【心理療法】フォーカシングとは?その特徴や重要概念を簡単に解説

 

フォーカシング」とは、シカゴ大学の教授だったユージン・ジェンドリン(Eugene Gendlin)が開発した心理療法です。

 

ジェンドリンはもともと哲学を学んでいて、博士論文のテーマは「象徴化作用における体験過程の機能」で、生の体験がどのように象徴化されるのか?ということに問題意識がありました。

ジェンドリンは研究を進めていくうちに、心理療法を通して起こるクライエントの内面の変化に興味を持つようになりました。

 

そこで、彼はクライエント(来談者)中心療法を創始したカール・ロジャーズ(Carl Rogers)の研究グループに入り、その後フォーカシングを開発することになります。

 

この記事では、フォーカシングとはどのような心理療法なのか?その特徴や重要概念は何なのか?について簡単に解説していきます。

【クライエント(来談者)中心療法に関する記事はこちら】

 

 

【心理療法】フォーカシングとは?その特徴や重要概念を簡単に解説

ジェンドリンはロジャーズと研究を進めていくうちに、クライエントが心理療法の中で言葉やその他の手段を使って、言葉にはならない漠然とした自分の“生の体験”を何とか表現(象徴化)しようとしていることに気が付きました。

そのような経緯から開発されたのが、ジェンドリンの「体験過程」の理論です。

ジェンドリンの体験過程の理論に基づいて開発された心理療法はもともと「体験過程療法」と呼ばれていましたが、似たような名称の療法が他にあったことので、「フォーカシング指向心理療法(focusing-oriented psychotherapy)」と呼ばれるようになりました。

マインドパレッサー

あなたにも経験ありませんか?

ある人の印象を聞かれて「あの感じはなんて言えばいいのかな~」というときの何ともハッキリしない漠然とした感じ。のど元まで出かかっているのに、何かが引っかかって出てこない不快感、違和感。

その曖昧で漠然とした感じを、「しっくりくる表現」「ピッタリくる表現」で概念化できると、胸のつっかえが取れたように感じます。

そして、自己理解が進み、問題を乗り越えられたように感じます。

 

このような体験を意識的に行う心理療法がフォーカシングです。

つまり、フォーカシングとは、“漠然とした感じ”を受けとめ、自分の内面に注意を向けながら、その感じを意味づけるような言葉やイメージがおのずと浮かび上がるように促進する心理療法です。

 

ジェンドリンはこの漠然としたハッキリしない、捉えどころのない、身体的な感覚を「フェルトセンス(felt senses)」と呼びました。

フォーカシングの重要概念「フェルトセンス(felt senses)」とは?

Photo by Giulia Bertelli on Unsplash

ジェンドリンは「なぜカウンセリングはある人には役に立ち、ある人には役に立たないのか」疑問に思っていました。

そんな中でロジャーズと研究を進めていくうちに、カウンセリングの成功・失敗の要因はクライエントが抱えている問題についての曖昧で漠然とした身体的な感覚(=フェルトセンス)に触れる能力次第ではないか、と考えるようになりました。

 

「フェルトセンス」はジェンドリンがフォーカシングのために作った用語で、「意味を含んだ身体的な感覚」を意味します。

身体的な感覚と言っても、頭痛や腹痛などとは異なります。

ジェンドリンの言う“身体的な感覚”は、イライラして腹部に圧迫感を覚えたり、不安で胸が詰まるような、原因がハッキリと分からないものの、体感的に感じる、曖昧で漠然としたものです。

 

このフェルトセンスを見つける作業がフォーカシングでは非常に重要です。

フェルトセンスと付き合うコツ

ジェンドリンがフォーカシングの技法についての論文を書いたのち、学びやすいように様々なスキルや基本ステップが開発されました。

ここでは、アン・ワイザー・コーネル(A. W. Cornell)のやり方をご紹介します。

フェルトセンスと付き合うコツは以下の6つ。

  1. 関係を見つける(間をとる)
  2. 五感を研ぎ澄まし、感じる
  3. ハンドルを見つける
  4. 共鳴させる
  5. 友だちのように一緒にいる
  6. 受け取る

関係を見つける(間をとる)

フォーカシングでは、身体的な感覚とそれを感じている自分との間に、ほどよい距離をとったり、関係を見出すことが必要です。

これをアン・ワイザーは「disidentification(「自分」と「感じ」の区別,脱同一視)」と呼びました。一方、ジェンドリンは「クリアリング・ア・スペース(すっきりした空間作り)」と言いました。

五感を研ぎ澄まし、感じる

フェルトセンスと向き合うときは、五感を研ぎ澄まして、

  • カラダのどこで感じるのか
  • どんな雰囲気なのか
  • どんなイメージが浮かぶのか

を感じることが大切。

ハンドルを見つける

ハンドル」とは、フェルトセンスにしっくりくる言葉やイメージ、音、ジェスチャーなどのことです。

「この漠然とした感じには、どんな言葉やイメージがしっくりくるかな?」と探してみる。

共鳴させる

ハンドルが本当にフェルトセンスにピッタリかどうか確かめる作業です。いまいち、ピンとこないときは、よりしっくりくる表現を探します。

感じている通りの表現ができたときの爽やかな納得感は、何ものにも代えがたい貴重な体験になります。

友だちのように一緒にいる

自分が悲しいとき、苦しいときに親しい人と一緒に居たいように、フェルトセンスと一緒に居てゆっくりと付き合っていきます。

受け取る

フォーカシングで得られた新しい気付きや感じ方を貴重なものとして、否定したり、評価したりせず、そのまま受け入れます。

フェルトセンスを見つけにくい人の特徴

フォーカシングを実践する際に、困るのがフェルトセンスをうまく見つけられないケースです。フェルトセンスを見つけにくい人の傾向としては、以下の3つのタイプが挙げられます。

  1. 真剣に自分と向き合うことをしないタイプ
  2. 原因を追究するあまり、感じることに集中できないタイプ
  3. 自分の感情・感覚を表現することに恥ずかしさを感じるタイプ

これらのタイプの人は、静かで安心できる環境を用意すること包み込むように自分の心を認めることが大切になります。

フォーカシングの3つの基本ステップ

フォーカシングの基本ステップ3つをご説明します。

  1. 自分の内側に注意を向ける
  2. フェルトセンスと一緒に居る
  3. 言葉にしたり、問いかけたりする

自分の内側に注意を向ける

目を閉じて、両手、両足がどんな感じかに注意を向けます。

それからカラダの内側の中心部、特にのど、胸、お腹のあたりに注意を向けて、ゆっくりと感じてみます。

フェルトセンスと一緒に居る

自分の内側に注意を向けて見えてきたモヤモヤした感じを「こういうのが存在するのか。」と認めて、気持ちを楽にして、しばらくフェルトセンスと一緒に居てみます。

言葉にしたり、問いかけたりする

最後に、フェルトセンスに呼び名をつけて、

  • どんな感じ?
  • 何が伝えたいの?

などと、対話していきます。

フェルトセンスと対話することで、新しい気付きが得られたり、カラダが解放されるような体験が得られます。

最後に

フォーカシングは心の中にあるモヤモヤした感じに注意を向け、それと向き合うことで心の苦しみを和らげていく心理療法です。

実際のカウンセリング場面でも、よく用いられています。

 

この記事がフォーカシングの理解に役立てば幸いです。

 

【引用文献】

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。