僕は子どもの頃、トマトとセロリが大嫌いでした。でも、大人になって改めて挑戦してみると、食べられるようになっていました。
そのときは「あれっ意外と美味しいぞ!何で食べられなかったんだろう?」と思うほどでした。
しかし、今でも克服できなかったものが一つだけあります。エスニック料理によく出没する「パクチー」です。
パクチーブームもありましたし、「もう食べられるようになってるんじゃないかな?」と思い、パクチーサラダを食べてみたんですが、全然ダメでした。笑
噛むと口の中に広がるあの独特の香り。どうにもならないほど苦手です。
パクチーは地中海沿岸が原産とされていますが、現在では世界中で広く食べられています。世界中に浸透しているとはいえ、僕のようにパクチーが食べられない人も少なからずいます。
アメリカの遺伝子検査会社である「23&me(トゥエンティスリー・アンド・ミー)」が発表した論文(Eriksson,2012)によると、パクチーの好き嫌いには嗅覚受容体遺伝子が関係しているとのことです。
そして、パクチー嫌いの人にとっては衝撃的な事実だと思いまうが、なんとパクチーのあの「カメムシ臭」を感じるのは、人口のたった14%だそうです。
この記事では、もう少し詳しく論文の内容をご紹介していきます。あと、こんなものにもパクチーが入ってたの!?という飲食物をご紹介し、パクチーの効能を説明します。
そもそもパクチーとは?
パクチーはセリ科の一年草です。原産は地中海沿岸だと言われており、日本には10世紀頃に渡来した。日本においては野菜および香辛料として流通しています。
パクチーという呼び方はタイ語由来で、学名は「コエンドロ(学名: Coriandrum sativum )」です。他には、英語由来の「コリアンダー(coriander)」、中国語由来の「シャンツァイ(香菜)」、スペイン語由来の「シラントロ(cilantro)」とも呼ばれています。
ちなみにパクチーの和名は「カメムシソウ」です。
一般的に、種や葉を乾燥させ香辛料として使用するものを「コリアンダー」、生食する葉を「パクチー」と呼ぶことが多くなりました(“コリアンダー”, wikipedia)
パクチーは中華料理、タイ料理、インド料理、ベトナム料理、メキシコ料理、ポルトガル料理など、世界中で広く用いられていますが、日本料理ではあまり用いられないため、パクチーを食べたことがない人も多いです。
しかし、エスニック料理を提供するレストランが増えてきたため、パクチーは日本でも手に入りやすくなりました。また、家庭で栽培するのもさほど難しくはないです。
こんなものにもパクチーが入ってたの!?
パクチーと言えば、トムヤムクンやフォー、生春巻きに入っているイメージが強いと思いますが、こんな意外なものにも入っています。
大人気マンガ「Dr.STONE(ドクターストーン)」の中で、コーラの味を再現するレシピが紹介されていました。
炭酸水、ライム、ハチミツを焦がしたカラメルに並んで意外や意外、パクチーが入っていました。
僕自身は試したことはないのですが、本当にコーラの風味がするそうです。Youtuberのはじめしゃちょーが作ってみた動画があるので、興味がある方は見てみてください。
あと、日本で人気の白ビール「ヒューガルデンホワイト」には、パクチーの種が入っています。
個人的にヒューガルデンホワイトは大好きなビールなので、大嫌いなパクチーの種が入っていると知って、本当に驚きました。
パクチー(コリアンダー)のカメムシ臭を感じるのは遺伝子のせい?
