人はさまざまな願いを持っています。
- お金持ちになりたい
- 美男美女と付き合いたい
- 高級車に乗りたい
- 世界中を旅行したい
などいろいろと。
その中でも多くの人に共通する願い、それが「記憶力が良くなりたい」です。
記憶には3つの段階があります。
- 記銘‐情報をインプットする段階
- 保持(保存)‐忘れないように記憶に留める段階
- 再生‐保存している記憶を思い出す段階
この3つの段階を達成して、はじめて「記憶」が成立するのです。
この記事では、第1段階の「記銘」にフォーカスします。
どうすれば、記銘の段階で脳裏に焼き付けることができるのかを解説していきます。
【この記事の筆者について】
僕は29歳から、心理学を学ぶため大学に通っています。
勉強をしたことが学生時代のときよりも頭に入ってこなくて、「記憶や脳についてもっと学んで効率よく覚えたい!」と思いました。
心理学には「認知心理学」という分野があり、そこにヒントが隠されていました。
そこで得られた知見をシェアしようと思い、記事にしました。
記憶のメカニズムに関してはこちらの記事をご覧ください。
短期記憶から長期記憶への道しるべ。記憶を定着させる記銘方略3つ
せっかく勉強したことをすぐに忘れてしまったら悲しいですよね。
では、どのような覚え方(記銘方略)をすれば、勉強したことを長く記憶に留めることができるのかを解説していきます。
「体制化」関連のある情報をまとめて覚えよう!
体制化とは、関連のある情報をまとめて覚える、という記銘方略です。
関連のある情報を整理した形で覚えると、記憶の成績がよくなるのです!
train(電車), apple(りんご), anger(怒り), orange(オレンジ), motorcycle(バイク), fear(恐怖), cucumber(きゅうり), skateboard(スケートボード), glad(嬉しい), blueberry muffin(ブルーベリーマフィン)
という10個の英単語を覚えるとき、ランダムに覚えるよりも、
- 【感情】anger, fear, glad
- 【乗り物】train, motorcycle, skateboard
- 【食べ物】apple, orange, cucumber, blueberry muffin
と同じカテゴリーにまとめるなどして、情報を整理する方が多くの単語を覚えられることが分かっています。
「精緻化」覚えるものをイメージしよう!
精緻化とは、覚えるべき材料に対して、何らかの情報を付け加えてもっと覚えやすくする記銘方略です。
たとえば、単語を記憶する際に、単語と単語を関連させる文や物語を作ったり、それぞれの単語が意味するもののイメージを思い浮かべたり、各語の連想するものを思い浮かべたりするという方法です。
先ほどの体制化の例で用いた英単語10個を覚えるのに、精緻化を使うとこんな感じです。
電車(train)に乗っていると、販売員の人がなぜか怒り(anger)ながら、リンゴ(apple)とオレンジ(orange)を売りにきた。ふと窓の外を見ると、きゅうり(cucumber)の入った買い物袋を持ったバイク(motorcycle)の人が見えた。その人の顔は恐怖(fear)で引きつっていた。バイクのすぐ前には、嬉しそうな(glad)顔をしてブルーベリーマフィン(blueberry muffin)をほおばりながら、スケートボード(skateboard)に乗る少年がいた。
実際に、実験でも精緻化を使った方が記憶しやすいということが証明されています。
認知心理学者のバウアーとクラーク(1969)は、無関連な単語10個を被験者に覚えてもらうという実験を行いました。
被検者は以下の2つのグループに分けられました。
- 物語群‐単語と単語を結び付けて文を作り、さらにそれらを組み合わせて物語を作って覚えるよう指示
- 統制群‐ただ単語を覚えるよう指示
物語群が物語を読むのに必要な時間(1~2分間)と同じ時間で統制群の人は単語を覚えてもらいまいした。
結果は物語群の圧勝。物語群は統制群の6~7倍も単語を覚えていました。
また、別の実験でバウアー(1972)は“犬-葉巻”のような20対の単語のペアを覚えてもらう実験も行いました。
- 実験群‐「犬が葉巻を加えている」イメージを思い浮かべるなど単語を関連つける
- 統制群‐ただ単語を繰り返して覚える
という2つのグループに分けました。
結果は実験群の方が約2倍、統制群よりも単語の対を覚えていました。
「生成効果」覚えるものを自分で作っちゃおう!
生成効果とは、覚えるべき材料そのものを自分で生成することによって、単にその材料を見ただけの場合よりも記憶成績が良くなる記銘方略です。
- 青森県で有名な赤い果物=a○○○○
- 道端で凶暴な野犬に出くわした時の感情=f○○○
- 板に四つの車輪が付いたクールな乗り物=s○○○○○○○○○
といった感じに覚えたいことを問題にするという方法です。
生成効果もスラメカとグラフ(1978)によって効果があると証明されています。
読み群と生成群の2群に分けて、
- 読み群‐「long=short」のような語の対をそのまま示して読ませる
- 生成群‐「long=s_」のように一つの語ともう一つの語の頭文字だけが示され、指示されたルール(この例では反対語)に従って、語を完成させる
読み群と生成群がどれくらい2番目の語を記憶しているのかを調べたところ、生成群の方が読み群よりも記憶成績が優れていました。
記憶の種類を理解することも大切
記憶は保持時間の違いから、感覚記憶・短期記憶・長期記憶に分けられます。
そして、長期記憶はさらに、エピソード記憶・意味記憶・プライミング記憶・手続き記憶に分けられます。
「記憶」として一緒くたに考えるよりも、記憶の種類を覚えていた方が自分で整理が出来ますし、必ず役に立つと思います。
記憶の種類に関してはこちらの記事をご覧ください。
記憶の特徴や頭に残りやすい時間帯
記憶の特徴も知らず、やみくもに勉強するのは“知らない街を地図もなく進むようなもの”です。
脳科学者のたゆまぬ努力によって、これまでに記憶に関して明らかになってきたことがたくさんあります。
その知識を使わない手はありません!!
- 寝る前に勉強したことは記憶に残りやすい
- インプット:アウトプット=3:7 くらいが良い
- 集中学習よりより分散学習の方が記憶に残りやすい
などなど。
頭にあまり入ってないのにダラダラ教科書を読んで、勉強した気になっていませんか?
記憶の特徴を知っているのと知らないのとでは、だいぶ違うと思います。
記憶の特徴に関する記事はこちら
最後に
この記事では、短期記憶から長期記憶へ移すのに効果的な記銘方略として、
- 体制化‐関連のある情報をまとめて覚える
- 精緻化‐覚えたい情報に何らかの情報を付け加えて覚えやすくする(例:イメージ化など)
- 生成効果‐覚えたい情報そのものを問題形式にする
の3つをご紹介しました。
ただ単に覚えるよりも、ひと工夫加えるだけで記憶成績が圧倒的に向上します。
ぜひ参考にしてみてください。
あわせて読みたい
参考文献
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1.短期記憶から長期記憶への道しるべ。記憶を定着させる記銘方略3つ
2.記憶の種類を理解することも大切
3.記憶の特徴や頭に残りやすい時間帯
4.最後に