- 会社や家庭でのコミュニケーションがうまくいかない人
- 交流分析について学びたい人
ベストセラーになった『嫌われる勇気』では、“人間の悩みはすべて対人関係の悩みである“と書かれています。
それほど人間関係は大半の人にとっての悩みの種なのです。
人間関係がうまくいってない場合は、人との交流パターンを見直す必要があります。
そのときに役立つのが「交流分析」です。
交流分析では、コミュニケーションを分析することで自分の問題に気づき、自分を変えることで真のコミュニケーションができることを目指しています。
交流分析は心理療法の一つですが、非常に分かりやすく実践しやすいです。
人間関係に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
人間関係がうまくいかない?なら「交流分析」で問題を見極めよう
交流分析はフロイトの「精神分析」の影響を強く受けてはいますが、精神分析ほど複雑ではなく、とても分かりやすい概念であることが特徴です。
では早速、交流分析とは何なのかから解説していきます。
【精神分析についてはこちらの記事をご覧ください】
交流分析とは?
「交流分析(英語:transactional analysis)」は、アメリカの精神科医エリック・バーンによって創始された心理療法の一つです。
「誰にでも納得のいく治療法」を目指して、難しい理論をこねくり回すのではなく、人間関係に悩みを抱えている人にとって効果のあることを目標とした実際的な心理療法です。
その効果は実際にその恩恵を受けた多くの人たちによって立証され、交流分析学派としてエリック・バーン没後も発展を続けています。
それでは、具体的に交流分析の理論を学んでいきましょう。
人は誰しも3つの「私」を持っている
人は相手や状況に応じて、態度や話し方が変わります。
たとえば、仕事場では論理的に話したり、我が子に対しては親として叱ったり、パートナーに対しては子どものように甘えたりと人は色々な自分を持っています。
僕自身も親と話すときと親しい友達と話すときとでは全然キャラが異なり、たまに家族といるときに友達から電話が掛かってくると、親に驚かれます。
交流分析では人の思考や感情、行動のパターンをひとくくりにして「自我状態」と呼んでいます。
そして人には「親的な自我状態(P)」「大人の自我状態(A)」「子どもの自我状態(C)」という3つの自我状態があります。
さらに細かく言うと、「P」は「父親的なP」と「母親的なP」、「C」は「自由なC」と「順応したC」に分けられます。
各自我状態の特徴は以下の通りです。
親的な自我状態「P(Parent)」
後輩や部下の面倒をみたり、あるいは実際に自分の子どもを世話しているときは、自分の親の行動や考え方と同じような振舞いをしていることがあります。
このような親的な自我状態を「P(Parent)」と呼びます。
親には父親的な厳しさと理想、母親的な共感と理解という2つの面があります。
父親的なPを「CP(Critical Parent)」、母親的なPを「NP(Nurturing Parent)」と言う。
人はこの2つの面からの働きかけが上手く調和したとき、生き生きとした成長と発展を遂げることができます。
しかし、CP、NPのいずれかに大きな偏りがあると上の表の灰色の部分のような望ましくない結果が生じます。
大人の自我状態「A(Adult)」
人は何かしらの問題を解決しようとするとき、自分の能力(知識、経験、決断力、体力など)をフル活用して理性的に行動します。
このような自我状態を「A(Adult)」と呼びます。
子どもの自我状態「C(Child)」
幼馴染といるときや酔ってるとき、パートナーと過ごしているときなどに子どもの時代と同じような考え方、感じ方、振舞い方をすることがあります。
このような自我状態を「C(Child)」と呼びます。
Cは自由気ままで好奇心旺盛な「FC(Free Child)」と親の期待に応えようと様々なカタチで順応しようとする「AC(Adapted Child)」に分けられます。
ACよりもFCの方に大きく偏っていると衝動的だったりわがままだったりしますし、逆にACの方に大きく偏っていると消極的で他人の目や意見を過度に気にしてしまうといった傾向があります。
これら自我状態のうちどれが主導権を握っているのか、心のエネルギーを割り振っているのかを分析し、パーソナリティの構造を明らかにすることを「構造分析」と呼びます。
自分の行動について振り返り、いま自分の自我状態がどのように働いているのかを自己分析していくが交流分析の第一歩になります。
交流パターンの種類
人と人とのコミュニケーションには、スムーズな交流「相補的交流」、行き違いの交流「交叉的交流」、裏のある交流「裏面的交流」という3つの「交流パターン」があります。
交流分析では、自分の日常生活での交流パターンを振り返ったり、普段とは違う自我状態でコミュニケーションを取ったりしてみて、どのような交流だったかを体験的に理解するという治療が行われます。
それでは、それぞれどのような交流なのかを簡単に解説していきます。
より親密な交流へと発展していく「相補的交流」
相補的交流では、自分と相手のコミュニケーションのベクトルは重ならず平行です。
たとえば、お互いの自我状態が「A」の情報交換、お互い「C」の恋愛や新婚夫婦の会話、一方が「P」で他方が「C」の相互信頼に基づく医者と患者の関係など。
相補的交流は相手の訴えを、相手の立場に立って理解して反応する交流なので、コミュニケーションはスムーズに進行していきます。
すれ違いやケンカで終わってしまう「交叉的交流」
交叉的交流では、コミュニケーションのベクトルが交叉してしまったりして嚙み合いません。
たとえば、いつまでも我が子を子ども扱いしてしまう親と次第に大人へと成長していく子どもの意見の対立、片思いなど。
交叉的交流は相手に発信した言葉に対して予想外の反応が返ってきたり、自分が相手の気持ちを裏切る反応をしてしまったりするため、コミュニケーションはすれ違いで終わります。
本音と建て前「裏面的交流」
裏面的交流では、表面上のメッセージとは別のメッセージが隠されています。
たとえば、表面「今度ご飯行きましょう!」裏面「一緒にご飯行くことはないだろうな」という社交辞令、強がりなど。
裏面的交流は日本人のコミュニケーションで多くみられ、ある意味では会話に奥行きがあると言えるかもしれません。
ただ、あまりにも裏のメッセージが多すぎると人間関係が複雑になってしまい、混乱の原因になることもあります。
まとめ
- 交流分析はアメリカの精神科医エリック・バーンが創始した心理療法。
- 交流分析はコミュニケーションを分析することで自分の問題に気づき、自分を変えることで真のコミュニケーションができるようになることを目指す。
- 交流分析では人の思考や感情、行動パターンをひとくくりにして「自我状態」と呼ぶ。
- 人は誰しも「親的な自我状態(P)」「大人の自我状態(A)」「子どもの自我状態(C)」の3つの私を持っている
- 交流パターンには「相補的交流」「交叉的交流」「裏面的交流」の3種類がある
人間関係がうまくいっていない人は交叉的交流や裏面的交流を多用している可能性があります。
そんな方は「自分は今どの自我状態なんだろう?」と分析してみましょう!
それが良好なコミュニケーションへの第一歩です。
【参考文献】
東京大学医学部心療内科TEG研究会 (2002)新版TEG解説とエゴグラム・パターン 金子書房
窪内節子・吉武光世(2003)やさしく学べる心理療法の基礎 培風館
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