【交通心理学】なぜ高齢者ドライバーの事故は起きるのか?

 

2019年4月、東京の池袋で当時87歳の男性が運転する車が暴走して母子2人の尊い命を奪ってしまった。

この事件をきっかけに「高齢者はいつ車の免許証を返納するべきか」というのが少し話題になりましたね。

 

高齢者ドライバーによる事故は主にペダルの踏み間違いが原因です。

年間に40~50万件ほど発生する交通事故のうち、ペダルの踏み間違いによる事故が占める割合は1%前後ですが、その割合は年々上がってきています。

 

特に75歳以上の方による事故が増加しているようです。

2025年には日本を支えてくれた団塊の世代の方々が75歳を迎えます。

そうなると、必然的に高齢者ドライバーの事故も増えてきます。

 

そこでこの記事では交通心理学の観点から、なぜ高齢者ドライバーの事故は起きるのかをご説明します。

 

 

なぜ高齢者ドライバーの事故は起きるのか

交通心理学を専門とする大阪大学の篠原一光教授らによるチームが2015~2017年にかけて、高齢者のペダルの踏み間違いに焦点を当てた調査を実施しました。

その結果、高齢者は操作を間違えた後で次の対応を行うまでの時間が、若者に比べて大幅に遅れる傾向があるということが明らかになりました。

 

 

チームは若者50人(平均年齢21.6歳)と高齢者50人(平均年齢71.6歳)を対象に認知機能を確認する調査を実施しました。

 

調査ではモニターに映し出される「赤」「黒」「青」のどれかを表示し、

  1. 「漢字の文字の色」と「意味」が一致していたら、右のボタンを押す
  2. 「漢字の文字の色」と「意味」が不一致なら、ボタンを押さない

とルールを決めて、反応までにかかる時間を測定しました。

例えば、「」が表示されたら右ボタンを押し、「」なら押さないというルールです。

 

また、誤ってボタンを押してしまった場合にはブザーがなり、出来るだけ早く日左のボタンを押すというルールにしました。

 

その結果、最初のボタンを押すまでの反応時間は若者で平均0.55~0.6秒、高齢者が平均0.65~0.7秒とそんなに大差ありませんでした。

 

しかし、最初のボタン操作で間違ってブザーが鳴った後に、左ボタンを押すまでの反応時間は若者で平均0.9秒だったのに対し、高齢者が平均1.4~2.0秒と大きな差がありました。

 

つまり、ブレーキを踏むつもりが誤ってアクセルを踏んでしまった場合、若者ならすぐにアクセルから足を離すことができますが、高齢者だと反応まで時間がかかってしまい、その間もアクセルを踏み続けてしまうことで重大な事故につながってしまうのではないかと考えられます。

 

結晶性知能と流動性知能

一般的に高齢になると、「知能がどんどん低下していく」と思われています。

もちろん、低下していく能力もありますが、実は晩年まで保たれる能力もあります。

 

心理学者のホーンとキャッテルは知能の様々な能力から、知能を「結晶性知能」と「流動性知能」の2つに分けました。

結晶性知能

言葉の意味理解や運用能力、一般常識などの能力のことです。学校での学習や日常生活での経験などを通して学んだこと

 

流動性知能

推論に代表される情報処理能力のことで、いわゆる頭の回転の速さ、思考の柔軟さ

 

年齢ごとの知能を測定する方法としてよく用いられるのが、横断法です。

横断法とは、2019年現在の20代、30代、40代…と集めて知能検査を実施する方法です。その方法で測定すると、20代、30代で知能はピークを迎えていました。

 

しかし、横断法には問題があります。

 

というのも、各年齢群はそれぞれ異なった時代を生きてきたので、それぞれの時代の社会、環境の影響を受けている可能性があるのです。

 

例えば、戦後で栄養が不足していた頃は、脳にも少なからず影響があったでしょうし、またはインターネットが普及する前から生きていた人と後に生まれた人でも違いが出る可能性があります。

 

正確な年齢による変化を測定するには、その人が30代のとき、40代のときなどと追跡調査する必要があります。

そういった調査も組み合わせて測定したところ、加齢による知能低下の曲線は意外と緩やかでした。

 

流動性知能こそ50代頃から低下が見られましたが、結晶性知能は60代頃にピークを迎え、80代前半頃まで緩やかに低下していくということが示されました。

 

マインドパレッサー
言葉の意味理解などの能力が60代頃にピークを迎えるというのは驚きですよね。ただ、車の運転に必要な情報処理の能力は50代頃から低下していくんですね。

 

高齢者による事故を防ぐには

日常生活では何か間違った行動をとっても、少し時間をかけて修正すれば問題ないですが、車の運転中はそうもいきません。

少しの対応の遅れが重大な事故につながります。

 

交通心理学を専門とする篠原教授は

高齢になると、気づかないうちに認知機能などが低下している可能性があります。そのことを自覚して、以前よりも速度を落とすなど余裕をもって動作を行うことが、事故防止につながるでしょう

Newton 2019年9月号より

と述べています。

 

公共交通機関が整備されている都会では、車の免許を返納してもそこまで支障ないと思います。

 

ただ、田舎の方は電車はないしバスも1時間に1本とかだし、近くのスーパーやコンビニも離れているので移動には車が必要です。

そうなると、もろに車の免許の返納は生活に支障をきたします。

 

しかし、人の命がかかっていることなので、いつまでも免許を返納しないわけにはいきません。

本人は「自分はまだ大丈夫!」と思いがちなので、周りの人が「もう危ないな」と感じたら、免許の返納を切り出す必要があります。

 

移動が必要なときは家族の方が乗せていくのがベストですが、離れて暮らしている場合も多いと思うので、今後はより地域の住民との助けあいが大切になってくると思います。

 

最近は地域の住民との関係が希薄になってきていると言われていますが、高齢社会を迎えるにあたって、地域住民との交流は認知症の予防という意味でも非常に重要になってくるでしょう。

 

あわせて読みたい

老化による物忘れと認知症の違い!認知症の種類と症状を徹底解説

【口内環境の科学】認知症の原因物質は歯周病によって増えてしまう!?

人はどうやって成長していくのか?エリクソンの発達段階理論を解説

参考文献

Newton 2019年9月号

 

▼このブログを応援する▼

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です