「双極性障害(英語:Bipolar disorder)」とは、万能感に満たされて活動が活発になる「躁(そう)状態」と、気分が落ち込み活動が抑制される「うつ状態」が一定の間隔をおいて繰り返される精神疾患です。
もともと双極性障害は「躁うつ病」と呼ばれていました。
「うつ病」とつきますが、「うつ病(単極性うつ病)」とは似て非なる精神疾患です。
治療に用いられる薬も異なり、うつ病の治療には「抗うつ薬」が使用されますが、双極性障害には「気分安定薬」や「抗精神病薬」が用いられます。
双極性障害なのに抗うつ薬を使用すると、症状が悪化してしまうこともあります。
そのため、双極性障害の特徴や症状をしっかり理解しておくことが大切です。
双極性障害「Ⅰ型」「Ⅱ型」の特徴や症状を分かりやすく解説
精神疾患の国際的な診断基準である「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」の第4版までは、うつ病と双極性障害は同じ「気分障害」に分類されていました。
しかし、DSMの第5版であるDSM‐5でうつ病は「抑うつ障害群」、双極性障害は「双極性障害および関連障害群」に分けられました。
双極性障害はうつ病とは異なり、「躁状態」があります。
- 気分爽快
- 無遠慮
- 物事が自分の思い通りにいかないと怒りやすい
- 思考の進みが早い
- 多弁
- 話の筋が脱線しやすい「観念奔逸」の症状
- 注意散漫
- 誇大的
- 楽天的な思考
- 活動的
- 多動
- 浪費
- 睡眠時間の短縮
- 性的関心の高まり/性的脱線行動
この躁状態が続く期間や躁状態の強弱によって、双極性障害は「Ⅰ型」と「Ⅱ型」に分けられます。
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双極性障害「Ⅰ型」の特徴
双極性障害「Ⅰ型」は、躁状態が1週間以上、うつ状態が2週間以上つづくとされています。
一般的に、最初に現れた躁やうつ状態がおさまってから5年ほどは症状が落ち着く「寛解期(かんかいき)」を迎えますが、そのあと症状が現れることがあります(再発)」
再発以降の寛解期はどんどん短くなっていき、場合によっては症状の起伏も大きくなっていきます。
最終的には、1年間に4回以上も躁状態とうつ状態をくりかえす「急速交代型(ラピッドサイクラー)」の状態になってしまうこともあります。
双極性障害「Ⅱ型」の特徴
双極性障害「Ⅱ型」は、躁状態が軽く短い「軽躁」と呼ばれる状態が4日以上つづきます。
「Ⅱ型」は「Ⅰ型」と比べてうつ状態が長いという特徴はありますが、再発とともに寛解期が短くなっていくことは共通しています。
「Ⅰ型」よりも「Ⅱ型」の方が多く、「Ⅰ型」の生涯有病率は1~2%程度、「Ⅱ型」の生涯有病率は3~8%程度となっています。
うつ病と間違われやすい双極性障害「Ⅱ型」
双極性障害はうつ病(単極性うつ病)と誤診される場合が多いのですが、双極性障害「Ⅱ型」の場合は特に多いです。
双極性障害「Ⅱ型」で現われる軽躁は、気分や活力の高まりは認められますが、躁状態と比べると症状が軽度です。
そのため、本人も周囲の人も単に「いつもより元気があって調子が良い」くらいにしか軽躁を捉えないため、診察に行ったときに主治医にその情報が伝わらないのです。
主治医に話すことは本人が辛いと感じているうつ状態の症状ばかりなので、双極性障害とは診断されず、うつ病と診断されることが多い。
うつ病と双極性障害では、治療で用いられる薬が異なります。
本当は双極性障害「Ⅱ型」なのに、うつ病の治療で用いられる抗うつ薬を服用すると、かえって気分の波が大きくなってしまい、うつ状態が余計に現れる可能性もあります。
お医者さんは診察室という特殊な状況下における患者さんの一側面しか見ることができません。
普段の生活でどんなイベントがあって、どんな症状が現れているのかというのは、患者さんやご家族などからの情報が頼りです。
そのため、誤診を防ぐためには軽躁の兆候を見逃さないことが重要です。
まとめ
- うつ病(単極性うつ病)と双極性障害は似て非なるもの
- 双極性障害には気分が高揚し活発になる「躁(そう)状態」がある
- 双極性障害には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」がある
- 双極性障害「Ⅰ型」は躁状態が1週間以上、うつ状態が2週間以上つづく
- 双極性障害「Ⅱ型」は気分の上昇が軽く短い「軽躁」が4日以上あり、うつ状態は「Ⅰ型」よりも長い
- 双極性障害「Ⅱ型」は特にうつ病と誤診されやすい
うつ病と診断されている人でも、「よくしゃべる」「尊大な態度をとる」などの躁状態が見られる場合は、双極性障害を疑ってみて主治医に相談してみてください。
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科学雑誌「Newton」(2020/10)精神の病気の取扱説明書
渡辺 雅幸(2007)専門医がやさしく語るはじめての精神医学 中山書店
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1.双極性障害「Ⅰ型」「Ⅱ型」の特徴や症状を分かりやすく解説
2.うつ病と間違われやすい双極性障害「Ⅱ型」
3.まとめ