世界中で愛されているお菓子「チョコレート」。
あのとろけるような口どけ、そして口の中いっぱいに広がる香り・味は多くの人を虜にします。
2月14日の「バレンタインデー」には、欠かせないものですよね。
しかし、チョコレートがどのように作られるのかを知る人はそんなに多くありません。
そこでこの記事では、チョコレートの製造プロセスや美味しさの秘密、なぜあの口どけが生まれるのかを科学の力で解き明かしていきたいと思います。
参考文献
『Newton~人体の取扱説明書~』2020年3月号
チョコレートの語源
「チョコレート」という言葉の語源は「ショコラトル」というナワトル語です。
ナワトル語は15世紀頃に現在のメキシコ周辺に存在していた「アステカ帝国」の公用語です。
ショコラトルの意味は「苦い水」です。
今でこそ、チョコレート=甘いもの というイメージですが、かつては「苦い飲み物」だったのです。
なぜなら、カカオ豆の原産国である中央・南アメリカは気温が高いため、チョコレートが固まりにくく、当時は砂糖がなかったからです。
その頃はカカオ豆をローストしてすり潰したカカオマスに、唐辛子などのスパイスを入れて飲んでいたそうです。
スペインがアステカ帝国を支配してから、カカオ豆がヨーロッパに持ち込まれました。
ヨーロッパには砂糖があり、しかも気温が低いため、現在のような甘いチョコレートが生まれたのです。
チョコレートはこうやって作られる!チョコは「発酵食品」
高音多湿の熱帯雨林で育つカカオの木の幹には下の写真のような「カカオポッド」と呼ばれるラグビーボール型の実がなります。
このカカオポッドの中にあるのが、カカオ豆です。
「カカオ豆は茶色」というイメージが強いと思いますが、加工する前は下の写真のように白いんです。
この白いカカオ豆を発酵させたり、ローストすることで茶色くなっていきます。
チョコレートの製造プロセスは大きく分けて7つの工程があります。
- カカオポッドの収穫
- 白いカカオ豆を発酵させる
- 発酵させたカカオ豆を乾燥させる
- 焙炒(ロースト)
- ローストしたカカオ豆をすり潰し、カカオマスにする
- カカオマスを圧搾し、ココアバターを抽出する
- 砂糖や粉乳を混ぜて固める
①カカオポッドの収穫
カカオの木の幹になっている「カカオポッド」を収穫します。
ちなみに、「カカオ(学名:Theobroma cacao)」はギリシャ語で「神(theos)の食べ物(broma)」を意味します。
②白いカカオ豆を発酵させる
白いカカオ豆をカカオポッドから取り出したら、発酵させます。
実はチョコレートは発酵食品なのです。
発酵のさせ方は産地や地域、農家によって多少異なりますが、木でできた箱の中にバナナの葉を敷いて、その中に豆を入れて、4~7日ほど置くなどして発酵させます。
発酵させることで、チョコレートのあのいい香りの元となる物質が作られるため、非常に重要な工程です。
③発酵させたカカオ豆を乾燥させる
発酵したら、水分が約8%以下になるまでカカオ豆を乾燥させます。
発酵させた後にすぐ色々な国に輸送すると腐ってしまうので、乾燥させるまでが原産国で行われます。
④焙炒(ロースト)
原産国から色々な国に輸送されると、焙炒(ロースト)されます。
ローストするとさまざまな化学反応が起き、チョコレートのいい香りが生まれたり、こげ茶色に変化します。
⑤ローストしたカカオ豆をすり潰し、カカオマスにする
ローストされたカカオ豆はすり潰されて、カカオマス(cacao mass)と呼ばれるペーストになります。
カカオマスはチョコレートの原料として使われます。
⑥カカオマスを圧搾し、ココアバターを抽出する
カカオマスを圧搾(圧力をかけて絞り出す)すると、「ココアバター」という薄黄色の油分が出てきます。
ココアバターはチョコレートの口どけや食感を決める大切な成分です。
ココアバターはチョコレートにも使われますが、他にも薬品や軟膏、化粧品などにも使用されます。
ちなみに、カカオマスを圧搾し、ココアバターを抽出したあとに出る粉は「ココアパウダー」と呼ばれ、これに砂糖などを混ぜてお湯に溶かして飲むのが、ココアです。
⑦砂糖や粉乳を混ぜて固める
砂糖やココアバター、カカオマスや粉乳などを混ぜて、さらに粉砕し、固めるとチョコレートが出来上がります。
ちなみに、カカオマスを加えないと茶色にならず、「ホワイトチョコレート」ができます。
チョコの美味しさの秘密。口どけを生み出す科学
「チョコレートの美味しさの秘密」と言えば、香りや味もさることながら、噛んだ時の「パキッと感」とその後の「トロリ感」という食感が肝ではないでしょうか?
