こんな疑問を抱えている方に読んで欲しい!
- 最近、物忘れが多いんだけど、これってもしかして認知症なの?
- 老化による物忘れと認知症ってどう違うの?
- 認知症には種類があるの?
- 認知症は治らないの?
- 大切な人が認知症になってしまった...どう接すればいいの?
多くの人は加齢とともに、人や物の名前が思い出しずらくなったり、もの覚えが悪くなったりします。
このような「物忘れ」は脳の老化が原因で起こります。
一方、「認知症」は脳内で情報を伝達する電線のような役割を担う神経細胞が壊れることで起こる症状を言い、老化による「物忘れ」とは違います。
認知症は進行すると、だんだんと理解力や判断力が失われていき、社会生活や日常生活にまで支障が出てきます。
この記事では、「物忘れ」と「認知症」の違いとは何なのか、認知症の種類や症状、認知症は治らない病気なのかについて解説していきます。
老化による物忘れと認知症の違い
年齢を重ねるにつれて、人の名前や物の名前を思い出せなくなり、
「あれ」「これ」などが多くなり、しまいにはそれで会話が成立してしまったりします。
記憶は
- 記銘→覚える
- 保持→記憶として脳に保管する
- 再生→思い出す
という3つのプロセスから成り立っています。
記憶のプロセスに関してはこちらの記事をご参照ください
「物忘れ」は3つ目の「再生」する力が弱くなったため、名前がなかなか出てきませんが、何らかのきっかけがあれば思い出すことが出来ます。
一方、「認知症」は記憶からまるごと消え去ってしまっているため、きっかけがあっても思い出すことが出来ません。
物忘れ | 認知症 | |
原因 | 脳の老化 | 脳の神経細胞の変性や損傷 |
忘れ具合 | 情報の一部分を忘れる | 情報を丸ごと忘れる |
症状の進行 | あまり進行しない | 徐々に進行する |
判断力 | 低下しない | 低下する |
本人が自覚しているか | 忘れていることを自覚している | 忘れていることを自覚していない |
日常生活 | 支障はない | 支障が出てくる |
「認知症」にはいくつか種類があり、それぞれ症状が異なります。
それをこれから解説していきます。
治らない三大認知症
認知症の約半数がアルツハイマー型認知症、ついでレビー小体型認知症、血管性認知症となっています。
これら3つの認知症で全体の約85%を占めることから「三大認知症」と呼ばれています。
残りの15%の認知症はあとから説明しますが、「治るタイプの認知症」などです。
アルツハイマー型認知症
脳にベータたんぱくやタウたんぱくといった異常なたんぱく質が脳に蓄積し、神経細胞がどんどんと死んでしまい、脳が委縮していきます。
人が記憶するのに重要な役割を果たしている「海馬」から萎縮が始まり、だんだんと脳全体に広がっていきます。
アルツハイマー型認知症は男性よりも女性に多いです。
最初は物忘れから始まり、だんだんと広範な障害へと進行します。
主な症状
① 認知機能障害
新しく経験したことを記憶することができず、すぐに忘れてしまいます。
食事したこと自体を忘れたり、家族の顔なども分からなくなってしまうことがあります。
また、判断力や理解力が低下するので、ご飯を作ったり、お釣りを計算するなどが出来なくなったりします。
② 認知症に伴う行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dimentia)
行動障害としては暴力・暴言・叫ぶ・徘徊・異食など。
精神症状としては抑うつ・不安・幻覚・妄想・睡眠障害など・
周りの人の対応のポイント
- 同じことを何度も言われても、穏やかな気持ちで初めて聞いたつもりで話を合わせる
- ご飯を食べたのに「まだ食べてない」と言ったら、「食べたでしょ!」ではなく、「これから食べましょうね」という風に接する
アルツハイマー型認知症を描いたオススメ映画「きみに読む物語」
きみに読む物語(原題「The Notebook」)は2004年に公開された映画です。
映画の内容はネタバレになってしまうので深くは話しませんが、涙なしでは観られない!珠玉のラブストーリーです。
有名な映画なので既に観た方も多いかと思いますが、もしまだ観ていないのなら、今なら「U-NEXT」に無料登録したら観られます。
レビー小体型認知症
脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる丸い形をした異常なたんぱく質が蓄積することで発症します。
このレビー小体が大脳に広く出現すると、レビー小体型認知症になります。
レビー小体型認知症は女性よりも男性の方がややなりやすいです。
レビー小体型認知症は時間帯や日によって、調子が良い時と悪い時を繰り返しながら、だんだんと進行していきます。
主な症状
① 認知機能障害
物が歪んで見えたり、注意力がなくなります。
レビー小体型認知症は最初、記憶障害が見られない場合があります
② 認知機能の変動
時間帯や日によって、物事をきちんと理解・判断できる状態とボーっとして極端に理解・判断することができない状態とが入れ替わり起こります。
③ 認知症に伴う行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dimentia)
行動障害としては、寝ている間に大声で叫んだり、奇声を上げたり、暴れたりといった睡眠時の異常行動が起こります。
精神症状としては、実際には見えない物が本人にはハッキリと見える「幻視」が起こります。
幻視の多くは小動物や人で「ネズミが壁を上ってる」「知らない女性が部屋の隅で座っている」など具体的です。
また、丸めてある衣類を小動物と勘違いしたり、人形を人と思い込むなど、「錯視」も見られます。
