自閉症の大人に「ADHD」が隠れている?併存の診断と治療が大切な理由

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  • 自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けたけれど、なんだか生活がうまくいかない。
  • 集中力が続かないのは自分のせい?

そんな悩みを抱えている方は、実は少なくありません。

 

最新の研究では、ASDを持つ大人の約33%に「注意欠局・多動性障害(ADHD)」が併存していることがわかっています。

本記事では、なぜこの併存が見落とされやすいのか、そして適切な診断と治療がどれほど生活を変える可能性があるのか、わかりやすく解説します。

そもそもASDとADHDとは?なぜ一緒に起こるの?

自閉症スペクトラム(ASD)とは?

自閉症スペクトラム(ASD)は「人とのコミュニケーションや社会的なやりとりに特有の難しさがあり、特定のこだわりやルーティンを大切にする」という特性を持つ神経発達症のひとつです。

たとえば、「雑談が苦手」「急な予定変更に強いストレスを感じる」といった特徴があります。

注意欠如・多動症(ADHD)とは?

注意欠如・多動症ADHD)は「集中力を維持したり、行動をコントロールしたりすることに困難を感じる」神経発達症です。

日常生活では、「大事な書類をよくなくす」「話の途中で別のことが気になってしまう」といった形で現れます。

なぜ両方が同時に起こるの?

ASDとADHDは、どちらも「脳の働き方の違い(神経発達症)」から生じるものです。

たとえば、パソコンにWindowsとMacがあるように、脳の「OS」にもいくつかのタイプがあります。

ASDとADHDはその「OS」の特徴が重なる部分があるため、一人の人に両方の特性が現れることがあるのです。

 

実際に、JAMA Network Openに掲載された研究では、ASDを持つ大人の33.2%にADHDが併存していることが明らかになりました。

これは一般人口のADHD率(2.7%)の約12倍にもなります。

つまり、ASDと診断された方の約3人に1人は、ADHDも持っている計算になります。

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【主な発達障害の種類について】

なぜ「ASDの大人」のADHDは見落とされやすいの?

見落とされやすいのは、「ASDとADHDの症状が似ている部分があること」「機関不全をASDだけで説明してしまう傾向があること」「大人のADHD診断自体がまだ新しい概念であること」が主な原因です。

具体的には、以下のような理由があります。

見落としの原因

具体例

症状の重なり ADHDの「集中できない」が、ASDの「興味の偏り」と混同される。
診断の上書き 「ASDがあるから」とADHDの検査をそもそも行わない。
成人特有の課題 大人は多動性が目立たなくなり、「不注意」が主な症状になるため気づかれにくい。
制度的な過渡期 2013年のDSM-5まで、ASDとADHDの同時診断は公式には認められていなかった。

たとえてみれば、これは「風邪だと思っていたら実はアレルギーもあった」という状況に似ています。

風邪の薬だけ飲んでもアレルギーは治りませんよね?

 

同じように、ASDへの支援だけではADHDの困りごとは解決しないのです。

【具体的な数字で見る】研究が示す「見落とし」の深刻さ

JAMA Network Openに掲載された研究(米国のMedicaidデータを分析)は、驚くべき現実を浮き彫りにしました。

項目 数値 意味
ASD成人のADHD併存率 33.2% 約3人に1人
一般人口のADHD率 2.7% 約37人に1人
併存率の差 約12倍 ASDがあるADHDリスクが格段に高い
ADHD治療薬の処方率 50%未満 半数以上が未治療
知的障害併存者の処方率 17.4% 約5人に1人未満

この研究で特に注目すべきは、未治療のADHDが健康転帰の悪化や早期死亡リスクの増加に関連するという点です。

つまり、ADHDを放置することは「少し不便」というレベルではなく、健康や寿命にまで影響する深刻な問題なのです。

 

たとえば、ADHDの「衡動性」によって食生活が乱れたり、「不注意」によって薬の飲み忘れや通院の中断が起きたりすることで、他の病気の管理が難しくなることがあります。

