ゲーム依存とギャンブル依存、「やめられない理由」が逆だった!?

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わかっているのに、やめられない。

ゲームでもギャンブルでも、この言葉は同じように使われます。だから2つは似たもの同士だと思われがちです。

 

でも最近の研究は、意外な事実を示しました。

やめられなくなる引き金が、この2つでは正反対だったのです。

 

この記事では、エクアドルで行われた295人の比較研究をもとに、ゲーム依存とギャンブル依存の決定的な違いをわかりやすく解説します。自分がどちらのタイプかを見分けるヒントと、タイプ別の対処法まで扱います。

目次

そもそも「やめられない」は、なぜ起きるのか?

「やめられない」の正体は、衝動性と強迫性という2つの心の働きが組み合わさった状態です。

似た言葉に見えますが、この2つは別物です。混同されやすいので、最初にここを整理しておきます。

衝動性=「よく考えずに、その場で動いてしまう」

衝動性とは、結果を十分に考えないまま、とっさに行動してしまう傾向のことです。

たとえば、セール表示を見て3秒で「カートに入れる」を押してしまう。

あの瞬間の心の動きが衝動性です。

強迫性=「もう楽しくないのに、やめられない」

強迫性は、少し性質が違います。

ほとんど喜びを感じていないのに、悪い結果が出ているのに、同じ行動を繰り返してしまう傾向です。

こちらは「やらないと落ち着かない」「気づいたら手が動いている」という感覚に近いものです。

たとえば、面白くもないSNSを寝る前に30分スクロールしてしまう。

あれは楽しいからではなく、止め方がわからないから続いています。

依存の入り口は衝動性、居座るのは強迫性

依存的な行動の多くは、この順番で進みます。

  1. 最初:楽しいから、刺激的だからやる(衝動性が主役)
  2. 途中から:楽しくないのに、やめられないから続ける(強迫性が主役)

今回紹介する研究が注目したのは、「衝動性のどの部分が、強迫性に化けるのか」という点でした。

 

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衝動性には「5つの顔」がある — UPPS-Pモデルとは?

UPPS-Pモデルとは、一括りにされがちな「衝動性」を5つのタイプに分けて測る心理学の物差しです。

これが今回の研究の鍵になります。

「衝動的な人」と一言で言っても、その中身は人によってまったく違うからです。

 

5つの顔を、身近な例とセットで見ていきます。

① 負の緊急性(ネガティブ・アージェンシー)

つらい気持ちのときに、突っ走ってしまう傾向です。

不安、怒り、落ち込み、退屈。

こうしたイヤな感情に押されて行動が暴走します。

 

たとえば、失恋した夜にピザを一枚まるごと食べてしまう。ケンカの最中に、後で必ず後悔するメッセージを送信してしまう。

あれが負の緊急性です。

② 正の緊急性(ポジティブ・アージェンシー)

気分が高まっているときに、突っ走ってしまう傾向です。

こちらは真逆で、興奮・高揚・「イケる!」という手応えが引き金になります。

 

たとえば、飲み会で盛り上がって全員分をおごってしまう。勝っている流れに乗って、予定になかった追加投資をしてしまう。

あれが正の緊急性です。

③ 計画性の欠如

行動する前に、先の結果を十分に考えない傾向です。

④ 粘り強さの欠如

長い作業・退屈な作業に集中し続けられない傾向です。

⑤ 刺激希求

新しいもの、スリルのあるもの、危険を伴うものを求める傾向です。

ポイントは「①と②だけが特別だった」こと

研究が明らかにしたのは、この5つのうち①負の緊急性と②正の緊急性という「緊急性」の2つだけが、強迫性と結びついていたということです。

計画性の欠如も、粘り強さの欠如も、刺激希求も、強迫性とは結びついていませんでした。

 

つまり、「やめられない」を作っているのは感情に押されて動く癖であって、単なる計画性のなさやスリル好きではなかったのです。

研究では何がわかったのか? 

「衝動性の高さ自体は両者で同じ。でも、その衝動性が『やめられなさ』に化ける経路が違った」という結果でした。

 

エクアドルのグアヤキル大学のマリア・ハラ=リッツォ氏らの研究チームが、同国の二大都市で調査を行いました。

対象は次の2グループです。

  1. 常習ゲーマー165人(平均年齢23歳・うち女性39人)
  2. 常習ギャンブラー130人(平均年齢33歳・うち女性52人)

参加条件は、18歳以上で、過去12か月のあいだ週2回以上ゲームまたはギャンブルをしていること。神経発達症や認知症などの診断がある人は除かれています。

 

