「アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)」は、ストレスや心理的苦痛を受け入れながらも、自分にとって大切な価値に基づいた行動を取れるようになりましょうという心理療法です。
日常生活にACTを取り入れることで、ストレスの軽減や自己理解の向上、そして生活の充実を図ることができます。
と感じている人はぜひご覧ください。
【この記事を読むと分かること】
- ネガティブな感情や思考を避けずに受け入れることが大事。
- 心理的苦痛の2つの原因は「認知的フュージョン」と「体験の回避」。
- ACTの6つのコアプロセスを実践することで、価値に基づいた有意義な生活を送れる。
- ACTを日常に取り入れることで、ストレスの軽減や自己理解の向上など多くのメリットがある。
誰かの人生を生きてませんか?自分らしく生きるためのACT実践
ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)は、心理療法の一つです。
不安や悲しみ、怒りといったネガティブな感情や思考を無理に排除しようとするのではなく、それらを受け入れつつも、自分にとって大切な価値に基づいた行動を取ることを目指します。
人生には避けられない苦痛があります。
その苦痛を回避しようとするのではなく、あえてそれを受け入れることによって、有意義な生活を築いていくための方法を学ぶのです。
心理的苦痛の2つの原因「認知的フュージョン」と「体験の回避」
ACTでは、心理的苦痛の主な原因として以下の2つが挙げられます。
認知的フュージョン
自分の思考にとらわれ、それがまるで現実であるかのように感じてしまう状態です。
例えば、「私は無価値だ」と思い込むことで、その思考が事実のように感じられ、自分の行動に制限をかけることがあります。
体験の回避
嫌な気持ちや不安を避けようとすることは、一時的には効果的かもしれませんが、長期的にはさらなる苦痛を招くことがあります。
例えば、人前で話すことが苦手なため、プレゼンテーションを避け続けると、職場での評価が下がり、自己肯定感がさらに低下する可能性があります。
ACTの6つのコアプロセス
ACTは以下の6つのコアプロセスに集約されます。
- フュージョンからの解放
- アクセプタンス
- 今この瞬間との接触
- 文脈としての自己
- 価値の明確化
- コミットされた行動
これらを順に見ていきましょう。
1.フュージョンからの解放
自分の思考から一歩下がり距離を取って観察することを学びます。
例えば、「私は無価値だ」という思考を持つ自分を客観的に捉え、それが現実ではなく単なる思考に過ぎないと理解することです。
2.アクセプタンス
痛みを伴う感情や思考に抵抗せず、それらをありのままに受け入れます。
例えば、失恋の痛みを否定せず、しっかりと感じ取ることで、その後の前向きな行動につなげることができます。
3.今この瞬間との接触
現在の瞬間に意識を集中させ、目の前の体験をしっかりと受け入れることです。
例えば、過去の失敗や未来の不安にとらわれず、今この瞬間の体験に全力を注ぐことが求められます。
4.文脈としての自己
自分の変わらない部分を見つけ、そこに基づいて自己を理解します。
これにより、外部の変化に動揺せず、自分を安定した存在として捉えることができます。
5.価値の明確化
自分にとって何が本当に大切かを知ることで、人生の指針を見つけます。
たとえば、家族との絆を大切にしたいと思うなら、その価値に基づいて行動することができます。
6.コミットされた行動
自分が大切だと思うことを、実際に行動に移すことです。
価値に基づいた行動を取り続けることで、より充実した人生を送ることができます。
ACTを取り入れることで得られるメリット
ACTを日常生活に取り入れることで、多くのメリットが得られます。
以下はその代表的なものです。
ストレスの軽減
ネガティブな感情や思考を無理に排除しようとせず、受け入れることでストレスが軽減されます。
例えば、仕事でのプレッシャーを感じたとき、それを否定するのではなく受け入れることで、心の負担が軽くなります。
自己理解の向上
自分が何に価値を置いているのかを明確にすることで、自己理解が深まります。
これにより、迷いや不安が減り、より自信を持って行動できるようになります。
人間関係の改善
自分の感情や思考に振り回されず、他者とのコミュニケーションがスムーズになることで、良好な人間関係を築くことができます。
例えば、感情的な衝突を避けるために、相手の意見を冷静に受け入れる姿勢が身につきます。
生活の充実
自分にとって大切な価値に基づいた行動を取り続けることで、充実感や幸福感が増します。
例えば、趣味や家族との時間を大切にすることで、日常生活が豊かになります。
ACTを実践するための具体的な方法
ACTを日常生活に取り入れることで、心の平穏や充実感を得ることができます。
ここでは、ACTを実践するための具体的な方法を3つご紹介します。
1. 瞑想やマインドフルネスの導入
ACTのコアプロセスの一つである「今この瞬間との接触」を実践するためには、瞑想やマインドフルネスが非常に効果的です。
これらの実践によって、現在の瞬間に意識を集中させ、過去の出来事や未来の不安にとらわれることなく、今をありのままに受け入れる力を養うことができます。
具体的には、以下の方法を試してみてください。
呼吸に集中する
目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をしながら、自分の呼吸に意識を向けます。
息を吸うときの感覚や、息を吐くときの感覚に集中することで、今この瞬間に意識を向けることができます。
ボディスキャン
仰向けに寝たり、椅子に座ったりして、体の各部分に意識を向けていく練習です。
足先から頭のてっぺんまで、ゆっくりと注意を向けることで、体の感覚に気づきやすくなり、心と体をリラックスさせることができます。
2. 価値に基づいた目標設定
ACTのもう一つの重要なプロセスは、自分にとって大切な価値を明確にし、それに基づいた目標を設定することです。
このプロセスを通じて、自分が本当に望んでいる方向に進むための行動を取ることができ、日々の生活に充実感をもたらします。
価値の明確化
まず、自分にとって何が大切なのかを考えます。
例えば、家族、健康、成長、社会貢献など、自分が人生で重視している価値をリストアップしてみましょう。
SMART目標の設定
価値に基づいて、具体的で測定可能な目標を設定します。
例えば、「毎朝10分間、家族との時間を大切にするために朝食を一緒に取る」といった、日常的に実行可能な目標を立てることが大切です。
3. ネガティブ思考の受け入れ練習
ACTでは、ネガティブな思考や感情を無理に排除するのではなく、それらを受け入れることを重視します。
これには、「認知的フュージョン」からの抜け出すための具体的な練習が役立ちます。
思考との距離を取る練習
自分のネガティブな思考に気づいたら、それを「単なる思考」として捉え、その思考と自分を切り離してみます。
例えば、「私は失敗者だ」という思考が浮かんだときに、「今、『私は失敗者だ』という思考が浮かんだ」と言い換えることで、思考との距離を取ることができます。
感情の観察
ネガティブな感情が湧いたとき、その感情を否定せずに、ただ観察してみます。
感情の強さや持続時間を意識することで、感情の波を俯瞰的に見ることができ、感情に振り回されることが少なくなります。
まとめ
ACTは心理的苦痛をただ解消するだけでなく、それを成長の機会と捉え、価値に基づいた有意義な生活を手に入れるための強力なツールです。
日常生活にACTを取り入れることで、ストレスの軽減や自己理解の向上、そして生活の充実を図ることができます。
苦痛を避けるのではなく、それを受け入れ、さらに豊かで意味のある人生を追求するために、ACTを実践してみてはいかがでしょうか。
【あわせて読みたい】
【参考】
木下奈緒子「アクセプタンス&コミットメント・セラピーのこれから」