アメリカの遺伝子検査会社「23&me」は、14.604人ほどの西洋人の遺伝子とパクチーの風味に対する感じ方をアンケート調査しました(Eriksson,2012)。
パクチーには、レモンやライムに似た爽やかな「新鮮香」とカメムシ臭やせっけん臭に似た「刺激臭」の2種類が共存しています。
23&meが発表した論文によると、この刺激臭を感じるのは人口のたった14%だそうです。
この研究によって、パクチーの刺激臭を感じるのは「嗅覚受容体遺伝子」であることも分かりました。
嗅覚受容体遺伝子は1000文字近いDNAにコードされていますが、そのうちの1文字が変異し、パクチーの刺激臭をカメムシ臭(またはせっけん臭)と混同してしまうのです。
人口の14%はパクチーの香りをカメムシが外敵に食べられないように出している「カメムシ臭」や食べ物ではない「せっけん臭」と感じるわけですから、食べられないのも当然だと言えます。
つまり、パクチーを食べられないのは遺伝子のせいと言って良いでしょう。
しかし、この記事を書くにあたって参考にさせてもらった『脳はすこぶる快楽主義‐パテカトルの万能薬‐』の著者である池谷裕二氏は、パクチーのカメムシ臭がたまらなく好きだそうです。
また、最近の研究では、シナモンやバジル、アルコールの感じ方にも遺伝的な差異があることが分かっています(池谷, 2020)。
余談になりますが、僕は23&meではないのですが、Genelife(ジーンライフ)という別の遺伝子検査会社の検査を受けたことがあります。遺伝子検査に興味がある方は読んでみてください。
【引用文献】
Eriksson N, Wu Shirley, Do Chuong, Kiefer Amy, Tung Joyce, Mountain Joanna, Hinds David, Franke Uta(2012)A genetic variant near olfactory receptor genes influences cilantro preference 23andMe, Inc.
侮れないパクチーの効能
ここまでパクチーのことを「カメムシ臭」「せっけん臭」がして食べられたものじゃない!と散々こき下ろしてきましたが、パクチーには様々な効能があることが研究によって分かっています。
パクチーオイルの紫外線誘発日焼け炎症に対する軽減効果
ドイツの研究者によって、紫外線(UV-B)によって生じる皮膚炎症の一つである広範囲の紅斑(日焼け)に対するコリアンダー油(パクチーオイル)の抗炎症効果を明らかにした論文が発表されています。
その研究では、40人のボランティアの背中に0.5%と1.0%のパクチーオイルを塗る試験を実施しました。
そして、紫外線を背中に照射して日焼けの程度をステロイド薬と比較しました。
その結果、パクチーオイルの抗炎症効果が示され、炎症性皮膚疾患の併用治療に役立つ可能性があることが示されたのです。
【引用文献】
パクチーの加齢性認知障害抑制効果
年をとると、認知症などの認知機能障害になるリスクが高まりますが、パクチーにはその加齢性認知障害を抑制する効果があることが実験によって示されました。
老化を促進させたマウス(SAMP8マウス)の記憶障害に対するパクチーの効果について検討したこの実験では、10週齢の雄性SAMP8マウスを用いて12週間パクチーの種からの抽出物の投与を行いました。
投与12週間後、バーンズ迷路試験を行いパクチー種の抽出物の効果について検討を行ったところ、SAMP8マウスは老化を促進させていないマウスに比べて、迷路クリアが遅れていたが、パクチー種の抽出物の投与により有意に抑制されました。
この結果にからパクチー種の抽出物は抗酸化作用によって、一酸化窒素合成酵素(NOS)の上昇を抑制し、神経伸長を促進することにより、記憶障害を改善したことが考えられました()。
【引用文献】
Yurina Mima , Nobuo Izumo , Jiun-Rong Chen , Suh-Ching Yang , Megumi Furukawa and Yasuo Watanabe(2020)Effects of Coriandrum sativum Seed Extract on Aging-Induced Memory Impairment in Samp8 Mice
パクチーによるヒ素など重金属毒性軽減
パクチーを摂取させたマウスの腎臓における鉄、ヒ素、カドミウムの濃度低下が活性酸素種の産生を著しく低下させることを明らかになりました。
実験では、パクチーの加熱葉抽出物が組織内の重金属の濃度を低下させるかどうかを調べました。
パクチーの加熱葉抽出物0.25%を含む飲料水を8週間与えたマウスと、その飲料水を与えないマウスとを比較しました。
その結果、パクチー葉エキスの摂取は重金属の濃度を低下させ、腎臓の酸化ストレス軽減に対して強力に貢献していることが示されました。
【引用文献】
最後に
パクチーが一時期ブームになったとき、僕は正直「よくこんなカメムシ臭がするもの食べられるよな。正気かよ!」と思いました。
しかし、23&meの研究によって、全員がパクチーを食べた時にカメムシ臭を感じているわけではないということが分かり、納得しました。
パクチーを食べたことがない方はぜひトライしてみてください。
【引用文献】
池谷裕二(2020)脳はすこぶる快楽主義‐パテカトルの万能薬‐ 朝日新聞出版
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