などと考えて苦痛を感じてしまう人は、凝り固まっていて歪んだ考え方になりやすい、と認知療法では考えます。
- 考えすぎてしまう人
- 気にし過ぎてしまう人
- マイナスな捉え方ばかりしてしまう人 etc…
こういった人は怒りや不安などのネガティブな感情を抱えやすく、落ち込みやすい傾向があります。
このような苦しみを抱える人たちの凝り固まった思考を緩め、歪みを正していくのが認知療法です。
この記事では、認知療法の特徴や認知療法が向いている人、進め方を紹介します。
認知の歪みを正す「認知療法」とは?あなたの認知は歪んでいるかも
認知療法(英語:cognitive therapy)は、1960年代にアメリカの精神科医であるアーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)によって開発されました。
人は成長するにつれて固定的な信念が形成されていき、その信念に基づいて自然に頭に浮かぶ自動思考が生まれます。
精神疾患を抱えている人は極端で歪んだ信念が形成されていることが多く、自動思考も歪んでしまいます。
例えば、“自分は仕事ができない”という信念を持っている人は、上司に仕事頼まれると
と考えてしまう傾向がある、などですね。
そうした認知の歪みに焦点を当て、認知の歪みを修正することで症状が改善されるとする心理療法です。
苦しみの根本には「情報処理の間違い」がある!?
マイナスな捉え方ばかりしてしまう人は思考が硬直化していて、物事を多面的に考えることができなくなっています。
言い換えると、自分の考えに執着し、身動きが取れなくなってしまい、結果的に精神的な苦しみをたった一人で抱え込んでしまうのです。
この状態に陥る背景にあるのが、「情報処理の間違い」です。
情報処理の間違いには、以下のようなものがあります。
- 白黒思考
- 結論の飛躍
- レッテル貼り
白黒思考
白か黒か、0か100かなどと、ひとつの物事を極端な二者択一で捉える思考です。
- 完璧にできないならやらない
- 成功か失敗、それ以外にはない
- 一回失敗したから、もうやらない
結論の飛躍
不確実な情報から無理やり結論を導き出す思考です。
- あの人に無視された...嫌われたに違いない
- 今の時代、パソコンができないと生きていけない
- 今悪いことが起こってるから、きっとこれからも悪いことばかり起こるだろうな
レッテル貼り
自分にネガティブなレッテルを貼ってしまう思考です。
- どうせ自分なんて...
- もう生きてる価値がない
- みんなから変なやつだと思われてる
このような情報処理の間違いで苦しんでいる人に対して、「物事には必ず2つ以上の見方がある」「物事の見方は自分次第である」ということを伝えていきます。
思考階層構造モデルとは?
認知療法では、人間の認知の過程を以下の3つの段階で捉えています。
- 中核信念(スキーマ)
- 媒介信念
- 自動思考
中核信念(スキーマ)
中核信念とは、人が成長していく中で気づかぬうちに形成されていく自分・他人・周りの世界についての概念です。
たとえば、幼い頃から「頭が悪い」と親から言われてきた人は「自分は頭が悪い」と思い込んで成長します。
媒介信念
媒介信念とは、自分では気づいていない中核信念をもう一歩踏み込んだ捉え方です。
“自分は頭が悪い”という中核信念を持っている人が、「頭が悪いなんて最低だ。」「周りの人に迷惑をかけてしまう。」と捉えてしまいがちです。
自動思考
自動思考は、中核信念・媒介信念を経て自然に出てくる考え方です。
“自分は頭が悪い”という中核信念、「頭が悪いなんて最低だ」「自分は周りに迷惑をかけてしまう」という媒介信念を経て、何か他人に頼み事をされても
と自然にネガティブな考えが浮かんできてしまいます。
認知療法では自動思考を経て、負の感情が生まれてくると考えます。
認知療法が向いている人、向いてない人
認知療法は開発当初、うつ病治療に用いられていましたが、最近は
- 薬物依存症
- 強迫性障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 人間関係のトラブル
などの治療にも、用いられています。
認知療法は問題解決思考が強く、他の心理療法に比べると比較的短期間でカウンセリングが終了するため、
- 経済的な不安を抱えているクライエント
- 苦しい状況を短期間で何とかしたいと考えているクライエント
には向いています。
しかし、
- 重篤な精神疾患症状があるクライエント
- 問題を解決したい!という意欲が低いクライエント
などのクライエントには、導入が難しいです。
認知療法の進め方
認知療法を実施する中で、カウンセラーはクライエントの自動思考に注目します。
クライエントがネガティブな自動思考に苦しんでいる場合は、クライエントの思考は「事実」ではなく、一つの見方に過ぎないということを伝えていきます。
そのときに用いられるアプローチを2つご紹介します。
- 利益と不利益を考える
- 証拠の重みを図る
利益と不利益を考える
「利益と不利益を考える」アプローチは、クライエントの考え方の不利益部分がハッキリすることで、クライエントの問題解決意欲が高まり、自分を苦しめている考えや行動の問題が良く見えるようになります。
といった感じに、問題の悪影響をより客観的に理解することでできるようになります。
証拠の重みを図る
「証拠の重みを図る」アプローチでは、クライエントの思考、偏った信念が本当に現実的なものなのかを検討していくことで、クライエントに思考の間違いに気付かせることができます。
と実は根拠がなかった自分の考えに、ずっと苦しめられていることに気が付いて苦痛が和らぎます。
まとめ
人は何かの出来事によって、苦しむ訳ではありません。
その出来事に対する偏った思考、歪んだ認知が人を苦しめるのです。
仕事で何かのトラブルが起こったとき、
とネガティブに捉える人もいれば、ポジティブに捉える人もいる。
物事にはいくつもの捉え方がありますが、問題を抱えやすい人はその捉え方がネガティブな方へ偏りがちです。
まずは自分の自動思考をキャッチして、認知の歪みを正していきましょう。
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キャリカレ 上級心理カウンセラー資格取得講座「認知療法・認知行動療法」
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