参加者はオンライン調査で、衝動性・強迫性・ゲーム障害/ギャンブル障害の症状などを回答しました。

結果①:衝動性の平均レベルには、差がなかった

まず意外だったのがこれです。

ゲーマー群とギャンブラー群のあいだで、UPPS-Pの5つの側面すべてにおいて、平均レベルに差はありませんでした。

「ギャンブルをする人のほうが衝動的だろう」という直感は、少なくともこのデータでは支持されなかったことになります。

結果②:強迫性はギャンブラーのほうが高かった

一方、強迫性(やめられなさ)については、ギャンブラー群のほうがはっきりと高い結果でした。

診断基準を満たした人の割合も大きく違いました。

グループ 診断基準を満たした割合
ギャンブラー(130人) 54%がギャンブル障害の基準
ゲーマー(165人) 15%がゲーム障害の基準

 

結果③:引き金が、正反対だった

そして、この研究のいちばん重要な発見がここです。

グループを分けて分析すると、強迫性を予測する衝動性の種類が入れ替わりました。

  • ギャンブラー:正の緊急性(興奮・高揚で暴走する傾向)のほうが強く結びついた
  • ゲーマー:負の緊急性(イヤな気持ちで暴走する傾向)のほうが強く結びついた

同じ「やめられない」でも、そこに至る感情の道筋が真逆だったのです。

ゲームは「報酬」ではなく「痛み止め」だった可能性がある

ゲーム依存は「楽しさを追いかけている」というより、「つらさから逃げている」状態に近いかもしれない、というのが研究者たちの解釈です。

セルフメディケーション(自己治療)という見方

研究チームは、ゲームと負の緊急性の結びつきについて、こう説明しています。

強迫的なゲームプレイは、報酬を求める行動というより、苦痛を管理するための方法として機能している可能性がある。

これは心理学で「セルフメディケーション(自己治療)」と呼ばれる考え方です。

薬を飲んで痛みを抑えるように、イヤな感情を一時的に麻痺させるためにゲームを使っているというイメージです。

だから「楽しそうに見えない」

ゲームをやめられない人を近くで見ていると、不思議に思うことがあります。

あまり楽しそうに見えないのです。

むしろ、イライラしながら、疲れた顔で続けている。

 

セルフメディケーションという見方は、この違和感をうまく説明します。

楽しむためではなく、何かから逃げるために画面の前にいるからです。

ギャンブルは、逆の仕組み

一方でギャンブルと正の緊急性の結びつきは、これまでの依存症モデルとよく一致します。

報酬の手がかり(当たりの音、点滅する演出、勝った記憶)に脳が過敏に反応し、「やめよう」という自制の力が押し流されるという仕組みです。

こちらは、逃げているのではなく、引き寄せられている状態です。

あなたはどっちのタイプ? 自分で見分けるヒント

「やりたくなる直前の気分」を思い出せば、どちらのタイプかが見えてきます。

依存の重さではなく、「引き金」を確認するための簡単なチェックです。診断ではありませんが、自分を理解する手がかりになります。

苦痛回避タイプ(負の緊急性が強い)の兆候

次のような感覚に心当たりがあるなら、こちらのタイプの可能性があります。

  • 手を伸ばす直前、たいてい気分が沈んでいる・イライラしている
  • やらなければいけないことがあるときほど、逃げ込みたくなる
  • やっている最中、実はそれほど楽しくない
  • 終わったあと、罪悪感と虚しさが残る
  • 「気を紛らわせたい」という言葉がしっくりくる

高揚追求タイプ(正の緊急性が強い)の兆候

  • 手を伸ばす直前、気分が良い・調子に乗っている
  • 勝ったとき、もっとやりたくなる(負けたときより)
  • 演出、音、期待感そのものが好き
  • 「まだイケる」という感覚で予定を超える
  • 終わったあと、興奮の余韻が残る

どちらも当てはまることもある

現実には、両方の要素を持つ人も多くいます。

実際この研究でも、正・負どちらの緊急性も強迫性と関連していました。

 

大切なのは白黒つけることではなく、「自分の場合、引き金はどちら寄りか」を知ることです。

そこが対処法の分かれ道になるからです。

タイプ別・対処の入り口が違う

苦痛回避タイプは「感情の扱い方」から、高揚追求タイプは「環境の設計」から手をつけるのが理にかなっています。

同じ行動嗜癖(行動への依存)でも、入り口が違うのです。

苦痛回避タイプ:感情を扱うスキルを増やす

つらさから逃げるためにゲームを使っているなら、ゲームを取り上げるだけでは根本が変わりません。

逃げ場を奪われるだけだからです。

 

必要なのは、ゲーム以外の逃げ場を増やすことです。

ここで参考になるのが、DBT(弁証法的行動療法)という心理療法の考え方です。

 

もともと感情の波が激しい人のために作られたもので、次の2つのスキルが中心にあります。

① 苦痛耐性スキル

つらい気持ちを、悪化させずにやり過ごす技術です。

感情のピークは通常数十分で下がるため、その山を越えるまでの時間稼ぎを覚えます。

② 感情調整スキル

自分の感情に名前をつけ、何が引き金になったかを特定する技術です。

「イライラしている」と気づけるだけで、暴走の勢いは落ちます。

 

