家族のはじまりから終わりまで。家族ライフサイクル論とは

 

家族心理学において、「家族」は個人と同様に“発達していくもの”として捉えます。

 

つまり、「家族」にも発達のステージがあり、各ステージにはそれぞれ達成すべき課題があると考えます。

 

それぞれの発達課題を達成できないと、のちのち家族内の不和・葛藤のタネにもなりかねません。

 

この記事では、結婚による家族の誕生から終わりまでを一生と捉える「家族ライフサイクル論」をご紹介します。

なお、現代は家族のかたちも多様化しており、一緒に住んでいてもあえて結婚しない家族、同性カップルの家族、離婚や再婚を経験する家族など、様々です。

ここでは、結婚後にしばらくして子どもをもつ決意をした家族についてご説明します。

 

 

家族のはじまりから終わりまで。家族ライフサイクル論とは

家族のはじまりはまず、自分が生まれ育った家族からの巣立ちです。

そして、「この人と生きていきたい」というパートナーを見つけ、2人の結婚のイメージをすり合わせていきます。

結婚後、2人の時間を十分に楽しんだら子どもを持つことを検討し始めます。

子どもが生まれるとそれまでの生活が一変し、色々なことを経験します。

たくさんの葛藤や問題を乗り越えながら、子どもは次第に成長していき、自立します。

自分は老いと向き合いながら、両親の介護や死を対処していく。

 

家族ライフサイクル論では、7つのステージに分かれます。

それぞれのステージの特徴や課題について説明していきます。

 

家からの巣立ち

このステージでは源家族(自分が生まれ育った家族)から精神的・経済的に自立し、親との適切な距離を置いて親離れを果たします。

現代は高学歴化、生き方の多様化に伴って、源家族から自立する時期が長くなる傾向にあります。

 

結婚による両家族の結合

恋愛関係にある男女が結婚という人生の一大イベントに踏み切るには、おのおのが築き上げてきた「結婚に対するイメージ」をすり合わせていかなければなりません。

しかし、生まれ育った環境が異なる2人にとって、イメージを照合するのは大変な作業です。

うまく照合できないと、葛藤・離婚などの不和に至る可能性もあります。

また、結婚すると、それぞれの実家との関係を再編成し、適切な距離を保つようにします。

 

子どもの出生から末っ子の小学校入学までの時期

養育は精神的にも、経済的にも負担がかかります。

そして、どちらが働き、どちらが育てるのかといった役割分担を考える必要が出てきます。

また、養育する過程で自分中心から他者を中心に据えて、他者の感情や必要性に応じて自分が行動をするようになります。

 

親に最も必要な資質についてはこちらの記事をご覧ください

 

子どもが小学校に通う時期

子どもが小学校に通うようになると、子どもの世界が一気に広がります。

それまでの一方的なコミュニケーションから双方向のコミュニケーションに変わり、親としての役割も変化していきます。

親としては多少、手がかからなって楽になるというのもありますが、子どもの人間関係が外に広がっていくことに不安や寂しさを感じることもあります。

 

思春期・青年期の子どもがいる時期

青年期は個人のライフサイクルにおける最大の動揺期なので、親子関係にも大きな変化が訪れます。

そのため、子どもとの適切な距離を保ちつつ、子どもが困っているときには寄り添うといった柔軟さが求められます。

 

子どもの巣立ちとそれに続く時期

子どもが精神的・経済的に自立すると親は子離れをしなければいけません。

また、自分は老いていく親の介護や死を受け入れて対処していきます。

このステージは子どもにとっての家族ライフサイクルのはじまりです。

 

老年期の家族の時期

子どもは家族を形成し、子どもを持つようになります。

自分たちは祖父母として養育をサポートし、自分たちが培ってきた知識や経験を次の世代に伝えていきます。

そして、友人や配偶者、自分の死を受け入れていきます。

 

個人と家族にふりかかる垂直的ストレス・水平的ストレス

多世代家族療法家のカーターとマクゴールドリック(Carter & McGoldrick)は「個人と家族にふりかかるストレスの流れ図」を提唱しました。

これは家族とその中で生きる個人にふりかかるストレスを家族や個人の中にあるものから、個人・家族が置かれた社会・文化の影響までを複雑に絡み合った要因として捉えています。

影響はプラスのものもあれば、マイナスのものもあります。

ちょっと見ずらいんですが、こんな感じです。

矢印の方向へ行くにつれて時間が経過していく、ということを表しています。

 

水平的ストレスは時間の経過に伴って、経験するストレスで

  1. ライフサイクルの移行に伴う変化
  2. 不慮の事故・死
  3. 慢性疾患
  4. 失職
  5. 破産
  6. 戦争
  7. 自然災害

などがあります。

 

一方の垂直的ストレスは遺伝的要因や知的・身体的能力などの個人の資質に関するものから、自分が属する社会や文化など、大小さまざまなものから受けるストレスで

  1. 人種や性別への差別
  2. 社会的偏見・貧困
  3. 過重労働
  4. 家庭内暴力
  5. 遺伝的な障害

などです。

 

垂直的ストレスと水平的ストレスの両方が高ければ、その個人や家族が不適応に陥る可能性が高くなりますし、両方が低ければ健康を保ちやすいと考えられます。

 

最後に

この記事では家族のライフサイクルと個人・家族を待ち受けるストレスについてご説明しました。

これから家族を築く方は将来乗り越えていかなければならない課題・困難を事前に知っておくことで、それらに対する準備ができたり、対処がスムーズにいくと思います。

そういった意味でこの記事がお役に立てれば幸いです。

 

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参考文献

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。