スマホ使用が子育てに与える悪影響「テクノフェレンス」とは

子育てにおいて大切なことは、子どもにとっての安全基地になる、モデルとなる、子どもに愛情を持つなどいくつもあり、その中の一つにコミュニケーションを取ることが挙げられます。

子どもは親とのコミュニケーションの中で心身や言語能力を育んでいきます。

 

それが近年、親の過度なスマホ使用によって、子どもへの注意力が低下したり、親子のコミュニケーションが減少しています。

その結果、子どものストレスや問題行動が増えたり、言語能力などに悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。

このように、スマホなどの電子機器の使用によって、親子のコミュニケーションが阻害され、生活や発達に悪影響が生じることを「テクノフェレンス」と言います。

 

この記事では、テクノフェレンスによって具体的に子どもの発達にどういった影響が出るのか、そしてテクノフェレンスを防ぐにはどうすれば良いのかについて解説していきます。

 

スマホ使用が子育てに与える悪影響「テクノフェレンス」とは

スマホ使用が子育てに与える悪影響「テクノフェレンス」とは

テクノフェレンス」とは、子どもの養護者が過度なスマホ使用によって、交流が阻害され、悪影響が出ることです。

「テクノフェレンス」という言葉は、2015年にBrandon T McDanielさんが「technology(テクノロジー)」と「interference(干渉、妨害)」を組み合わせた造語です。

ちなみに、マクダニエルさんはアメリカのインディアナ州にある Parkview Research Centerで働く研究員で家族関係に関する調査をされてきた方です。

 

テクノフェレンスによって、具体的に子どもにどういった影響が出るのかを解説していきます。

子どもが発するサインを見逃す

テクノフェレンスの弊害1つ目は、子どもが発するサインを見逃すことです。

乳幼児と母親を対象に行われたマインドレス・フィーディング(上の空で食事を与える)に関する調査が行われました。

その結果、哺乳瓶で授乳中の母親にモバイル端末を使ってもらったところ、乳児からのサインに気づきにくく、ミルクを過剰に与えがちだと分かりました(Rebecca, et al, 2015)。

 

他にも、ファミレスで保護者の73%が食事中にスマホなどのモバイル端末を使い、子どもへの注意が低下していた、といった報告もあります。

抑うつ感、社会的引きこもり傾向、多動性などが高まる

McDanielさんは、アメリカの 170 世帯(子どもの平均年齢 3.04 歳)を対象にテクノフェレンスの影響について調査を行いました。

その結果、48.0%の親が1日に3 回以上のテクノフェレンスが発生していると回答しました。

そして、分析の結果、テクノフェレンスは親子間の交流を阻害するとともに、子どもの抑うつや社会的引きこもり、攻撃、癇癪、多動性といった問題行動への関連が示されました。

語彙の獲得や言葉の発達に悪影響

子どもは1歳前後から6歳頃にかけて、語彙が劇的に増えて、文法の使用もできるようになっていきます。

語彙の獲得は2歳になる少し前から活発となり、2歳半で約450語、3歳代で約900語、4歳代で約1500語以上の言葉を使用するようになります。

語彙が劇的に増えるこの時期を「語彙爆発期」と呼びます。

 

この時期のテクノフェレンスは、子どもの語彙の獲得や言葉の発達に悪影響を及ぼします。

2歳児とその母親を対象に行った実験を行いました。

 

その実験では、母親が「子どもに新しい単語を2つ教えて覚えさせる」という課題に取り組んでもらい、教えている最中に電話に出るため中断する場合としない場合で比較しました。

すると、課題の途中で中断した場合は、中断なく続けた場合よりも単語の覚えが悪かったのです。

子どもがスマホ依存になりやすくなる

親のスマホ依存によって、テクノフェレンスが生じると、その子どもが親になった際に同じことを繰り返す可能性が高まります。

というのも、親がスマホ依存だと、その子どもも青年期になったときに依存しやすくなることが明らかになっています(Jian Gong, et al, 2022)。

 

テクノフェレンスを防ぐ方法

テクノフェレンスを防ぐ方法

ここまで親のスマホ依存によって生じる、テクノフェレンスが子どもに及ぼす影響について説明してきました。

この章では、テクノフェレンスを防ぐ方法をご紹介します。

すぐ実践できるスマホ依存対策

ここではすぐに誰でも実践できるスマホ依存対策をご紹介します。

大切なことはスマホの使用時間を制限し、自分でコントロールできるようになることです。

それには、以下のような方法があります。

  1. スマホの使用時間をスクリーンタイムで把握する
  2. プッシュ通知を「オフ」にする
  3. スマホを目のつかないところに置く
  4. 起床時は目覚まし時計を使う
  5. ベッドに入る前のスマホ使用を止める
  6. SNSを使用する目的をハッキリさせる
  7. 1日のスケジュールを明確にする
  8. アプリを整理する
  9. スマホ画面を「モノクロ」にする

 

スマホ使用が子育てにもたらす影響について学ぶ

この記事では、スマホ使用による子育てへの悪影響について説明してきましたが、スマホが悪いと言っている訳ではありません。

スマホは誰でもあらゆる情報にアクセスすることを可能にしたり、コロナ禍で直接会えない人の顔を見ながら会話ができたりと、とても便利なツールです。

 

しかし、何事にもメリット・デメリットがあり、スマホも使い方を誤ったり、使いすぎると問題が生じます。

近年では、小学校高学年頃からスマホを持たせることも増えてきています。

 

スマホが普及し始めてからまだ間もないので、家族関係や人体などにどういった影響が出るのか、まだ未知な部分も多いです。

そのため、小さな子どもにスマホを持たせるとき、子どもたちの前でスマホを使うときのために、スマホ使用について考える必要があると思われます。

まとめ

・「テクノフェレンス」とは、子どもの親が過度なスマホ使用によって、親子間の交流が阻害され、悪影響が出ること。

・テクノフェレンスによって以下のような悪影響が出る。

  1. 子どもが発するサインを見逃す
  2. 抑うつ感、社会的引きこもり傾向、多動性などが高まる
  3. 語彙の獲得や言葉の発達に悪影響
  4. 子どもがスマホ依存になりやすくなる

・テクノフェレンスを防ぐ方法としては、自身のスマホ使用時間を把握し、制限すること、スマホが子育てにもたらす影響を理解することが大切。

 

 

【参考文献】

Jian Gong, Yue Zhou, Yang Wang, Zhen Liang, Yanni Wang(2022)How parental smartphone addiction affects adolescent smartphone addiction: The effect of the parent-child relationship and parental bonding Journal of Affective Disorders Volume 307, 15 June 2022, Pages 271-277

Rebecca B. Golen, Alison K. Ventura(2015)Mindless feeding: Is maternal distraction during bottle-feeding associated with overfeeding ? Appetite Volume 91, 1 August 2015, Pages 385-392


 

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。