気分の変化とストレスの軽減について調べました。
すると、一か月に5時間を自然の中で過ごすと最大の効果が得られる、という結果になった。
一か月に5時間ということは、一回あたり30分程度を週に2回、木々の下で過ごせば良い計算になります。
”偽の自然”でも効果あり
そんなあなたに朗報です。
自然の健康効果は街なかの公園で過ごすことでも得られますし、「自然の音」「自然の画像」といった、本物の自然じゃない、”偽の自然”でもOKです。
AVを観て興奮することからも分かるように、人は実際に体験しなくても観たり聴いたりするだけでも効果があるのです。
「観葉植物」も効果があります。
ノルウェーで行われた実験では、385人のオフィスワーカーの年齢や仕事内容といった因子をコントロールしたうえで重回帰分析を行ったところ、はっきりとした違いがみられました。
デスクの上に観葉植物を置いた従業員ほど主観的なストレスが低く、病気で会社を休む回数は少なく、仕事の生産性まで高い傾向が見られたのです。
『最高の体調』鈴木祐 120ページより
まとめ
- 森林浴にはストレスホルモン・血圧・心疾患の発症リスク・コレステロール・糖尿病の発症リスクの低下など、数多くの健康効果がある
- 森林浴に健康効果がある理由としては、「太陽の光を浴びやすくなる」「公害の摂取量が減る」「大気から良いバクテリアを吸い込める(いわゆる旧友仮説)」「樹木から出るフィトンチッドが免疫系を強化する」といった仮説がある
- 森林浴による健康効果を最大限享受したいなら、一か月に最低5時間を自然の中で過ごす
- 森林に行かなくても、都会の中の公園や自然の音・自然の画像といった“偽の自然”、観葉植物でもある程度の健康効果が得られる
【参考文献】
パレオな男 健康には「森林浴が最強説」を裏付けるメタ分析が出たよー
Caoimhe et al(2018)The health benefits of the great outdoors: A systematic review and meta analysis of greenspace exposure and health outcomes Environmental Research Volume 166, October 2018, Pages 628-637
フローレンス・ウィリアムズ(2017)NATURE FIX~自然が最高の脳をつくる~ NHK出版
鈴木 祐(2018)最高の体調 Cross Media Publishing
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1.森林浴のスゴ過ぎる健康効果
2.ヒトはなぜ自然に癒されるのか
3.具体的にどれくらい森林浴すれば良いの?
4.まとめ