性同一性障害(性別違和)とは?「障害」から「個性」へ

「性別」には、生物学的な「カラダの性」と自分自身が認識している「ココロの性」があります。

多くの人はカラダの性とココロの性が一致していますが、これらが食い違ってしまうために違和感を覚え、苦しんでいる人たちもいます。

このような症状を「性同一性障害(性別違和)」と言います。

 

この記事では、性同一性障害の特徴や性同一性障害とトランスジェンダーとの違いを簡単に説明します。

性同一性障害(性別違和)とは?「障害」から「個性」へ

性同一性障害(英語:Gender Identity Disorder : GID)」は、カラダの性別とココロの性別が一致していなことです。

性同一性障害と言いましたが、今では別の名称で呼ばれています。

 

近年、性同一性障害を「多様な性のあり方の一つ」と捉え、病気でも障害でもなく「個性」であるとする考えが広まってきました。

そういったこともあり、2013年にアメリカ精神医学会が出している精神疾患の国際基準「DSM‐5」から、「性同一性障害」を「性別違和(英語:Gender Dysphoria)」という名称に変更されました。

マインドパレッサー
「障害」という単語を用いないことで、差別的・否定的な印象をなくそうとしたんですね

精神疾患の国際基準にはDSMの他にも、世界保健機関(WHO)が出している「ICD‐11」があります。

ICD‐11では、性同一性障害は精神疾患の分類から削除され、「性の健康に関連する状態」という分類の中で「性別不合(英語:Gender Incongruence)」と呼ばれるようになりました。

 

【精神疾患の国際基準に関する記事】

性同一性障害で見られる2つの特徴

①自分のカラダの特徴に対する嫌悪感

自分にある性器がふさわしくないと考えたり、男らしい体つき(体毛、筋肉質なカラダや骨格など)、女らしい体つき(胸のふくらみ、月経など)になることに嫌悪感を抱きます。

そうした嫌悪感から、すね毛や体毛をそったり、あるいは女らしさを表す乳房を晒しで巻き、ふくらみを隠そうとしたりします。

②反対の性別に対する同一感

カラダの性別とココロの性別を統一したいと強く願うようになります。

男の子の場合は女の子の遊びを好んだり、女の子の服装をしたいと望み、女の子の場合には男の子のような活発な遊びを好んだり、男の子の服装をするようになります。

治療するには?

性同一性障害の治療の選択肢には、「精神療法」「ホルモン療法」「性適合手術」の3つがあります。

精神療法では、本人にとってふさわしい性別選択の支援、精神的なサポートが行われます。

 

ホルモン療法では、「性ホルモン」を投与し、カラダの性をココロの性に近づけます。

MtF(カラダの性が男性でココロの性が女性)の場合は、女性ホルモンを投与することで、女性らしい身体つきになることが期待できます。

性適合手術では、性器の形態を外科手術で変え、カラダの性をココロの性に近づけます。

2021年現在、精神療法と性適合手術に関しては保険適用されていますが、ホルモン療法は未だ適用されていません。

性同一性障害とトランスジェンダーとの違い

性同一性障害とトランスジェンダーとの違い
Photo by Jordan on Unsplash

性同一性障害とトランスジェンダーとの違いを説明する前に、トランスジェンダーとは何かを簡単に説明します。

トランスジェンダー(英語: Transgender)」とは、セクシャルマイノリティである「LGBTQ+」の「T」に該当するもので、カラダの性とココロの性が一致していない人たちの総称です。

えっ?それって性同一性障害と同じじゃないの?「トランスジェンダー=性同一性障害」なの?
マインドパレッサー
たしかに「カラダの性とココロの性が一致していない」という同じ状態ではありますが、同じではありません。

性同一性障害とトランスジェンダーとの違いを一言でいうと「カラダの性とココロの性を一致させたいと願っているかどうか」です。

 

トランスジェンダーの人たちはトランスジェンダーであることをアイデンティティとしている人も多い。

言い換えると、精神療法やホルモン療法、性適合手術によって、カラダの性とココロの性を一致させる必要はないと考えているのです。

そのため、「トランスジェンダー」という言葉には、性同一性障害(性別違和、性別不合)も含んだ広義で使われています。

まとめ

  • 性同一性障害の「障害」という言葉は、ネガティブな印象を与えるため現在では「性別違和」「性別不合」と言葉が用いられている
  • 性同一性障害(性別違和、性別不合)には、「自分のカラダの特徴に対する嫌悪感」「反対の性別に対する同一感」という特徴がある
  • 性同一性障害(性別違和、性別不合)の治療法には、「精神療法」「ホルモン療法」「性適合手術」の3つがあり、ホルモン療法以外は保険が適用される
  • 性同一性障害(性別違和、性別不合)とトランスジェンダーの違いは「カラダの性とココロの性を一致させたいと願っているかどうか」である
  • トランスジェンダーの人の中には性別を一致させる必要はないと考える人も多い

 

見た目の性別と、その人自身が意識している性別が必ずしも一致しているとは限りません。

最近は社会的にもセクシャルマイノリティが認知されてきているので、昔よりは言いやすくなりましたが、性の不一致の悩みを隠している人もまだたくさんいます。

したがって、「男だから~」「女だから~」というステレオタイプを捨てて、多様な性のあり方を認めるように心がけるのが大切ですね。

【参考文献】

科学雑誌「Newton」(2020/10)精神の病気の取扱説明書

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。