そして、レビー小体型認知症の方の5割ほどに見られるのが、気分が落ち込んだり、悲しくなったり、意欲が低下する抑うつ症状です。
④ 運動機能・自律神経の変化
レビー小体型認知症では、下記のようなパーキンソン症状が見られます。
- 動作が遅くなる
- 無表情になる
- 顔がこわばる
- 前かがみで小刻みに歩く
- 倒れやすくなる
- 手足が震える
血圧や体温などを調節する自律神経がうまく機能せず、立ちくらみ、便秘、異常な発汗、頻尿、だるさなど様々な不調をきたします。
パーキンソン症状によって動作が鈍くなり、歩くのも遅いので失禁してしまうこともあります。
周りの人の対応のポイント
- パーキンソン症状によって、つまずいたり転びやすくなります。
イスから立ち上がる時や階段を上る時はは手すりを使うように促す、つまずきやすいものは片付けるなどして、転倒しないようにしましょう。
- 症状が進行すると、飲み込む力が衰えて唾液や食べ物が気管に入ってしまい肺炎を起こすリスクが高まります。
食べ物を細かく刻んだり、とろみをつけるといった配慮が必要です。
血管性認知症
脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」など脳血管に問題が生じ、神経細胞がダメージを受けることで発症する認知症です。
神経細胞がダメージを受けた場所や程度によって、症状は異なります。
そのため、出来ること・出来ないことが比較的ハッキリと別れていることが多いです。(まだら認知症)
血管性認知症は女性よりも男性の方がなりやすいです。
脳梗塞や脳出血のあと急に発症し、その後も階段状に進行していきます。
主な症状
① 認知機能障害
脳の神経細胞がダメージを受けた場所によって、障害される能力と普段通りできる能力があります。(まだら認知症)
判断力や記憶は比較的保たれますが、せん妄が起きて急に認知機能が低下することがあります。
② 認知症に伴う行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dimentia)
行動障害としては、感情の起伏が激しくなり、些細なことがきっかけで泣き出したり、興奮することがあります。
精神症状としては、意欲や自発性がなくなったり、落ち込んだりすることがあります。
③ 運動機能・自律神経の変化
脳の神経細胞がダメージを受けた場所によって、言語障害が出たり、手足に麻痺が出たり、感覚の障害が現れることがあります。
周りの人の対応のポイント
色々なことをする意欲がなくなって日中にあまり活動しなくなると、不眠や昼夜逆転の原因になります。
規則正しい生活を崩さないように、本人が無理しなくても楽しめることから徐々に活動を増やすよう促しましょう。
治る認知症
「認知症は治らない」というイメージが強いと思いますが、実は治るタイプの認知症もあります。
それを2つご紹介します。
正常圧水頭症
脳は頭蓋骨で守られていますが、脳はとてもデリケートなので、頭蓋骨に直接当たってしまうと傷ついてしまいます。
なので、脳と頭蓋骨の間には「脳脊髄液」というクッションのような役割をする液が満たされています。
正常圧水頭症はこの脳脊髄液が脳室に過剰に溜まり、脳を圧迫することで発症します。
70~80代に多いです。
主な症状
① 認知症状
- 物忘れ
- ボーっとする
- 要領が悪くなる
- 作業に集中できない など
② 歩行障害
- 歩幅が小さい
- 小刻みに歩く
- 方向転換の時に足踏みが多い など
③ 排尿障害
まず、頻尿になり、そのあと徐々に尿意を感じてから我慢できるまでの時間が短くなるので、しばしば失禁をしてしまいます。
治療法
正常圧水頭症の治療では、脳室で過剰に溜まっている脳脊髄液を身体の別の場所に流し、吸収させるという手術をします。
方法は主に2つ。
- 脳室‐腹腔短絡術(VPシャント)
- 腰椎クモ膜下腔‐腹腔短絡術(LPシャント)
これらの手術を行うと、3%ほど手術関連合併症のリスクはあるものの、60~90%術後の改善が期待できます。
慢性硬膜下血腫
頭蓋骨のすぐ内側には「硬膜」と呼ばれる膜があります。
慢性硬膜下血腫は頭をぶるけるなどして、この硬膜に血の塊(血腫)ができて、それが脳を圧迫します。
頭をぶつけるなどの外傷を受けてから、血腫ができるまで時間がかかるので、症状が出始めるのは1~2か月後です。
主な症状
- 頭痛
- 手足の麻痺
- 吐き気・嘔吐
- 歩行障害
- 言語障害
- 思考力の低下 など
治療法
血腫が比較的小さい場合は、自然に吸収されるのを期待して経過観察をしていきます。
血腫が大きく症状が重い場合は、生理食塩水で血腫を洗い流す手術などを行います。
※血腫の再発率は約10%ほどあるので、再手術が必要になる場合があります。
まとめ
物忘れ‐あまり悪化しない、忘れっぽいことを自覚している、きっかけがあれば思い出せる
認知症‐徐々に悪化する、忘れたことを自覚していない、ヒントがあっても思い出せない
「物忘れ」と「認知症」は似ているようで、全然違います。
と思い込まず、「何か変だな」と感じたら病院へ行きましょう!
たとえ、治らないタイプの認知症でも、早期発見で症状の進行を遅らせる治療を受けることができます。
認知症予防には運動とプチ断食が良い!
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1.老化による物忘れと認知症の違い
2.治らない三大認知症
2-1.アルツハイマー型認知症
2-2.レビー小体型認知症
2-3.血管性認知症
3.治る認知症
3-1.正常圧水頭症
3-2.慢性硬膜下血腫
4.まとめ