日常でできる第一歩は、とてもシンプルです。

  1. ゲームを起動したくなったら、始める前に一言だけメモする(例:「疲れた」「面倒くさい」)
  2. その気分に0〜10で点数をつける
  3. 5分だけ別のことをして、もう一度点数をつける

これは我慢の訓練ではありません。引き金を見えるようにする作業です。

 

高揚追求タイプ:報酬の手がかりを遠ざける

興奮に押されて暴走するタイプの場合、その場の意志の力はほとんど当てになりません

すでに高揚しているときには、判断力が落ちているからです。

 

だから優先すべきは、冷静なときに環境を決めておくことです。

  • 通知・広告・演出など、報酬を思い出させる刺激を物理的に減らす
  • 上限(金額・時間)を、始める前に決めて記録する
  • 「勝っている流れ」のときこそ離席するルールを、事前に紙に書いておく
  • アクセスに手間をかける(アプリを消す、支払い手段を分ける)

ポイントは、熱くなってから決めないことです。ルールは必ず、冷めているときに作ります。

3つの注意点】この研究をどこまで信じていい?

方向性を示す価値のある研究ですが、「証明された」と言うには早い段階です。

面白い結果ほど、限界も一緒に知っておく必要があります。

注意点①:原因と結果は、まだわからない

この研究は横断研究です。ある一時点の状態をまとめて調べた研究、という意味です。

 

つまり、こういう可能性が残ります。

  • 負の緊急性が高いから、ゲームにのめり込んだのか
  • ゲームにのめり込んだ結果、負の緊急性が高くなったのか

どちらが先かは、この研究では判断できません。

時間の前後がわからないと、原因は特定できません。

注意点②:2つのグループの重症度が、かなり違った

すでに触れたとおり、ギャンブラーの54%が診断基準を満たしたのに対し、ゲーマーは15%でした。

つまり、比べているグループの「深刻さのレベル」がそもそも揃っていません。

観察された違いの一部が、ゲームとギャンブルという活動の違いではなく、単に重症度の違いから来ている可能性は否定できません。

注意点③:エクアドルの限られた集団のデータ

対象はエクアドル二大都市の常習者です。

年齢も、ゲーマー平均23歳・ギャンブラー平均33歳と10歳離れています。

日本の読者にそのまま当てはまるかどうかは、別の検証が必要です。

それでも意味があるのは、なぜか

限界はありますが、この研究の価値は「行動嗜癖をひとまとめに扱わないほうがいい」という設計指針を示した点にあります。

ゲーム依存とギャンブル依存を同じ枠に入れて、同じ対処法を当てるやり方には、再考の余地があるかもしれません。

日本での広がりを、数字で確認しておく

自分ごととして考えるために、日本のデータも押さえておきます。

ゲーム依存

厚生労働省の依存症調査研究では、ゲーム行動症の疑いがある人の割合は全体で3.8%と報告されています(GAMES-Testによる。10〜29歳の若年層ではさらに高い割合)。

ギャンブル依存

国立病院機構久里浜医療センターによる令和2年度の調査では、SOGSという指標で5点以上だった人が全体の2.2%(男性3.7%・女性0.7%)でした。

 

なお、令和5年度の調査では別の指標(PGSI)が使われているため、この2つの数値は単純に比較できない点には注意が必要です。

いずれにせよ、どちらも「特殊な誰かの話」ではない規模だとわかります。

まとめ

この記事の要点を整理します。

  1. 衝動性の高さ自体は、ゲーマーとギャンブラーで差がなかった。違ったのは、その衝動性が「やめられなさ」に化ける経路だった
  2. ギャンブルは正の緊急性(興奮・高揚)、ゲームは負の緊急性(イヤな感情)と強く結びついていた
  3. UPPS-Pの5因子のうち、強迫性と関連したのは正負の「緊急性」だけ。計画性の欠如や刺激希求は関連しなかった
  4. ゲーム依存は報酬追求というより、苦痛のセルフメディケーションとして機能している可能性がある
  5. 対処の入り口は違う。苦痛回避タイプは感情調整・苦痛耐性から、高揚追求タイプは報酬の手がかりを遠ざける環境設計から
  6. ただし横断研究であり因果は不明。両群の重症度差も大きく、結論として確定した話ではない

 

まず試してほしいのは、たったひとつです。

次にゲームやギャンブルに手を伸ばしたくなったとき、始める前に「いまの気分」を一言メモしてください。

 

沈んでいるのか、高ぶっているのか。それを1週間続けるだけで、自分の引き金が見えてきます。

対処法を選ぶのは、そのあとで大丈夫です。

 

【出典】

 

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師資格を取得。月に5冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。