チョコレートの食感を生み出すのは、ココアバターです。
ココアバターは牛乳から作られるバターとは、分子構造や溶ける温度が異なり、それがあの絶妙な食感を生み出します。
ココアバターを構成する分子は個体の状態では、「結晶」になっています。
結晶とは、原子や分子が規則正しく並んでいる構造です。
温度が上がると、規則正しく並んでいる結晶構造が崩れて、液体へと変化します。
牛乳から作れられるバターは冷蔵庫内の温度10℃でも、実は結晶の割合は40%ほどしかありません。
残りの60%ほどは液体のような状態ですが、40%ほどの結晶部分が何とか全体を支えているので、固体のような状態を維持しています。
そのため、バターには「パキッと感」はありませんし、指で触れるとすぐに溶けてしまいます。
一方、ココアバターは10~25℃では、80%以上が結晶で、バターよりもかなり固いです。
しかし、温度が30℃くらいになると、ココアバターの結晶は急激に崩れはじめ、35℃を超えるとほぼゼロになります。
30℃と言えば、人の体温より少し低いくらいです。
つまり、チョコレートを噛む瞬間は結晶が80%以上あるので「パキッと感」が、口の中でチョコレートが温められると急激に溶け始めるので、あの「トロリ感」が生まれるのです。
チョコレートに関するよくある疑問
チョコレートに関するよくある疑問、
- チョコレートをたくさん食べると鼻血が出るってホント?
- チョコレートはカラダに良いの?
- 日本でカカオは作れないの?
に回答していきます。
チョコレートをたくさん食べると鼻血が出るってホント?
結論から言うと、チョコレートをたくさん食べても鼻血は出ません。
鼻をぶつけたりして鼻の中の血管が切れる
乾燥によって鼻の中の粘膜が傷つく
高血圧や動脈硬化などの病気で血管が弱っている
などの原因によって鼻血が出ますが、いずれもチョコレートとは関係ありません。
チョコレートはカラダに良いの?
チョコレートには、動脈硬化やガン予防に効果があると言われる「ポリフェノール」などの成分が含まれています。
抗酸化作用があるため、アンチエイジング効果も期待できます。
つまり、適量ならカラダに良いと言えます。
ただし、食べ過ぎは禁物です。
大人では1週間で板チョコ1枚(約60グラム)くらいが適量です。
日本でカカオは作れないの?
基本的にカカオは北緯20°~南緯20°の「カカオベルト」で育ちます。
しかし、土壌の性質や温度などを管理することで栽培することは可能です。
実際、小笠原諸島の母島でもカカオの栽培に成功しています。
まとめ
チョコレートの「パキッと感」と「トロリ感」を生み出しているのが、ココアバターの性質だったんですね。
そして、チョコレートが実は発酵食品だったのは驚きですよね。
チョコレート、特に高カカオのチョコレートはカラダにも良いとされています。
認知症予防
高血圧予防
動脈硬化予防
アレルギー症状の改善
美肌効果
ただし、何でも食べ過ぎはよくありません!
そして、一度にたくさん食べるのではなく、チョコっとずつ食べるのが良いです。
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参考文献
『Newton~人体の取扱説明書~』2020年3月号
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1.チョコレートの語源
2.チョコレートはこうやって作られる!チョコは「発酵食品」
3.チョコの美味しさの秘密。口どけを生み出す科学
4.チョコレートに関するよくある疑問
5.まとめ