発達性ディスレクシア(読み書き障害)の改善方法とサポートツール

発達性ディスレクシアとは、知的に問題がないのに、読み書きが著しく苦手な学習障害で、発達障害に分類されています。

難読症、識字障害、読字障害、読み書き障害とも呼ばれています。

 

発達性ディスレクシアは文字を音に変換したり、逆に音を文字に変換したり、視覚情報を処理する脳機能に問題があるために、読み書きが難しくなります。

脳機能の問題であるため、根本的な治療は今のところまだありません。

 

しかし、「文字を見て声に出して読む」「音を聞いて文字を選ぶ」「視覚、聴覚、触覚、運動感覚を用いる多感覚学習」などのトレーニングで読み書きの苦手さを軽減することができます。

この記事では、読み書きの苦手さ改善に効果的なトレーニングをご紹介します。

発達性ディスレクシア(読み書き障害)の改善方法

発達性ディスレクシア(読み書き障害)の改善に効果的な練習は?

発達性ディスレクシアの症状は、文字の読み方がわからない(音韻処理に問題がある)タイプと文字の形がわからない(視覚情報処理に問題がある)タイプの大きく2種類に分けられます。

読み書きの訓練法も、主に「音韻処理を中心にアプローチする方法」と、「視覚情報処理を中心にアプローチする方法」があると考えられています。

ここでは、ディスレクシアの一般的な訓練方法をご紹介します。

 

T式ひらがな音読支援法

T式ひらがな音読支援法とは、「解読法」と「語彙訓練」という2段階のプロセスで行われる音読訓練法です。

T式ひらがな音読支援法は鳥取大学で開発されて、日本人ディスレクシアに対して大きな成果をあげています。

簡単に訓練内容を説明します。

 

「解読訓練」の内容

「解読訓練」では、ひらがな一文字を書いたカードを作成・使用し、以下の手順で音読訓練を実施します。

  1. 音読訓練の結果をA群(問題なく読める)、B群(言い間違い、スムーズに読めない)、C群(読めない、間違って言い直しもできない)の3群に分けて、カード数を記録します。
  2. A群を除いたB群とC群のカードをトランプのようにきって、音読訓練を行います。
  3. 間違いや読めないカードはその都度、修正のフィードバックを与えます

この訓練を1日5分ほど繰り返して、A群が何枚増えたのか、B群、C群が何枚減ったのかを伝えてその日の努力を褒めます。

このプロセスを連続して1ヶ月以上続けることで、かなりの上達が見込めます。

ディスレクシアに限らず少し音読が苦手な子供や帰国子女の子供、外国人の子供にも効果があります。

 

「語彙訓練」の内容

「語彙指導」では、見覚えのある・意味がわかる・聞き覚えのある言葉を増やすことで、音読の速度を高める訓練です。

この訓練を積むことで、単語と意味のネットワークを強めて語彙経路を使って、スムーズに文字が読めるようになります。

具体的には、年齢相応の教材の中で、次の3つのステップで進めていきます。

  1. その子が知らない言葉を抜き出す
  2. その言葉の意味を教える
  3. その言葉を使った例文を作る

この訓練法の成否を握っているのは、個人的体験(エピソード記憶)に絡めた例文作りです。

エピソード記憶は忘れにくいという性質があり、それを例文に絡めることで単語の意味理解を定着させることができます。

 

語彙指導はその効果を実感するのに、数ヶ月から1年くらいかかるため、根気強く楽しみながら行うことが大切です。

 

【記憶の種類やメカニズムに関する記事はこちら】

 

触るグリフ(触読版)

触るグリフ(触読版)
画像引用:触読学習シートサワルグリフ

触るグリフ(触読版)」は視ながら触れて、音読する触読学習プログラムです。

読み書きの問題や英語学習の改善を目的として、教材販売と指導プログラムの提供を行っており、子供だけではなく、大人の方も利用できます。

触るグリフの利用対象者

  • 一般の英語学習の方、英語学習が困難な方
  • ディスレクシア(読み書き障害)の方
  • 漢字学習に悩んでいる方
  • 算数障害の方など

触るグリフでは、点字のように立体的になった文字を触りながら読むことで、文字のカタチや綴りのパターンの精緻かつ強固な記憶を形成し、読み書きの改善を促します。

最近の脳科学研究では「見ながら触れる」学習が、より精緻かつ強固な記憶・イメージの形成を促すことが報告されています。

 

触るグリフの製品

  • 標準タイプの触読版シート  (12800円,税込み)
  • 小学1年生レベルの触読版シート (12800円,税込)
  • (補助教材)カタカナの清音,濁音,拗音,撥音シート (3600円税込)

 

製品の使い方や詳しい内容を知りたい方はの公式サイトを見てみてください。

触読学習シート サワルグリフ公式サイト

 

 Nintendo Switch 用トレーニングアプリ【読むトレGO!】

発達障害の専門家である平岩幹男先生監修で開発されたのが「読むトレGO!」です。

机に向かうことが苦手なお子さんや教科書やトレーニングブックが苦手な子でも、Nintendo Switch で音声クイズのように取り組むことができるので、苦手意識なく取り組むことができます。