これは、スマホのバッテリーが常に20%しかない状態で使い続けているようなもの。

充電(=治療)すれば、もっと快適に使えるのに、その機会を逃しているのです。

どうすればいい?診断・受診のステップ

「もしかしてADHDもあるかも」と思ったら、神経発達症に詳しい専門医に相談することが最初の一歩です。

以下のステップを参考にしてみてください。

ステップ やること ポイント
STEP 1 セルフチェックで振り返る 「集中力が続かない」「忘れ物が多い」「計画が立てられない」など該当するか確認。
STEP 2 専門機関を探す 「発達障害 専門 外来」で検索。地域の精神科・心療内科で対応可能な場合もある。
STEP 3 初診時に伝える 「ASDの診断があること」「ADHDの可能性も評価してほしいこと」を明確に伝える。
STEP 4 包括的な評価を受ける 心理検査・行動観察・生活歴の聴き取りなど、複数の角度から評価。
STEP 5 治療方針を相談する 薬物療法と心理社会的支援の組み合わせを医師と検討。
A horizontal step-by-step flow diagram with 5 numbered steps connected by arrows. Step 1: Self-check (mirror icon), Step 2: Find specialist (hospital icon), Step 3: First visit (speech bubble icon), Step 4: Assessment (clipboard icon), Step 5: Treatment plan (handshake icon). Modern flat design, blue color scheme with sky blue accents, white background, clean sans-serif text, each step in a rounded rectangle.

よくある疑問と誤解

Q. 「ASDがあるのにADHDもあるなんて、そんなことがあるの?」

A.はい、あります。

かつては医学的に「ASDとADHDの同時診断はできない」とされていましたが、2013年の診断基準の改定(DSM-5)で、両方の診断を同時につけることが正式に認められました。

研究では約3人に1人が併存していることがわかっています。

Q. 「ADHDの薬を飲むのが不安。副作用はないの?」

A. ADHD治療薬には食欲低下や不眠などの副作用がある場合がありますが、医師と相談しながら少ない量から始め、自分に合った薬を見つけることができます。

また、薬以外のアプローチ(環境調整、カウンセリングなど)もありますので、薬だけが治療ではありません。

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Q. 「知的障害がある場合はどうなるの?」

A.より注意が必要な状況です。

研究では、知的障害を伴うASDの方のADHD治療薬処方率はわずか17.4%と非常に低い結果が出ています。

これは、「知的障害があるからADHDの評価は難しい」という先入観が影響している可能性があります。

どのような状況でも、ADHDの併存を調べる価値はあります。

「包括的な評価」が大切な理由

この研究が最も強く訴えているのは、単一の診断に固執せず、神経発達症の併存を考慮した広範な評価を行うべきということです。

これは、体の不調で病院に行ったときに、「お腹が痛い」という訴えだけでなく、血液検査や画像診断などいろいろな角度から調べてもらうのと同じです。

脳の働き方の特徴も、一つの方向からだけ見ていては、大切なことを見落としてしまうのです。

具体的には、次のような実践が求められます。

  1. ASDの患者さんを評価する際、常にADHDの併存を積極的に検討する。
  2. 知的障害の有無にかかわらず、ADHDのスクリーニングを行う。
  3. ADHDが確認された場合、薬物療法を含めた適切な治療を提供する。
  4. 当事者や家族にADHD併存の可能性と治療の選択肢についてわかりやすく説明する。

まとめ:「もう一つの可能性」に目を向けることが、生活を変える

本記事の要点をまとめます。

  1. ASDを持つ大人の約33%にADHDが併存しており、一般人口の約12倍である。
  2. しかしADHD治療薬の処方率は50%未満。知的障害併存では17.4%とさらに低い。
  3. 未治療のADHDは健康悪化や早期死亡リスクにつながる。
  4. 単一の診断で満足せず、包括的な評価を行うことが重要である。
  5. 適切な診断と治療で、生活の質は大きく改善できる。

もしあなた自身、または周囲の方が「ASDがあるけれど、集中力や整理整頓にも困っている」という状況なら、それはADHDが隠れているサインかもしれません。

まずは、神経発達症に詳しい専門医に相談してみてください。

「もう一つの可能性」に目を向けることが、より快適な生活への第一歩になるはずです。

 

【参考文献】

Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Medicaid-Enrolled Autistic Adults | JAMA Network Open

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師資格を取得。月に5冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。