「ためこみ症(英語:Hoarding Disorder)」とは、日常生活に支障をきたすほど大量に物・動物をためこんでしまう精神疾患。
ためこみ症になると、かなり高い確率でうつ病や注意欠陥多動性障害(ADHD)といった精神疾患を併発しやすい。
また、物で溢れかえった状態は不衛生ですし、火事の危険性もあります。建物を退去させられる可能性だってあります。
そんなためこみ症を治療するにはどうしたら良いのか、解説していきます。
ためこみ症の特徴、ためこみ行動がみられる他の病気に関してはこちらの記事をご覧ください。
ためこみ症の治療で大切なこと
上越教育大学大学院でためこみ症の研究をしている五十嵐透子教授は、ためこみ症の人にとって必要な物とそこまで必要でない物を少しづつ仕分けていくことで症状の改善がみられる場合があると言います。
ただし、そのときは必ず本人と相談しながら行わなければなりません。
また、仕分けができる度に「キレイになったね」と褒めることも大切です。
他人が勝手に片づけると悪化する
ためこみ症の人の中には、物を“自分の分身”のように捉えている人もいます。
そのため、他人が勝手に片づけたり処分したりすると、大切な物を失った喪失感からためこみ行動がますます悪化してしまう可能性があります。
ためこみ症の人は物を「片づけられない」のではなく、あえて「片づけない」のです。
治療するには本人の「治したい」という動機が必要
ためこみ症の人は物に特別な愛着を持っているため、物を片づけたり処分することに苦痛や不安を感じます。
ためこみ症の治療では、そういった苦痛や不安を和らげて物がそばになくても大丈夫だと認識する訓練などを行います。
ただし、治療するには本人がのめ込み症を「治したい」という動機が重要になります。
それでは、ためこみ症の具体的な治療法をご紹介します。
ためこみ症の具体的な治療法
ためこみ症の治療では、主に薬物療法と認知行動療法が行われます。
薬物療法で不安・衝動を和らげる
ためこみ症の治療では特定の抗うつ薬、具体的には「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」が役立つことがあります。
SSRIは脳内に「セロトニン」という神経伝達物質を増やす薬で、抑うつ気分(落ち込み)や不安といったうつ症状を軽減させる効果がある。
ただ、ためこみ症の治療で薬物療法を行う場合はあくまでも不安や衝動を和らげることが目的で、根本的な解決になりません。
根本的な解決のためには次に説明する認知行動療法によって、考え方を変えていく必要があります。
【神経伝達物質に関する記事はこちら】
認知行動療法で考え方を改善
認知行動療法とは、自分自身の思考や行動のくせを把握し、認知・行動パターンを変えていくことで生活や仕事上のストレスを減らしていく心理療法です。
認知行動療法と一口に言っても種類がいくつもあり、対象となる精神疾患によって用いられる療法は異なります。
ためこみ症の場合だと、「行動実験」と呼ばれるものがあります。
行動実験では、まず一日だけ物を預けます。
すると、ためこみ症の人は
などと不安になります。
そういった湧き上がってくる感情や考えを記録にとっていく。
記録を取り続けていると、ため込み症の人は想像していたような大変なことにはならないと分かるようになります。
このようにして、少しずつですが物がそばにない状態に慣れていくことが出来るのです。
【認知行動療法に関する記事】
まとめ
- 他人が勝手に物を片づけたり捨てたりすると症状が悪化する
- ためこみ症の治療には本人の「治したい」という動機が必要
- ためこみ症の治療法には、薬で不安などを和らげる「薬物療法」と考え方・行動を変えていく「認知行動療法」がある
- 薬物療法は不安や衝動を和らげる効果はあるが根本的な解決はできない
身近にためこみ症だと思われる人がいる場合、まずは専門家に相談しましょう。
- BTCセンター東京
- BTCセンターなごや
- 九州大学病院 精神科神経科外来
- カウンセリングルームさくら(新潟)
これらの施設は、多くのためこみ症の人を見てきた五十嵐教授が推薦する「ためこみ症の専門家」がいる医療機関やカウンセリングセンターです。
参考にしてみてください。
【参考文献】
科学雑誌「Newton」(2021/04)老いの教科書
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1.ためこみ症の治療で大切なこと
2.ためこみ症の具体的な治療法
3.まとめ