夫婦関係を維持するのは大変です。
夫婦に押し寄せる様々な課題を楽しみながら達成し、絆をより深めていく夫婦がいる一方で、大恋愛を経て結婚したのに、お互いの意見や生活習慣の違いから早々と親密さに綻びが生じる夫婦もいます。
なぜこんなにも関係を維持することは難しいのでしょうか?
その疑問は「親密さのパラドックス」という概念で説明することが出来ます。
『親密さのパラドックス(Intimacy Paradox)』という本を執筆したウィリアムソン(Williamson,1991)は親密な人間関係を築くことが難しい理由について以下のように述べています。
我々は情緒的に自由で、自己決定力があることを望んでいる。しかし同時に、自分の考えと気持、信念と価値観、希望と怖れ、財産と家庭生活を親密な関係を持つ重要な他者と分かち合いたいと思う。ここには、矛盾と葛藤が内在する。これは親密さのパラドックスである。
引用:『家族の心理~家族への理解を深めるために~』P53 Topic3-4「親密さのパラドックス」より 平木典子、中釜洋子 共著 サイエンス社
人間は「自分で色々決めたい!」という思いがある一方で、自分の感じた喜び・悲しみ、自分の価値観を大切な人と共有したいと願うという矛盾を抱えた生き物なんです。
この記事では、「親密さのパラドックス」についてもう少し深堀りし、夫婦がどのような過程を経て絆を深めていくのかについて説明してきます。
なぜ夫婦はケンカをするのか?親密さのパラドックスとは
夫婦と言っても元々は赤の他人。生まれ育った環境が違えば、考え方も違います。
そんな2人がお互いに物事の捉え方や生活習慣を持ち寄って、夫婦としての価値観・判断基準を新たに作り上げていかなければいけない。
日本における離婚原因も男女とも「性格が合わない・価値観が違う」が1番でした。
ちなみに男女別の離婚原因ベスト5は以下の通りです。
【女性】
- 性格が合わない・価値観が違う
- パートナーが暴力を振るう・暴言を吐く
- パートナーの浮気
- 精神的に虐待する・家族を顧みない
- 生活費を渡さない
【男性】
- 性格が合わない・価値観が違う
- パートナーの浮気
- 家族・親族との折り合いが合わない
- 結婚生活が成り立たない
- 家族を顧みない
となっています。
家族療法家のレーナー(Lehner,H,G)によると、「親密さ」とは
関係の中で自分を犠牲にしたり裏切ったりせず、相手を変えたり説得したりしようという欲求を抱かずに、相手のその人らしさを承認し合えること
引用:『家族の心理~家族への理解を深めるために~』P60 平木典子、中釜洋子 共著 サイエンス社
人は「パートナーを言い負かしたい!」「思い通りにいかないパートナーを変えたい!」という欲求を持っていますから、その欲求を抱かずに「そのままの受け入れる」というのは非常に難しいことです。
そうして「親密さ」を得られず、
- 絶えず言い争いをする
- 関係が冷え切ってしまい、お互いに関わるのを避ける
- 子どもの問題にのめり込む
などの方法で不安に対処しようとする夫婦も少なくないです。
ヤマアラシのジレンマ
「親密さのパラドックス」と似た言葉に「ヤマアラシのジレンマ」があります。
「ヤマアラシのジレンマ」という考えは、ドイツの哲学者であるショーペン・ハウエル氏の寓話から生まれたものです。
その寓話では、寒い夜に2匹のヤマアラシが身体をぴったりとくっつけて温まろうとしたところ、お互いの身体のトゲが相手を傷つけてしまったため、相手を傷つけない丁度いい距離を保つために、くっついたり離れたりして、絶妙な距離感を探したという話です。
人も同じです。
最初はパートナーとの心理的距離がうまく取れず、パートナーを傷つけてしまったり、逆に自分が傷ついてしまったり。
夫婦はそうやって試行錯誤をしながら、丁度いい距離を探していくんです。
夫婦の絆が深まっていく3つのステージ
ディムとグレン(Dym,B & Glen,M,L)は夫婦は異なる3つのステージを必ず経験し、その経験によって少しずつ関係が深まっていくと考え、「夫婦関係がたどる循環過程」を提唱しました。
その3つのステージとは、以下の3つです。
- 拡大・保証の時期(ラブラブ期)
- 縮小・背信の時期(ウザウザ期)
- 和解の時期
それでは、1つずつ解説していきます。
ラブラブ期
ラブラブ期においては、夫婦はお互いの違うところに惹かれ合い、自分にはない部分を持っている相手がその部分を埋めてくれることで、自分が大きくなったような体験をします。
みたいな感じですね。
ウザウザ期
ウザウザ期になると、お互いの違いが疎ましく厄介なものに感じられ、夫婦はお互いに裏切られたような感覚になってしまいます。
和解
ウザウザ期を乗り越えることが出来ると和解のステージです。
このステージでは、パートナーに対するイライラや失望は軽く感じられ、自分と違うところも「パートナーの個性」として冷静に受け止められるようになります。
通常、夫婦はこの3つのステージを何度か繰り返します。
ラブラブ期 → ウザウザ期へのショックが少ないこと、3つのステージを繰り返していくごとに移行が緩やかになることが長続きする夫婦の特徴だと考えられています。
夫婦円満の秘訣。それは1日30分の「共感」
最後に夫婦円満の秘訣をご紹介します。
あるアンケートによると、「夫婦円満のために必要なことは何だと思いますか?」という質問で、「よく会話をする」という回答が69.6%で第1位になっています。
心理学的にも、夫婦円満の最大の秘訣は夫婦でよく会話をすることで、特に「夫が妻の話を聴く」ことが大切だと考えられています。
夕食のときに30分でも夫が妻の話をしっかりと聴けば、夫婦円満になるという訳です。
簡単ですよね。
ところが、多くの家庭で夫は妻が話をしようとすると「今日は疲れてるから今度きくよ」と話を聴こうとせず、妻は機嫌を損ねてしまいます。
このときの男性の心理は「家事や子育ての悩みを聞いても、解決が難しいし、聞いても仕方がない」です。
でも、女性は「問題を解決したい!」とはこれぽっちも思っていません。
女性はただ話を聴いて、自分の辛さ・大変さを理解し、共感して欲しいだけなのです。
なので、内容がなんであれ、妻が話すことにしっかりと耳を傾け、共感を示すことが出来れば、現実世界の問題が解決されていなくても、妻の心の中では共感された瞬間に問題が解消され気分が明るくなるのです。
1日30分。
決して確保できない時間ではないはず。
夫婦でたくさんおしゃべりをして、仲睦まじい夫婦を維持しましょう。
【引用文献】
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