国立薬物乱用研究所の定義によると、「依存症」とは「健康と社会的生活に悪影響をもたらすにも関わらず、断ち切ることの出来ない衝動」です。
依存症になりやすいもの、アルコール・ニコチン・カフェイン・薬物・ギャンブル・買い物・炭水化物などはすべて側坐核と呼ばれる報酬中枢を刺激し、ドーパミンを増加させます。
ドーパミンが分泌されると人は「快楽」を感じます。
しかし、アルコールやニコチンなどを摂取した人誰もが依存症になるわけではありません。
どうやら、依存症になる鍵は「快楽」よりも「突出」に原因があるようです。
ここでいう「突出」とは、日常生活において際立っていつもの、他のどの刺激よりも勝るものを意味します。
ドーパミンは僕たちの注意を喚起して、生き残るための行動をとれるようにするために分泌されます。
したがって、日常生活の中で際立って強力な刺激によってドーパミンが分泌されると脳は
と勘違いします。
依存症になると脳の構造が変化し、自分で自分の欲望をコントロールすることが出来なくなります。
そんな依存症ですが、運動によって改善できるということが様々な研究で明らかになってきました。
薬物依存症者とニューヨークシティマラソン
2016年11月に行われたニューヨークシティマラソンには、35,000人もの人が参加しました。その中には16人の薬物依存症者がいました。
彼らはこれまでの人生の大半を「おまわりから走って逃げる」ことに費やしてきた、とマラソンを走る前に冗談めかして言うような人です。
ゴールインした彼らにとってのそれまでの道のりは42.195キロどころではありません。
というもの、彼らの多くはホームレスや刑務所暮らしを経験し、困った末にニューヨークにある薬物依存症者のリハビリ施設であるオデッセイハウスに行きついたのです。
オデッセイハウスでは、人間が自分の行動をコントロールできなくなったらどうなるのか、最悪のケースを目撃することができます。
オデッセイハウスでは依存症を治療するために、運動が取り入れられています。
オデッセイハウスの理事長、ピーター・プロヴェットはこう言います。
わたしは、運動は依存症の解毒剤であるとともに、予防注射にもなり得ると強く信じています。
解毒剤としては、彼らがこれまで知らなかった人生の歩み方を教えてくれます。たとえば、運動の目的、運動する気分、運動の難しさ、喜びと苦しみ、達成感、体の健康、自己評価といったことです。
運動を通じて、今までとは違う、こんなすばらしい生き方もあるのだと、依存症者に教えてあげることができるのです。
引用:「脳を鍛えるには運動しかない!」ジョン・J・レイティ
依存症は運動で克服しよう!
2004年にロンドン大学でアルコール依存症で入院し解毒治療を終えたばかりの患者40人を対象に実験を行いました。
患者40人は中ぐらいの強度でエアロバイクをこぐグループと軽くこぐグループの2つに分け、翌日は入れ替えて同じことをしてもらいました。
その結果、強めの運動をするとアルコールへの渇望が劇的に抑えられることが明らかになりました。
ストレスが依存症と結びついているときに依存物質を止めると、身体は命の危険を感じ脳のホルモンバランスが崩れます。
依存物質を止めることで生じる不快感は数日で消えますが、脳のシステムはそれよりもずっと長く不安定な状態になります。
この不安定な時期に、さらなるストレスがかかると、
と脳は考えて、あなたに依存物質を摂取するように促します。
禁酒していても仕事で失敗したり、恋人とケンカするとまたお酒を飲んでしまうのはそのためです。
長い間、その物質に依存して脳のシステムが変化してしまっている人にとって、ストレスに対応する最も効果的で手っ取り早い手段がその依存物質を摂取することです。
ここで朗報です。
運動はそのストレスに対処するもう一つの解決策になります!
運動には、
- 依存が脳に及ぼす直接的な有害作用を軽減する
- 自己効力感アップ
といった効果があります。
ここでは、運動の効果を2つご紹介しましたが、運動にはもっとたくさんの素晴らしい効果があります。こちらの記事で詳しく説明しているので、もしよければご覧ください
運動で自己効力感をアップさせよう
自己効力感は「自分には何かを成し遂げることが出来る能力がある」という感覚です。
ほとんどの依存症者は自分には何もコントロールできないと思うようになっているので、自分をコントロールして依存症を克服することができないと思ってしまいます。
運動はそんな低い自己評価にプラスの影響を与えます。
身体を動かし、能動的に新たな目的にチャレンジし、それを達成することができれば、「自分をコントロールできている!」という自信が生まれ、それが他の生活場面へも波及していきます。
オーストラリアの研究者たちは24人の学生を対象に、2か月におよぶ運動プログラムが自己コントロールに及ぼす影響を調べました。
学生たちは2週間ごとに心理テストを受け、日々の生活を自分で記録しました。
2006年に『イギリス健康心理学ジャーナル』に掲載されたその結果は驚くべきものでした。
学生たちは知的抑制能力を測定した2つのテストの結果が向上しただけではなく、自己コントロールに関連するあらゆる行動が改善していたのです。
彼らはジムに通う回数が増え、タバコやアルコール摂取量が減り、健康的な食べ物を好むようになり、逆にジャンクフードは避けるようになりました。
また、衝動買いや予算を越える買い物は我慢できるようになり、やるべきことを先送りせず、約束事も守れるようになりました。
研究者たちは、自己コントロール能力は筋肉のように衰えもするが鍛え直すこともできる力だ、と言いました。
運動は自己コントロール能力を鍛える最良の手段なのです。
依存症を克服するためには、こんな運動が良い!
依存症を克服するために必要な運動量は依存症の深刻度によって異なりますが、依存症を完全に克服したいのであれば、最低でも週に5日、30分の強めの有酸素運動が必要です。
今まで運動する習慣がなかった人はスポーツジムに入会するのも良いと思います。多少、お金はかかりますが、その方が「お金払ってるんだから頑張らないと!」とやる気が出ます。
「お金をかけたくない!」という方は、
- 家の周りを速足で歩く
- 縄跳びをする
- ジャンピングジャック30回
などで大丈夫です。
自分が「これなら続けられる」という運動をみつけましょう!
運動をする際は心拍数を意識する
運動する際は是非、心拍数を意識してください。
目安は最大心拍数の80~90%です。「最大心拍数=208-0.7×年齢」で求められます。
例えば、40歳の人であれば、208-0.7×40=180(最大心拍数)最大心拍数の80%は144回です。
最後に
依存症ではない人の中には「依存症の人はやる気が足りないから依存症を克服できない」と考える人もいます。ある意味でそれは正しいです。
ただ、「やる気」というものは脳の信号なので、それを送る神経回路が正常に働いていないと「やる気」は出ません。
依存症者はその神経回路の構造が変化しているので、「やる気」も出ずらくなります。
運動は必ずしも「治療法」とは言えませんが、依存物質に対する渇望を減らし、神経回路の配線を繋ぎなおす最高の方法です。
どうです? 運動したくなりませんか?
この記事はジョン・J・レイティさんが書いた「脳を鍛えるには運動しかない!」を参考にしました。
この本にはしっかりとしたエビデンスを基に「これでもか!」っていうくらい運動の素晴らしい効果が記載されています。
メンタリストDaiGoさんもこの本を読んで運動をするようになったそうです。影響されやすい僕もこの本を読んで運動をするようになりました。笑
何をするのにも健康が一番。この本は一度手に取って読むべき本です。
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