そんな時はゆっくり温泉に入ったり、ドライブに行ったり、飲みに行ったりと人それぞれ。
中にはお芝居やミュージカルを見に行ったり、映画を観たり、好きな音楽を聴いたりすることで、ストレス解消する人もいるでしょう。
このように、芸術に触れることはストレスを軽減になります。
また、芸術作品を観たり、聴いたりと受動的に触れるのではなく、
- カラオケで思いっきり歌を歌う
- 楽器を奏でる
- 曲に合わせて踊る
など、能動的に自分の感情や欲求を表出することで、苦しみや葛藤から解放されることもあります。
この記事では、絵画や音楽などを通して自己表現を心理療法に導入した芸術療法について解説していきます。
【他の心理療法に関する記事はこちら】
芸術療法ってどんな心理療法?
「芸術」とは、
- 彫刻
- 絵画
- ダンス
- 演劇
- 音楽
- 詩
- 小説
- 戯曲
などを含む、人間の表現活動のことを意味します。
私たちは言葉では表現できない自分の欲求や感情といったものを、芸術を通して表現します。
芸術などの非言語的な手段を用いて自分を表現することで、無意識的な欲求や衝動も解放され、心が癒されていきます。
このような芸術を作り上げていく中で生じるポジティブな効果を心理療法に取り入れたものが「芸術療法(art therapy)」です。
芸術療法の特徴
芸術療法の特徴は2つあります。
一つ目は非言語的なコミュニケーションを用いるという点です。
他の多くの心理療法では、主に言葉でコミュニケーションをとるため、言葉をまだ話せない子どもや言語的な交流に障害のあるクライエントに用いることが困難なことがあります。
しかし、芸術療法は言葉を用いないため、適応対象は子ども~老人まで、障害の軽い方~重い方まで幅広く用いることができます。
芸術療法の特徴の2つ目は、セラピストとクライエントの間の媒介が存在するという点です。
他の多くの心理療法では、セラピストとクライエント1対1のやりとりで進められていきます。
しかし、芸術療法では画用紙や箱庭などの表現するための道具や作品がセラピストとクライエントの間にあるため、1対1のやりとりが苦手なクライエントの助けになります。
芸術療法にはどんな種類があるの?
芸術にさまざまな種類があるように、芸術療法にも色んな種類があります。
芸術療法で代表的なものをいくつかご紹介していきます。
絵画療法(バウムテスト・風景構成法・なぐり描き法)
「絵画療法」は文字通り、絵画を媒体とする心理療法です。
クライエントは言葉ではうまく言い表せないものを描画を通して自由に表現し、それをセラピストが受け止めていくプロセスが治療につながります。
しかし、ただ単にクライエントが絵を描けば良いという訳ではなく、出来上がった作品を基にしてセラピストとクライエントの間でコミュニケーションを取ることが大切になります。
絵画療法の中でも、施行の方法や対象などによっていくつか種類がありますが、ここでは以下の3つをご紹介します。
- バウムテスト(樹木画)
- 風景構成法
- なぐり描き法(スクリブル・スクイッグル)
バウムテスト(樹木画)
「バウムテスト(樹木画)」はスイスのコッホ(K. Koch)が心理検査として創案したものですが、描いた木にクライエントが無意識の中で感じている自分のイメージが投影されることから、絵画療法としても用いられています。
クライエントはセラピストから「1本の実のなる木を出来るだけ十分に描いてください」と教示され、A4の画用紙に4Bの鉛筆で描いていきます。
絵が完成したら、一緒に鑑賞して感想を話したりします。
風景構成法
「風景構成法」は精神科医の中井久夫氏が河合隼雄氏の箱庭療法に関する講演に触発されて考案した絵画療法です。
風景構成法ではまず、セラピストが1枚の画用紙にサインペンで枠を書き込みます。
その後、クライエントはセラピストの教示に従って、川や山、田んぼ、道、家などの10個のアイテムを順に画用紙に描き、最後にクレヨンで色をつけて風景を完成させます。
風景が完成したら、セラピストとクライエントの2人で鑑賞し、感想や絵の説明を聞いたりします。
なぐり描き法(スクリブル・スクイッグル)
絵画療法に絵の上手い・下手は関係ないのですが、それでも中には自分の絵の下手さを気にしてしまうクライエントもいます。
そんな技術的なことから生じるクライエントの抵抗を最小限にとどめ、自然な形で治療を進めていく方法として、アメリカの芸術療法である先駆者マーガレット・ナウムブルグ(Naumburg,M.)が考案した「なぐり描き法」があります。
