チュートリアル徳井さんが所得隠し・無申告だったのを受けて、メディアなどで
と噂になっていますね。
徳井さんを擁護する人もいれば、「ADHDを言い訳にするな!」と怒ってる人もいて賛否両論です。
この記事では徳井さんがADHDかどうかはさておき、注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)とは、どのような精神疾患なのか、そしてどんな症状があるのか、最後にADHDを緩和するにはどうすればいいのかまでご説明したいと思います。
注意欠陥多動性障害(ADHD)とは?
精神疾患の判断基準として、アメリカ精神医学会が精神障害の診断と統計マニュアル(DSM,Diagnostic and Statistical Manual of mental disorders)という書籍を出版しており、定期的に更新されています。
2019年現在では2013年に出版されたDSM-5が最新版です。
DSM-5では新たに新たに神経発達症群というカテゴリーが作られました。
神経発達症群とは「日常生活、社会生活、学習、仕事上で支障をきたすほどの発達上の問題が、発達期に顕在化するもの」とされており、
- 知的能力障害群
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- コミュニケーション症群
- 注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 限局性学習症
- 運動症群
などが含まれます。
DSM-5によるADHDの診断基準
DSM-5によると、注意欠陥多動性障害(ADHD)は、以下の①と②の基準を満たすものとされています。
① 以下の不注意の症状が6つ以上、6か月以上継続している
- 細やかな注意ができずケアレスミスをしやすい
- 注意の持続が困難
- 注意散漫
- 指示に従えない
- 課題や活動を整理することができない
- 根気に欠ける
- 忘れものが多い
- 外部刺激で気が散る
② 以下の多動性・衝動性の症状が6つ以上、6か月以上継続している
- 着席中、手足がそわそわする
- 着席できない
- 走り回る
- 静かに遊べない
- 「突き動かされるように」じっとしていられない
- おしゃべり
- 相手の質問を聞き終わる前に答えてしまう
- 順番待ちが苦手
- 他の人を攻撃したり、割り込んだりする
アメリカ精神医学会が出版しているDSMのように、世界保健機関(WHO)も精神疾患の診断基準として国際疾病分類(ISD,International Statistical classification of Diseases)を公表しており、2019年現在ではICD-11が最新版です。
ICDでも、ADHDの診断基準は注意欠陥、多動性、衝動性の症状がどれくらいあるかでDSMの診断基準とそこまで変わりません。
ADHDの症状と原因
ADHDの人の注意欠陥・多動性、そして今回チュートリアル徳井さんが「ADHDじゃない?」と言われるようになった理由の「先延ばし癖」について、脳でどのような問題が起こっているのか、を説明していきます。
注意欠陥・先延ばし
注意システムの中枢は脳幹にある青斑核で、ここを起点としたネットワークで脳全体に信号を送って注意を喚起しています。
このネットワークには依存症とも関連深い報酬系、人間の本能的なものを司る大脳辺縁系、人間が他の動物と比べてかなり発達している部分の大脳皮質、運動調節する小脳といった部位が関わっています。
注意システムのネットワークを調整しているのは、神経伝達物質のノルアドレナリンとドーパミンです。ADHDの人に処方される薬はこの2つの神経伝達物質をターゲットにしています。
神経伝達物質についてはこちらの記事をご覧ください
ADHDの人の問題は、ノルアドレナリン・ドーパミンのどちらか、もしくは報酬系・大脳辺縁系・大脳皮質・小脳のどこかがうまく機能していないことです。
どの部位に問題があるかで症状が変わってくるため、ADHDの症状は千差万別という訳です。
ドーパミンは報酬系に信号を送り、報酬系から計画・思考などを司る大脳皮質に信号を送ることで、大脳皮質は「何に注目し、エネルギーを注ぐべきか」を判断します。
報酬系がうまく機能しないと、大脳皮質は優先順位をつけることが出来ません。
報酬系を損傷したサルは優先順位をつけることが出来ず、報酬に直結した作業しかやろうとしませんでした。
これはADHDの人でも同じことが言えます。
大学入試や英語習得のための勉強のような、長い目で見て価値のある地味な作業よりも、すぐに満足が得られることを好みます。
ADHDの人は常に「今を生きている人」なのです。
しかし、そのせいで長期目標に焦点を合わせられないため、「やる気のない人」という烙印を押されてしまうのです。
多動性
運動機能に深く関わっている部位が小脳です。
ADHDの人はこの小脳の一部が小さく正しく機能していないと言われています。
小脳は大脳皮質と情報をやりとりしていますが、ドーパミンが足りないとじっとしていられない、動きがトップギアに入ったまま状態になってしまったりします。
よくADHDの子どもが学校で席に座って居られないのはこのためです。
ADHD改善方法
ADHDを緩和する方法とは、ズバリ運動です!
ジョージア大学のロドニー・ディッシュマンらのグループは、運動がADHDの子どもに及ぼす影響を調べました。
男子は激しい運動をすると、じっと座ることができるなど多動性の子どもに見られる運動反射を抑制できることが示されました。
また、運動をするとドーパミンが効率よく伝達できるようになりました。
近年の研究で、ドーパミンとノルアドレナリンを増やす薬を服用すると、小脳が落ち着きを取り戻すことが分かりました。
そして何を隠そう、運動はドーパミンを増加させます。
それも動きが複雑であればあるほど増加します。
つまり、ただ走るよりも、空手、柔道、スカッシュなどなど、しっかり身体を動かしながら、頭も使うという運動が良いです。
また、運動は感情など本能的なものを司る大脳辺縁系の調整を助けます。ADHDの人に多くみられる「キレやすい傾向」を抑えることができます。
人が計画を立てたり、考えたり、欲望を抑えたりするのに重要な部位が大脳皮質です。その中でも前頭前野という部位の働きが重要になってきます。
2006年にイリノイ大学のアーサー・クレイマーが高齢者にウォーキングを6か月続けてもらい、前頭前野にどのような変化があるかを調べました。
MRIで脳を見てみると、前頭前野が大きくなっていたのです。
ワーキングメモリが改善したり、注意をスムーズに切り替えられたりする能力が向上していました。
クレイマーの研究は、運動がADHDの治療に役立つということを示唆しています。
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参考文献
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