『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』に学ぶ心が軽くなるヒント

毎日頑張っているのに、なんだか生きづらい…。

ポジティブにならなきゃと思うほど苦しくなる。

そんな経験はありませんか?

人間の心はとても複雑で、白か黒かで割り切れない「グレー」なものなんです。

今回は臨床心理士・東畑開人さんの著書『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』から、心が少し楽になるヒントをお届けします。

心の中の「馬」と「ジョッキー」:本能と理性のぶつかり合い

現代社会は自由な反面、何でも「自己責任」を求められる時代です。

まるで大海原に小さなボートで放り出されたような孤独感を抱えがちになります。

そんな中で私たちは、自分の心の中にいくつもの声を持っています。

その代表が、「馬」と「ジョッキー」という2つの声です。

馬は感情や欲求など本能に突き動かされる衝動的な自分。

一方でジョッキーは理性で物事をコントロールしようとする自分です。

例えば寒い冬の朝、もっと寝ていたいとダダをこねるのが「馬」の心。

でも「ジョッキー」の心は「早く起きないと遅刻するよ!」とムチを入れてきます。

このように、心の中では本能と理性がいつもぶつかり合っているのです。

世の中の自己啓発書やアドバイスにも、「直感を信じて行動しよう!」という馬寄りのものと、「目標を立て計画的に進めよう」というジョッキー寄りのものがあります。

大切なのは、その時々でどちらのアプローチが自分に合っているか見極めることです。

感情に流されがちなときは、ジョッキー的な冷静さが問題解決に役立ちます。

逆に理性が強すぎて動けなくなっているときは、馬のような思い切った行動が状況を打開することもあります。

要は、自分の中の馬とジョッキーを理解し、両者のバランスを取ることがポイントです。

理性だけに頼りすぎず、かといって本能だけに振り回されない、このバランス感覚こそが、孤独で不安定な現代を上手に生き抜くヒントになるのです。

白でも黒でもない、「グレー」と受け入れる

人間の心は純粋な白でも黒でもなく、誰もがグレーな存在だと著者は言います。

完璧な善人も完全な悪人もほとんどおらず、私たちの心は矛盾した感情や欲求を抱える複雑なものです。

ポジティブな時もあればネガティブな時もあるのが当たり前です。

なのに「いつも前向きでいなきゃ」「ネガティブはダメ!」と自分を縛ってしまうと、かえって苦しくなってしまいます。

明るい自分も落ち込む自分も、どちらも自分。両方あっていいんだと認めることが大切です。

そして、自分の心の隙間を埋めるために特定の一人だけに頼らないこともポイントです。

依存先は一つではなく、友人や家族、趣味やコミュニティなど複数に分散させておきましょう。

そうすれば特定の誰かに過度な期待をせずに済み、失望も少なくなります。

期待しすぎは相手にも自分にも負担です。

適度な距離感を保つことで、より健全な人間関係を築けるはずです。

人生には「働くこと」と「愛すること」がある

心理学者フロイトは「人生には働くことと愛することがある」と述べています。

ここで言う「働く」とは、お金を稼ぐことだけでなく、ボランティアなど何らかの目的に向かって行うこと全般を指します。

一方「愛する」とは、その行為自体を目的として楽しむことで、損得勘定は存在しません。

趣味に没頭する時間や、ただ好きな人と一緒にいたい気持ちは、この「愛する」にあたります。

問題は、この「働くこと」と「愛すること」がごちゃ混ぜになってしまうことです。

例えば、趣味で楽しんでいたことを仕事にした途端に楽しくなくなってしまったり、損得勘定のある友人関係では心からリラックスできなくなります。

仕事に休息が必要なように、「稼ぐ・義務」の時間と「楽しむ・無目的」の時間を明確に区別することが、バランスの取れた人生を送る鍵になります。

著者は最後に「幸福とは、複雑な現実をできるだけ複雑に生きること」だと述べています。

何か一つの考え方だけに頼るのではなく、その時々に応じて柔軟に視点を変えてみる。

そんな風に自分や世界の「グレー」を許容していくことが、軽やかに人生を歩むコツなのかもしれません。

まとめ

生きづらさを感じるとき、心の中の馬とジョッキーのバランスを見直したり、ポジティブもネガティブも両方の自分を許してあげたりすることで、少し楽になれるかもしれません。

今回ご紹介した東畑開人さんの『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』には、他にも現代を生きるヒントが詰まっています。

興味が湧いた方はぜひ手に取ってみてください。

どんな自分にも「まあ、これでいいか」と優しくOKを出しながら、あなたらしく毎日を過ごしていけることを心から願っています。

【参考文献】

好書好日:東畑開人さん「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」インタビュー 時代に傷つく心へ補助線

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。