

こうした経験に心当たりはありませんか?
このような感情は「シャーデンフロイデ」と呼ばれ、心理学でも研究されているテーマです。
「そんな気持ちを持つなんて、自分は性格が悪いのでは?」と不安になる人もいるかもしれません。
しかし、シャーデンフロイデ自体は多くの人が経験しうる自然な感情反応のひとつです。
この記事では、シャーデンフロイデの意味、なぜ起こるのか、感じやすい人の特徴、そして感情との上手な向き合い方をわかりやすく解説します。
【この記事の要点】
- シャーデンフロイデとは「他人の不幸を喜ぶ感情」を意味するドイツ語。
- 珍しい感情ではなく、多くの人が状況によって経験しうる。
- 背景には社会的比較、嫉妬、自己評価の防衛などがある。
- 感情そのものより、その後どう向き合うかが大切。
シャーデンフロイデの意味とは?
シャーデンフロイデ(Schadenfreude)はドイツ語で、「損害・不幸」を意味する”Schaden”と「喜び」を意味する”Freude”を組み合わせた言葉です。
日本語では、「他人の不幸や失敗を見聞きしたときに生じる喜びの感情」を指します。
英語圏でもこの概念に対応する単語がなく、ドイツ語のまま”Schadenfreude”として使われています。それほど、言語を超えて多くの人に共通する感情だといえます。
シャーデンフロイデはどんなときに起こりやすい?
シャーデンフロイデは、特に以下のような場面で生じやすいとされています。
- 競争相手が失敗したとき → 自分の優位性を感じやすい。
- 嫉妬していた相手にトラブルが起きたとき → 「バランスが取れた」と感じやすい。
- 自分と同じ失敗をした人を見たとき → 「自分だけではなかった」と安心しやすい。
- 相手の不幸がそこまで深刻でないとき → 罪悪感を感じにくく、喜びが表面化しやすい。
身近な例としては、SNSで有名人のスキャンダルを見て「ざまあみろ」と感じたり、成績優秀なクラスメートがテストで失敗して少しホッとしたりするケースが挙げられます。
シャーデンフロイデはなぜ起こる?4つの原因
では、なぜ人はシャーデンフロイデを感じるのでしょうか。
主に以下の4つの心理的背景があると考えられています。
1. 社会的比較によって自分を守ろうとするため
人には、他人と自分を比較しながら自分の位置や価値を確かめる傾向があります。これは心理学で「社会的比較理論」と呼ばれるものです。
比較対象の相手が失敗すると、自分の立場が相対的によく見えるため、一時的な安心感や優越感が生まれることがあります。
2. 自己評価を保ちたいという防衛反応
自分に自信が持てないとき、他人の失敗は「自分だけがダメなわけではない」という安心材料になりやすくなります。
これは自尊心を守ろうとする心の防衛反応のひとつと考えられます。自己肯定感が低い人ほど、この反応が起きやすい傾向があります。
3. 嫉妬や競争意識が刺激されるため
普段から相手を羨ましいと感じていたり、ライバル視していたりすると、その相手に不運が訪れたとき、「バランスが取れた」ように感じやすくなります。
嫉妬の感情は、シャーデンフロイデと最も強く結びつく要因のひとつだと指摘する研究もあります。
4. 共感と心理的距離のバランスが影響するため
相手の不幸が深刻すぎる場合、多くの人は同情や悲しみを感じます。
しかし、相手の失敗が軽いものであったり、自分との関係性が遠かったりすると、罪悪感が薄れ、シャーデンフロイデが表面化しやすくなります。
つまり、シャーデンフロイデは単純な悪意ではなく、共感能力と心理的距離の微妙なバランスの上に生じる複雑な感情だといえます。
シャーデンフロイデを感じやすい人の特徴
シャーデンフロイデは誰にでも起こりうる感情ですが、次のような傾向がある人はより感じやすいとされています。
自己肯定感が低い人
自分に自信が持てない人は、他人の失敗を見たときに相対的な安心感を得やすくなります。
「あの人もうまくいかないんだ」という認知が、一時的に自分の不安を和らげるからです。
競争心が強い人
他人との比較を重視し、自分が上位に立つことに価値を感じやすい人は、競争相手の失敗を自分の優位性として受け取りやすくなります。
嫉妬心が強い人
羨ましいと感じている相手に不幸が起こると、「やっと公平になった」と感じやすくなります。
嫉妬の対象が身近であるほど、この傾向は強くなります。
ストレスがたまっている人
心に余裕がないと、他人への寛容さが下がります。
その結果、普段なら気にしないような他人の失敗に対しても、ネガティブな比較感情が生まれやすくなります。
シャーデンフロイデを感じることは悪いこと?
