【心理検査】内田クレペリン精神検査とは?分かることや特徴を解説

内田クレペリン精神検査とは、一桁の連続加算という作業を通して、その人の性格傾向を理解することを目指した作業検査方式の心理検査です。

医療の世界だけではなく、産業界、教育界、矯正などの司法界などあらゆる領域で盛んに利用されています。

 

一桁の足し算をひたすらしていくだけですが、その作業結果によって多くのことが分かります。

この記事では、内田クレペリン精神検査とはどんな心理検査なのか、どんなことが分かるのかなどを分かりやすく解説していきます。

【心理検査】内田クレペリン精神検査とは?分かることや特徴を解説

中学校や高校、あるいは就活のときに、横一列ズラーっと並んだ数字をひたすら足し算をしたことはありませんか?

おそらくそれは「内田クレペリン精神検査」です。

内田クレペリン精神検査は一桁の連続加算を被験者にしてもらい、その作業結果や作業態度によってその人の性格や行動の特徴を把握しようとする心理検査です。

検査の概要

内田クレペリン精神検査は日本の臨床心理学者である内田勇三郎が、ドイツの精神科医クレペリン(Kraepelin, E.)による連続加算という方法を導入して考案した、日本独自の作業検査法による心理検査です。

国産の心理検査としては最も長く使われているもので、日本だけでなくアジア、そして世界各地にも広まっています。

クレペリンは1902年に単位時間あたりの作業量の変化を曲線で表し、これを「作業曲線」と命名しました。

内田クレペリン精神検査の特徴

クレペリンは作業曲線に影響を与える精神的因子として以下の5つの因子を想定しました。

  1. 意志緊張
  2. 興奮
  3. 慣れ
  4. 練習
  5. 疲労

それぞれの意味を簡単に説明していきます。

意志緊張

連続加算を行う際にみられる意志の緊張のことで、作業中は緊張と弛緩が繰り返され、作業曲線には適度なギザギザがみられます。

興奮

作業が進行するにつれて、その作業に気分が乗ってくることを表します。

慣れ

作業開始時は目新しい作業に脳をフル回転されて望みますが、作業を行っていくうちにそこまで脳をフル回転させなくても作業を行えるようになります。

練習

「慣れ」が作業の終了とともに消失するような時間的に短い慣れであるのに対し、「練習」はその効果が比較的長時間にわたって続くような慣れのことを言います。

疲労

作業の進行にともなって、作業量を低下させるように働きます。

クレペリンはこれら5つの因子が複雑に、法則的な形で働き合っていることを見出しました。

検査で何が分かるの?

内田クレペリン精神検査によって以下のようなことが分かります。

  • 知能や仕事の処理能力
  • 積極性・意欲
  • 活動のテンポ
  • 素早く対応する能力
  • 性格
  • 仕事ぶり

内田クレペリン精神検査は実施方法も難しくなく、集団に対して実施できます。

そのため、会社や官庁の採用試験、人材配置の検討、医療機関においては診断や治療効果の測定、学校においては入学試験やクラス編成など、さまざまな場面で利用されています。

内田クレペリン精神検査の実施法

内田クレペリン精神検査の実施法
Image by Sam Karanja from Pixabay

内田クレペリン精神検査を実施する上で、特別な器具は必要なく、実施者も特別な訓練を必要としないため、利便性の高い検査です。

用意するもの

明るくて騒音の少ない静かな部屋に、以下のものを用意します。

  • 凹凸がなく検査用紙を広げられるくらいの机
  • 検査用紙
  • ストップウォッチ
  • HB程度のえんぴつを一人につき2~3本 ※シャープペンやボールペン、下敷きはNG
  • 検査の実施方法などを読み上げるCD
  • CDを再生する機器

実施上の注意点

検査の実施に際しては、説明などを含めて1時間程度の時間が必要です。

また、早朝や深夜、激しい運動をした直後などは出来るだけ避けます。

そして、他の検査を同時に実施する場合には、疲労などの影響を受けないようにするために、一番最初に内田クレペリン精神検査を実施するようにします。

作業検査法のメリット・デメリット

心理検査には、知能検査や発達検査、そして性格を理解するための人格検査があります。

人格検査は「質問紙法」「投影法」「作業検査法」の3つに分類されており、それぞれメリット・デメリットがあります。

内田クレペリン精神検査は作業検査法にあたるので、作業検査法のメリット・デメリットを説明します。

 

作業検査法のメリット
  1. 検査をするのに特別な器具が不要
  2. 検査内容は簡単な足し算なので、誰にでもできる課題
  3. 検査の実施も簡単で特別な訓練は不要
  4. 非言語的な検査なので、海外の方に対しても実施可能
  5. 集団実施が可能
  6. 被験者が意識的に操作をすることが少ない
作業検査法のデメリット
  1. 課題の性質からして性格の全体的な構造を捉えることは難しい
  2. 作業が単調で被験者に苦痛を与えかねない
  3. 作業に対するモチベーションが結果に影響しやすい

まとめ

  • 内田クレペリン精神検査は一桁の連続加算を被験者に課し、その作業結果や作業態度によってその人の性格や特徴を把握しようとする心理検査
  • 内田クレペリン精神検査は日本独自の心理検査だが、日本だけではなく世界各国で広く利用されている
  • 内田クレペリン精神検査によって、「知能や仕事の処理能力」「積極性・意欲」「活動のテンポ」「素早く対応する能力」「性格」「仕事ぶり」などが分かる
  • 検査の実施するのに、特別な器具は不要で検査者も特別な訓練はいらない
  • 作業検査法のメリット‐「非言語的な検査なので、海外の方に対しても実施可能」「集団実施が可能」「被験者が意識的に操作をすることが少ない」
  • 作業検査法のデメリット‐「課題の性質からして性格の全体的な構造を捉えることは難しい」「作業が単調で被験者に苦痛を与えかねない」「作業に対するモチベーションが結果に影響しやすい」

 

【参考文献】

願興寺 礼子・吉住 隆弘(2011)心理検査の実施の初歩 ナカニシヤ出版

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。