日本のコロナ流行を低く抑えている未知の要因「ファクターX」とは?

アメリカやヨーロッパ、ブラジルなどの国と比べると、日本のコロナ感染者数や死亡率は低い水準で推移しています。

ノーベル医学・生理学賞を受賞した山中 伸弥教授は、日本における新型コロナウイルスの流行を低く抑えている未知の要因を「ファクターX」と呼びました。

この記事では、ファクターXに関する仮説をご紹介します。

 

日本のコロナ流行を低く抑えている未知の要因「ファクターX」とは?

日本におけるコロナ感染者・死亡率を低く抑えている要因は一つではなく、さまざまな要因が関与していると考えられます。

それでは、未知の要因「ファクターX」について可能性のある仮説を検討していきます。

医療へのアクセスの良さと質

一つ目の要因は、日本の「医療へのアクセスの良さと質」です。

まず、医療へのアクセスの良さに関してですが、日本はイギリスやドイツと同じく、医療保障の人口カバー率は100%で皆保険状態にあります。

次に、医療の質に関してです。

2018年5月、世界の5大医学誌の1つであるランセット(Lancet)に「ヘルスケア・アクセス・アンド・クオリティー・インデックス(Healthcare Access and Quality Index :HAQインデックス)」の世界195か国ランキング(2016年版)が掲載されました。

HAQインデックスとは、適切な医療を受ければ予防や効果的な治療が可能と考えられる死因を32種類(感染症やガン、循環器疾患など)リストアップし、それぞれの疾患について「防ぎ得る死をどれぐらいちゃんと防げているか?」を調べ、総合的に評価・指数化したものです。

日本は世界195か国中12位でした。

【参考】

ニッセイ基礎研究所「日本の医療を外国と比べられる数字の情報はないの?」

市民の衛生意識の高さ

二つ目の要因は、「市民の衛生意識の高さ」です。

子どもの頃から手洗いやうがいなどの感染症予防の習慣を保護者や先生から教えられ、上下水道がしっかり整備されている環境下で、多くの人が実践しています。

自分自身の疾病予防だけでなく、咳やくしゃみで周囲に迷惑をかけないようにほとんどの人がマスクを装着しています。

そうした公衆衛生に対する意識の高さが、症状が出ていない感染者から健常者に感染させる機会を減らしていると考えられます。

交差免疫仮説

三つ目の要因は、「交差免疫」です。

新型コロナウイルスは7種類ある「コロナウイルス」の一つですが、別の4種類のコロナウイルスは普通の風邪の原因になります。

日本を含むアジア圏では、過去にも別種のコロナウイルスに感染した経験のある人が多いと言われています。

もし、風邪をひいて生じた免疫が新型コロナウイルスに対してもある程度有効ならば、日本やアジア圏での流行が低水準である理由を説明できるという説が「交差免疫仮説」です。

BCG仮説

四つ目の要因は、「BCG」です。

BCGは子どもの結核予防で接種するワクチンで、日本では1949年から接種が法制化されています。二の腕に痕が残るアレですね。

僕はBCGを接種したとき、「絶対引っ掻いたらダメだよ!」と言われたのに掻いてしまい、今でもハッキリと痕が残っています。笑

BCG接種を行っている国ほど、新型コロナウイルス患者や死亡者が少なくみえることから「BCG仮説」が提唱されました。

 

ただ、高齢者へのBCG接種実験(Evangelos J et al, 2020)では、新型コロナの発症を予防効果やウイルス性気道感染症に罹りずらくなったと報告されているので、「ファクターX」として十分考えられます。

コロナ感染で生じる「血栓」が危ない!寒い冬は要注意!

Image by Pexels from Pixabay

新型コロナウイルスの重症患者に「血栓症」が多発していることが、厚生労働省などの研究チームによって明らかになりました。

血の塊である「血栓」が、臓器などの血管を詰まらせてしまう病気が「血栓症」です。

 

心臓の筋肉に酸素と栄養をおくる冠動脈が血栓で詰まり、心臓のポンプ機能が損なわれると「心筋梗塞」、脳に血液をおくる血管が血栓で詰まり、脳が壊死してしまうと「脳梗塞」です。

ニューヨークの4つの病院に入院したコロナ患者の8.9%が心筋梗塞を発症し、1.6%が脳梗塞を発症したと報告されています(Seda et al, 2020)。

 

心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症による死亡は、以下のような理由から寒い冬に多くなることが知られています。

  1. 気温が低くなると血管が収縮するため、血栓が詰まりやすくなる
  2. 冬の乾燥によって体内の水分が失われやすくなり、血液の循環が悪くなる

また、コロナの影響で多くなった「テレワーク」も血栓症の発症を助長しています。長時間座ったままでいると足などの血流が滞るため、血栓ができやすくなるのです。

最後に

日本のコロナ流行は世界的に見ると低水準ですが、3月~5月に第一波、6月頃に第二波、そして10月頃から第三波に突入しています。

これから、クリスマスや年末年始のイベントを控えていますが、ドイツのメルケル首相が声高に言っていたように、大切な人と過ごす最後の年にしないためにも今年は家族や親せきで集まるのを自粛した方が良さそうですね。

 

【参考文献】

科学雑誌「Newton」コロナはなぜ冬こそ危険か。コロナ時代の心理学

Evangelos J. Giamarellos-Bourboulis,Maria Tsilika, Simone Moorlag,George Renieris, Antonios Papadopoulos, Mihai G. Netea(2020)Activate: Randomized Clinical Trial of BCG Vaccination against Infection in the Elderly  CELL volume183 Issue2 P315-323.E9

Seda Bilaloglu,  Yin Aphinyanaphongs, Simon Jones(2020)Thrombosis in Hospitalized Patients With COVID-19 in a New York City Health System JAMA 324(8):799-801

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。