結論から言うと、シャーデンフロイデを感じること自体は、異常でも、性格が悪い証拠でもありません。
シャーデンフロイデは人間の感情のひとつであり、社会的比較や自己防衛の心理と深く結びついています。
感じてしまうことそのものをコントロールするのは難しく、自分を責める必要はありません。
ただし、注意が必要なのは以下のような場合です。
- シャーデンフロイデをきっかけに他人を攻撃したり、陥れようとしたりする行動につながる場合
- 他人の不幸を積極的に望む、探すようになっている場合
- その感情への罪悪感が強すぎて、日常生活に支障が出ている場合
大切なのは、感情の有無そのものではなく、その感情が生まれたあとにどう行動するかです。
シャーデンフロイデを感じたときの5つの対処法
シャーデンフロイデを感じた自分に気づいたとき、以下の方法が役に立ちます。
1. 「そんな感情もある」とまず認める
感情を無理に否定したり、「こんなことを思ってはいけない」と抑え込んだりすると、かえってストレスが増します。
まずは「そういう気持ちが出てきたんだな」と、感情の存在をそのまま認めましょう。
2. なぜその相手に反応したのか振り返る
シャーデンフロイデの裏には、嫉妬、劣等感、競争意識、疲れなど、別の感情が隠れていることがあります。
「なぜこの人の不幸に反応したのだろう?」と考えることで、自己理解が深まります。
3. 他人との比較を意識的に減らす
SNSや職場など、他人と自分を比較しやすい環境は、シャーデンフロイデの温床になりやすいです。
意識的にそうした情報から距離を置く時間をつくるのも有効です。
4. 自己肯定感を育てる
他人の失敗で安心するのではなく、自分の成長や価値を自分で認められるようになると、シャーデンフロイデは自然と弱まりやすくなります。
小さな達成を日記に書く、自分を褒める習慣をつけるなど、日常のなかでできることから始めてみましょう。
5. つらいときは専門家に相談する
罪悪感が強い場合や、他人の不幸を望む気持ちが止められず人間関係に影響している場合は、カウンセラーなどの専門家に相談するのもひとつの方法です。
自分の感情と安全に向き合える環境をつくることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. シャーデンフロイデを感じる自分は性格が悪いですか?
いいえ、シャーデンフロイデは多くの人が経験しうる自然な感情反応です。
感じること自体が性格の良し悪しを決めるわけではありません。ただし、その感情をきっかけに他人を傷つける行動をとる場合は注意が必要です。
Q. シャーデンフロイデは病気ですか?
一般的に、シャーデンフロイデは病気や障害そのものではなく、人間に広く見られる感情のひとつと考えられています。
ただし、強い攻撃性や対人トラブルが頻繁に生じている場合は、専門家に相談すると安心です。
Q. シャーデンフロイデを減らすにはどうすればいいですか?
他人との比較を減らし、自己肯定感を高めることが有効です。
また、感情の背景にある嫉妬や不安に気づき、自分を責めずに受け止めることが大切です。
Q. シャーデンフロイデと「いじめ」は関係がありますか?
シャーデンフロイデそのものは感情ですが、それが行動に変わると、他人を意図的に傷つける行為につながる可能性はあります。
感情と行動を分けて考えることが重要です。
Q. 子どももシャーデンフロイデを感じますか?
はい、研究によると、幼児期からシャーデンフロイデに似た反応が観察されることがあります。
これは発達段階における自然な感情反応の一部と考えられています。
まとめ
シャーデンフロイデとは、他人の不幸や失敗に対して生まれる喜びの感情です。
この感情の背景には、他人との比較、自尊心を守る心理、嫉妬や競争意識などが関係していると考えられています。
シャーデンフロイデを感じること自体は珍しいことではなく、自分を責める必要はありません。
ただし、大切なのはその感情に気づいたあとの行動です。感情に振り回されず、背景にある気持ちを理解しようとすることが、より良い人間関係と自己理解につながります。
もしシャーデンフロイデに対する罪悪感が強く、日常に影響が出ている場合は、カウンセリングなどで専門家に相談してみることも選択肢のひとつです。
自分の感情を否定せず、上手に付き合っていくこと。
それが、シャーデンフロイデとの健全な向き合い方です。
【参考文献】
Takahashi, H. et al. (2009). “When Your Gain Is My Pain and Your Pain Is My Gain: Neural Correlates of Envy and Schadenfreude.” Science, 323(5916), 937-939.
中野信子(2018)『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』幻冬舎新書
【あわせて読みたい】



















