ノースカロライナ州立大学の症例で、急に現実と幻想の区別がつかなくなったり、幻聴を聞いたりと精神疾患の症状をきたして統合失調症と診断された患者がいました。
この患者は18か月もの間、様々な専門家のもとで精神疾患や自己免疫疾患の治療を受けましたが、その効果があらわれることはありませんでした。
しかし、たまたま内科医が皮膚の病変に気が付き、バルトネラ・ヘンセラ菌に感染していることが発覚しました。
バルトネラ・ヘンセラ菌は世界で最も一般的な最近の1つでその感染経路は主にネコなどの動物から引っかかれたり、噛まれたりして人間に感染します。
猫から引っかかれて感染することが多いことから「猫ひっかき病」と言います。
- 猫を飼っている方
- 精神疾患のような症状が出ているけど、原因が分からない方
猫ひっかき病とは?
「猫ひっかき病」とは、猫や犬などに引っかかれたり、噛まれたりしてバルトネラ・ヘンセラ菌に感染する感染症の一種です。
猫の5%~20%がバルトネラ・ヘンセラ菌を保有していると言われています。
元々はネコノミというノミの一種がバルトネラ・ヘンセラ菌を保有しています。
このネコノミが猫に寄生し、ネコノミの排泄物を猫がグルーミングによって、自分の牙や爪に付着させてしまい、その牙や爪から人間に感染します。
猫ひっかき病の患者の60%以上は女性で、特に10代と40代の女性に多いと報告されています。
その理由は飼育や世話をすることが多いからだと考えられています。
と思う方もいるかもしれませんが、自然界にいるネコノミ→人間への感染もあるので猫を飼っていない方でも猫ひっかき病になり得ます。
猫ひっかき病が多発する時期
猫ひっかき病は7月~12月に多いです。
ネコノミは夏が繁殖期で、外で遊んでいたときに寄生したり、ネコノミが寄生している猫との接触によって寄生します。
そして、秋から冬にかけて寒くなってくると、人間との触れ合いが増えることで猫ひっかき病が増えます。
また、バルトネラ・ヘンセラ菌を保有している猫は西日本や都市部に多いことが調査で分かっています。あと、室外で飼育している猫、3歳以下の子猫に感染していることが多いです。
バルトネラ・ヘンセラ菌に感染すると出る症状
バルトネラ・ヘンセラ菌を保有している猫から引っかかれたり、噛まれたりすると3日目~10日目に菌が侵入した部分が蚊に刺されたときのように少し腫れます。
1,2週間後にはリンパ節が腫れあがり痛みを伴い、以下のような症状がでます。
- 発熱
- 悪寒
- 倦怠感
- 食欲不振
- 頭痛
- 発疹
猫ひっかき病になっても多くの場合は良性で数週から数か月後には自然と回復します。
ただ、患者の5%~10%は脳症、けいれん発作、脊髄炎、結膜炎などになる場合があります。そして、冒頭でもご紹介したように精神疾患になる場合もあるのです。
予防するには
手っ取り早い予防策は完全に屋内で飼育することです。
他には以下のような対策があります。
- 定期的に爪を切る
- 猫と触れ合ったあとは手を洗う
- 猫から引っかかれたりしたら傷口を消毒する
- ネコノミの駆除
- 過度なスキンシップ(口移しなど)を避ける
最後に
この記事で一番伝えたかったことはストレスや不安だけが精神疾患になる原因ではないということです。
ボクシングやアメフト、柔道の選手はプレー中に脳への打撃が繰り返され、何度も脳しんとうを引き起こすことが知られています。
そして、何度も脳しんとうを引き起こすことで発症する慢性外傷性脳症では記憶障害やうつ病、認知症やパーキンソン病に似た症状が起こります。
ただ、慢性外傷性脳症はMRIやCTスキャンなどの脳画像には病変が写りにくいため、診断がされにくい厄介な病気です。
そのため、猫ひっかき病や慢性外傷性脳症などの外傷が原因で精神疾患になってしまった人は正しい診断が下されず、苦しんでしまう可能性があります。
もし、精神疾患の症状が出ているけど、原因が全然分からずに苦しんでいる方がいれば、一度内科を受診されることをお勧めします。
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【参考文献】
『バイリンガルニュース』 エピソード355 topic3 「猫ひっかき病」
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