なぐり描き法にはいくつか種類がありますが、ここでは「スクリブル」と「スクイッグル」を取り上げます。
【スクリブル】
スクリブルでは、クライエントが画用紙に自由になぐり描きをしてもらい、そのなぐり描きから何かものの形を探してもらいます。
そして、見えたものに色を塗って仕上げます。
描き終わったら、その絵についてセラピストとクライエントで話し合いを行います。
【スクイッグル】
スクイッグルでは、セラピストも加わってなぐり描きをします。
はじめにセラピストが画用紙になぐり描きをして、クライエントにその画用紙を渡します。そして、クライエントはそこに見えてきたものに色を付けます。
次は、クライエントが画用紙になぐり描きをして、セラピストに渡し、同じように色を付けます。
これを何回か繰り返して、描かれたものを手掛かりに話し合いを行います。
音楽療法
「音楽療法(Music therapy)」は、音楽を聞いたり演奏したりする際の生理的・心理的・社会的な効果を応用して、心身の健康の回復、向上をはかる事を目的とする芸術療法です。
音楽療法は、歌唱や演奏を行う「能動的音楽療法」と音楽を聴くなどの「受動的音楽療法」の2つに分けられます(wikipedia,“音楽療法”)。
音楽療法は健康法、代替医療、補完医療と位置付けられており、重大な疾患の治療法としては勧められませんが、
- 幸福感や生活の質の向上
- 症状を軽減
- 初期治療
- リハビリテーションの効果を高める
といった効果が期待できます。
音楽療法の効果を科学的に証明するために、身体の免疫グロブリンの濃度や自律神経の状態、ストレスホルモンの変化などの検証が進められています。
本来は重度の負荷が必要な免疫機能に関与するナチュラルキラー細胞の活性および量の増加が、音楽療法によって認められたという研究報告もあります(長谷川,久保田,稲垣,品川, 2001)。
音楽の中でも「1/f揺らぎ(エフ分のいち ゆらぎ)」を持つ音楽が特に免疫力を高める効果があると考えられています。
「1/f揺らぎ」とは、
- 小川のせせらぎ
- 小鳥のさえずり
- 波が打ち寄せる音
などの自然界に多く見られるものです。
人体の活動リズムも実は、1/f 揺らぎと関係していて、例えば心拍の間隔の変化は1/f ゆらぎになっています。
そういった理由もあってか、人体のリズムと同じ1/f 揺らぎによって、人間は心地よい気分になるのです。
【1/f揺らぎに関する記事はこちら】
【引用文献】
長谷川嘉哉,久保田進子,稲垣俊明,品川長夫(2001)音楽療法によるナチュラルキラー細胞活性及び細胞数の変化.日本老年医学会雑誌 38巻2号:201-204
箱庭療法
「箱庭療法(sandplay therapy)」とは、砂の入った箱の中にクライエントがミニチュアのおもちゃを好きなように配置していくという芸術療法です。
箱は縦57cm×横72cm×高さ7cmで、砂を掘ったときに下から水が現れる感じを表現するために、箱の底は青く塗られています。
ミニチュアのおもちゃには、クライエントの表現を活性化させるために
- 動物類
- 植物類
- 乗り物類
- 人間類
- 建物類
など、さまざまな種類が用意されています。
箱庭療法はもともと遊戯療法から派生しましたが、子どもの治療だけではなく、成人の治療にも利用されています。
サイコドラマ(心理劇)
「サイコドラマ(心理劇)」はクライエントの抱える問題について演技、すなわち行動を通じて理解を深め、解決を目指す心理療法です。
サイコドラマにはあらかじめ書かれた脚本はなく、参加者が即興で作り上げていきます。
参加者は即興劇を作り上げていく過程を通じて、自己の問題に向き合い、自己理解を深めたり、感情を表現して「カタルシス」を得たりすることを目標としています。
カタルシスとは、心の中のわがかまりやモヤモヤが解消されて、スッキリした気分になることを意味します。
【サイコドラマに関する記事はこちら】
最後に
「心理療法」と聞くと、セラピストとの話し合いというイメージが強いと思いますが、この記事でご紹介したように心理療法にも色々な種類があります。
ストレス解消のためにも、心地よい音楽を聴いたり、たまには絵を描いてみるのはいかがですか?
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