 

普段から平岩先生からアドバイスをもらい文字を読む練習をしている子どもたちがテストユーザーとなって開発されました。

テストは実証実験として行われ、参加した67%のお子様が20%以上も読みの時間が短縮という結果が出ました。

 

「読むトレGO!」のトレーニング内容

平岩幹男先生は読み書きの苦手さ改善のためには、次の3つのトレーニングが必要だと考えています。

  1. 文字を見て声で答えるというトレーニング
  2. 文字を音のまとまりとして認識し読むトレーニング
  3. 音を聞いて文字を選択するトレーニング

これらのトレーニングを基に考案されたのが、「読むトレGO!」です。

 

「読むトレGO!」の料金

購入する場合、通常価格16,500円(税込)

読むトレGO!の月額レンタル版に申し込めば、月額1,980円(税込)で読むトレGO!と対応マイクをレンタルすることが可能です。

必要な期間だけ利用可能で、いつでもネットで解約ができます。

解約手数料等も不要です。

 

Nintendo Swithc版「読むトレGO!」を利用している2割以上がディスレクシアの診断を受けていないか、ディスレクシアと認識していない子どもです。

トレーニングはゲーム形式なので、勉強っぽくなくスタートすることができ、学習拒否、机に向かうのを嫌がる、教科書を見るのも嫌がるといった子どもも取り組むことができます。

 

より詳しい内容を知りたい方は以下の公式サイトを覗いてみてください。


【読むトレGO! for 任天堂スイッチ】

読み書きの苦手さを補うサポートツール「ディスレクシアホイール」

スマホやタブレットなど僕たちの身の回りにあるテクノロジーには、さまざまな障害や困難のある子どもたちの学びや生活に役立つ機能がたくさん組み込まれています。

 

英国スコットランドにCALL Scotlandという障害のある人の支援するために研修やカンファレンスを実施しているプロジェクトがあります。

そこのウェブサイトには、さまざまな情報リソースが挙がっています。

その中でも、ディスレクシアの人に役立つiPadのアプリが領域別に配置されてい「iPad Apps for Learners with Dyslexia」のポスターはとても便利です。

iPad Apps for Learners with Dyslexia
画像引用:Call Scotland New & Revised Apps Wheel

 

学習に困難のある人へのテクノロジーを用いた学習補償・環境調整、読み書き評価の開発、読み書きの指導法開発をされている平林さんがこれを見つけ、ダウンロードして試していきました。

そして、日本での英語支援に役立つアプリをいくつか見つけました。

 

そして、平林さんが普段から読み書き支援に活用しているアプリを整理して、日本版ディスレクシアホイールを作ったのが以下のディスクレシアホイールです。

ぜひ活用してみてください。

読み書きの苦手さを補うサポートツール
画像引用:平林ルミのテクノロジーノート「日本版ディスレクシアホイール(Dyslexia Wheel Japanese version)」

 

発達性ディスレクシアは気付かれにくい?

発達性ディスレクシアは気付かれにくい?

発達性ディスレクシアと言っても、短い文章なら読めるのに長い文章は難しかったり、黒板の文字は板書できないけれど、教科書の写しならとれるなど、程度はさまざまです。

また、発達性ディスレクシアの子どもは、おしゃべりが上手で人間関係は良好なことも多いので、「見逃されやすい障害」と言われており、気づかない保護者も多いようです。

 

そういった状況下でディスレクシアの子どもは、努力しているのに読み書きができないことを誰にもわかってもらえず、自尊心の低下、抑うつなど二次障害に陥ることもあります。

子どもは親に心配をかけたくないと思うので、話しやすい関係性を構築したり、保護者や先生が異変に気付くことが大切になります。

 

「読むトレGO!」などのツールは、読み書きが苦手なのか、どの分野が苦手なのかを見極めることができるので、その後どんな練習や工夫が必要なのかを知ることができるので便利です。

 

まとめ

文字を読み書きするのが困難な「発達性ディスレクシア」の割合は、日本の小学一年生の段階で100人に2人、小学二年生以上では100人に7〜8人の確率と言われており、身近な学習障害(LD)の一つです。

程度はさまざまなため、周りが気づかないことも多く、発達性ディスレクシアの方は人知れず悩み苦しんでいる場合もしばしばあります。

 

読み書きに支障をきたした結果として、将来のさまざまな就学・就労機会が失われたり、いじめ、不登校や引きこもり、うつ病といった二次障害も起こりかねません。

 

この記事では、さまざまな訓練方法などを紹介してきましたが、「普通」を目指すのはとても大変なことです。

そのため、その子、その人の脳と考え方の個性にあわせた学び方や生活、仕事の選び方を尊重することが二次障害を防ぎます。

 

【引用文献】

触読学習シート サワルグリフ「ディスレクシア(発達性読み書き障害)の症状と特性について」

平林ルミのテクノロジーノート「日本版ディスレクシアホイール(Dyslexia Wheel Japanese version)」

BRAIN CLINIC「ディスレクシア(読字障害)とは?症状・原因・対処法について」

 

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