あなたはテレビやニュースで女性が痴漢の被害にあったと聞いたときに、
と考えたことはありせんか?
これらの心理はラーナー(1980)が提唱した公正世界理論で説明できます。
公正世界理論とは、人は「世界は自分が住むのにふさわしく、公正な場所である」と信じたい欲求を持っているとした理論です。
この記事では、なぜ人は「良くないことをするとバチが当たる」「運は減っていくもの」と考えてしまうのか、公正世界理論・運資源ビリーフとは何なのかについて解説していきます。
運は使うと減るもの?良くないことをするとバチが当たる?を科学的に解説
いつも自己中な人が財布を落としたりすると、
と考えてしまうことありませんか?
人の行動とその後、その人に起こる出来事が無関係であったとしても、何となくそのつながりを考えてしまう推論を内在的正義の推論といいます。
カラン(2006)らは、内在的正義の推論を実験によって示しました。その実験では、
- 不倫相手との旅行を計画していた男性が旅行代理店からの帰りに事故にあった場合
- 家族との旅行を計画していた男性が事故にある場合
この2人の男性を比べると、①の不倫相手との旅行を計画していた男性の方が「事故にあったのはその人の行いが悪いせいだ」と判断されました。
また、
- 他人に対して肯定的に振舞っている人が宝くじに当たる場合
- 他人に対して否定的に振舞っている人が宝くじに当たる場合
の場合では、肯定的に振舞っていた人の方が普段の行いが宝くじ当選に影響したと判断されました。
内在的正義の推論は、「世界は公正な場所なんだ!」と信じるために、実際には全く関係のない過去の出来事を目の前の出来事と結び付けるため、生じると考えられます。
なぜ何の罪もない被害者を責めてしまうの?公正世界理論とは?
電車・バスで痴漢があったら、
などと、被害者を責めてしまうことがあります。
公正世界理論では、人は世界が公正な場所であると信じたいという欲求を持っていると仮定しています。
したがって、何の落ち度もない人が不幸に見舞われるという事態はあってはならないことになります。
世界が公正でないとするならば、いつ自分が不幸に見舞われるか分からず、自分の足場も不安定になるという訳です。
そのため、被害者の女性に何らかの落ち度を見つけて、「その女性に非があったから、不幸に見舞われたんだ。世界は公正な場所なんだ!」と信じたいのです。
面白いことに、被害者の苦痛が何らかの形で回復できる場合は、人は被害者に対して共感を示します。
これは苦痛が回復できるようなことであれば、「世界は公正な場所である」という信念にダメージを与えないからだと考えられます。
運って減るの?運資源ビリーフとは?
と考えたことありませんか?
良いこと、悪いことが最終的には同じくらいになるという考えを最終的公正信念といいます。
競馬では、最終レースで損をする人が多いそうです。
それは最終レースまで負け続けて、「こんだけ負けてるんだから最後には良いことが待ってるはずだ!」と何の根拠もない期待を込めて確率の低いオッズの高い馬にかけてしまうのではないかと考えられます。
「運を使えば使うほど減っていく資源」と考える運資源ビリーフも最終的公正信念の一種です。
運資源ビリーフを強く持っている人は、良いことがあると、そのあとでは良いことは起こらないと考えて、よりリスクの少ない選択をする傾向があります。
最後に
公正世界理論や運資源ビリーフは誰しも、身に覚えのある考えだと思います。
大人は一般的に世界が公正な場所だとは信じていませんが、何か理不尽で不公正な出来事に遭遇すると、その不公正を正そうと行動します。
つまり、その人が世界が公正な場所だとは信じていなくても、「世界が公正な場所であって欲しい」という欲求はその人の行動に影響を与えるのです。
こういった知識を知っておくと自分を客観的に捉えることができ、ギャンブルにのめり込んだり、詐欺に遭うのを防ぐことが期待できます。
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